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第1話
第1話

薄れる、いやぼやける視界。 そんな視界でかろうじて認識できたのは 『俺を覗き込む誰か』と『覗き込む人物 が黒髪』で『女性』と言う事のみ。 周囲はホテルの一室より立派な空間で、 見渡せる周囲には見たことが無いような 高級調度品が多数…それはまるで映画に 出てくるような、豪勢な城の一室のよう に見える。 むぅ、この子もここもどこかで見たこと があるような?

「んふふ…」

喉の奥から鼻にかかったような、それで いて妙にくぐもった声が漏れる。 『今のは俺の声か?』等と考えている内 に…

―むにゅっ、むにゅむにゅ――くにゅ、くにゅにゅ―

俺の胸部から腹部にかけて柔らかで温か な何かが乗る。 それは俺の胸や腹の上でその存在感をし っかりと誇示し、やがて段々と心地よさ を生み出して行く。 先端部には硬い突起があり、それは根元 の物体の変形にともない俺の肌にクニクニとした…別の心地よさを齎す。

まるで女の子が大きな胸を押し付けてい るみたいな…

…と、次の瞬間。 俺の意識は【柔らかで温かな何かソレ 】が、近年で一番危ない存在だと自覚。 同時に今、そのぼやけた視界で見ている のが『夢』だとも自覚し…この後に訪れ るであろう危機を回避すべく超高速で覚 醒を始めた。

―ばふっ!―

「きゃっ」

頭の下にあった枕を取り出し、顔の前の 空間に押し付ける。 同時に響く、女の子の物と思わしき可愛い悲鳴。

だが目の前のコイツには間違っても、俺 の口から『可愛い』等と言うべきではない。

「…あぁん、今日も失敗しました…」

と、先ほどまで俺の上に覆いかぶさって いた人物が…作戦の失敗を知り、残念そ うな声を上げた。

「答えは毎朝聞いてるが、一応聞いてお く…俺の部屋で何やってんだ?綾子」

今俺の前に…もとい、俺の腰の辺りに裸 で跨って座り込んでいるこいつの名前は 『草薙 くさなぎ 綾子 あやこ 』 身長160cm、体重48kg…16歳、女 …時たま疑いたくなるが、俺の義妹 いもうと 。 人となりを紹介するなら『運動神経抜群 』『頭脳明晰』『容姿端麗』『性格温和 』…ちなみにコレ、外面 そとづら な? 家族に…もとい、俺にしか見せない裏面 …更にもとい、本性は『超ブラコン』『エロい』『変態』だ。 ちなみにコイツに『ブラコン』は褒め言 葉にしかならないし、エロにしても変態 にしても言及したところで甘んじて受け 入れ…あまつさえ開き直るから閉口する しかない。 外見も説明しておくと、某…天空の新世界から降ってきた、主を楽しませることを主体に作られた天使の名を持つ人型の 彼女【イカ○ス】を、髪を長くしたよう な顔だと思ってくれていい。 いや、
確かに美少女なんだが…綾子 コイツ の場合、中身というか本性が残念でなら ない。 好物はカルボナーラと俺(!?)

ともあれ俺は上体を起こし…せめてもの 防御措置として、今しがた綾子の顔へ押 し付けた枕を回収…口を隠す。

「今日こそはお兄様に、私の熱いベーゼを受け取って頂きたく…」

「接吻 ベーゼ なぞいらんわ…つか綾子」

「そしてそのまま私のカラダに溺れて… …はい?」

「いい加減服を着ろ」

そう…今綾子 コイツ は、ベッドの上の俺に…裸で跨っている 。 なぜコイツが兄の上に跨って裸なのか… っと、その前に俺の自己紹介をしておこうか。

俺の名前は『草薙 白夜』 身長175cm、体重58kg…18歳、男 。 この街にある聖丘高等学校の3年A組に 在籍してる…綾子は同じ高校の1年生だ 。 趣味は運動と二次創作小説読み漁り、フ ライドチキン食べ歩き。 好物はフライドチキン、いちじく…あと おっぱ…げふんげふん! 特技は剣術と物真似。 性格は自己分析だと『大雑把』なんだが 、他者分析だと『冷静の面を被った激情 家』らしい…どっちも本当なんだろうが 『面倒見が良い』という意見もあり、そ れはどうなんだろうか?と思う。 成績は中の上…テストの平均は常時70 点前後。 ルックスについて、パッと見の外見は【 テ○ルズ】シリーズに出てくる主人公の1人【アス○ル】によく似ている…当然、彼のように茶 髪ではないが。 【アス○ル】似ならイケメンだが、 俺の顔には左目を縫うよう上下に走るひ どい傷痕があり…この傷痕がコン
プレッ クスで自身のルックスに自信は無い。 この傷についてはいずれ語る日が来るだろう。
そしてもう1つ、俺にはある意味すごい能力を持っている。それは(虚創)というもの、名前は勝手に決めた。
そんなことより、この能力はとある正義の味方が使える投影によく似ているんだ。違うところといえば、虚空から武器を持ってくることや、投影みたいにイメージで造り出すこともできるということだ。ちなみに俺はこれで、エクスカリバーみたいのを造り出して、山に向かって振り抜いたら……、
山が消えた……。と、まあそんな感じだ。

「嫌ですわお兄様、私が裸なのはお兄様 を食べる為…いえ、食べてほしいからに 決まってます…これからお兄様を愛そう と言うのに早速服を着ろとはあんまりで す」

と、頬だけじゃなく胸元まで紅潮させ… 16歳にしては大きすぎる胸をプルンプルンさせ…艶かしい表情を浮かべて綾子が俺ににじり寄る。 体に似合わん大きさの果実だこと…サイズか?本人曰くTトップ 82のUアンダー 64.5でDカップだそうだ。 3サイズ?上から82/56/78らし い…計測は義母 かあさんな。

「何が『俺を愛そう』だ…ええい下がれ !この、万年兄狂いのドエロ色情魔め! 」

「お褒めに預かり光栄です…でも、それこそ今更でしょう?ええ…いつだって私 はお兄様を、性的に食べたいんですから …ほら、今だって私のアソ…」

「放送禁止用語指定!放送自粛攻撃!!」

―ガシッ!―

次に綾子の口から出てくる言葉が読めた 俺は、ともかくそれを言わすまいと綾子 の口を手で塞ぐ。 コイツは放っておくと何を口走るか分か らんからな。

「もがっ!む〜!むむ、むむむ〜っ!!」

こうかは ばつぐんだ!
お前のイメージを守ってやったんだ、感謝しろ。コイツはそのままだときっと『キスだけでも』とか言い出すに決まってる。

「む〜!むむむぐむご キスだけでも !」

「何が『キスだけでも』だ!ファーストキスは大事にとっとけ!あの真面目な義父 とうさんを泣かす気か!?」

ほれ見たことか、言わんこっちゃ無い。 そうだな…家族構成と綾子以外の家族の 紹介もしておくか。

義父 とう さんの名前は『 草薙 綾乃輔 あやのすけ 』 俺と綾子が通う『聖丘 せいきゅう 高等学校』の上のランク『 聖丘 せいきゅう 大学』の科学部門を受け持つ教授。 趣味は研究と家族とのふれあい…愛妻家 。 『時間・世界・空間・次元』の関連性を 調べる研究に携わっていて、頭の良さは この国屈指。 ちなみについ最近、次元空間跳躍装置… つまりタイムマシンを完成させ、今では 存在しないとされる伝説の和製金属【ヒ ヒイロカネ】を、40数kgのインゴット で持って帰ってきた。 身長184cm、体重70kg…37歳(犯 罪だろ?) 外見は【ブリ○チ】の【京楽 ○水】そのまんま。 ちなみに綾子は義父 とう さんの連れ子で、前妻さんとは綾子が生まれた直後に離婚したそうだ。

義母 かあさんの名前は『 草薙 涼子 りょうこ 』 俺達兄妹 きょうだい が通う『聖丘 せいきゅう 高等学校』の卒業生。 19歳の頃に今の義父 とうさんと出会って恋に落ち、同時に結婚… その年の末に俺を拾って養子にした。 身長176cm、体重は女の秘密…35歳 (だから犯罪だって) 趣味は剣術・鍛錬・料理・家事・裁縫、 特技も同じ。 先祖代々伝わると言う剣術『無双草薙流 剣術 むそうくさなぎりゅうけんじゅつ 』の現師範で、日本国内で数少ない帯剣許可者だったりする。 外見は【NARUT○】の5代目火影【ツ○デ】…娘の胸の大きさは母譲り…義理の娘に胸の大きさが遺伝?…あぁいや、なんでもない。 もちろん髪はあんな色じゃなく、限りなく黒に近い茶髪。 また『踏鞴製鉄 たたらせいてつ 』を実行できる現世で最年少の技術者で 、刀鍛冶師としての側面も併せ持ってい
る。

義祖母 ばあ ちゃんの名前は『 草薙 涼千乃 すずちの 』 御年62で背中も腰も曲がっておらず、 固い煎餅だって自前の歯でバキバキ食べ …どこへ行くにも杖なんか使わずヒョイ ヒョイ出歩く元気すぎるお方。 年相応に身長こそ低いが、それでも『氣 闘拳 きとうけん 』と言う…史実には決して載らない拳法 の継承者で、剣道三倍段という言葉の通 用しない人物。 趣味は運動・鍛錬・瞑想、特技は瓦割り( 最高齢ギネス記録保持者だと言うからビ ックリだ) 外見は、なんと【バカとテスト○召喚獣 】の【理事長】そのまんま! ちなみに綾子はこの『氣闘拳 きとうけん 』の次期師範の座が確定しており、たか だかボクサーじゃ勝つのは不可能だろう 。 俺でさえ剣を持たなきゃ勝てない…持ったところで引き分けだけどな。

義父 とうさん・義母 かあさん・義祖母 ばあちゃん、そして義妹 いもうと 。 そう、字面から察してもらえるように俺 はこの家の家族とは血が繋がっていない 。 この家…つまり草薙家は、俺の視点で言 うと義父・義母・俺・義妹・義祖母の5人家族。 俺は2歳の時、この家へ養子としてやってきたんだ。 実子と変わらないであろう愛情を注がれて育ったから、俺は今幸せだと言えるが 。

話を戻そう。

既にお気づきの方もおられるだろうが、 この綾子は…俺に恋愛感情を抱いている 。 それも特濃で超強い…肉体関係を望んで 伴うほど強い恋愛感情を。 最近じゃ事あるごとに肉体関係を迫り、 あまつさえ結婚して子供が欲しいとまでのたまう始末。 …処女を俺に捧げる為、どんなイケメン からのお誘いも悉く断っているそうだ。

コイツがこうなってしまった原因は、今 から10年前…俺が8歳でコイツが6歳 の頃、家で留守番をしていた俺達を…当 時指名手配中だった凶悪犯が襲うと言う事件にあるんだが…うむ、今は割愛しよう。 とまぁそんな感じで事件の後、綾子はそ の時は落ち着いていたのだが…事件から 少し経ったある日から、コイツはヤバい 方向へ変わってしまったんだ。

どんな方向かって? 俺を『肉体関係を持つ事が出来る、恋愛対象としても見る事が出来る1人の男 いせい 』として認識し始めやがったんだよ!

全国の義妹シチュ希望のお義兄さん方… 首くくるかも? ってかスゲェんだぜ?最近の(義兄を肉 体関係・恋愛対象として認識した)義妹ってのは…。

朝起きるとベッドに同衾しているなんて 当たり前! しかも服はパンティ+シャツ1枚の半裸 か上半身裸、全裸なんてのもしょっちゅうだ。

俺の誕生日(12月24日)にゃ、裸にな って自分の首に大きなリボン付けてデカイ段ボール箱に潜り込み、そのまま俺の 部屋で待機してやがった。 開けてビックリ女の子 たまてばこ …ってな。 (空けようとした瞬間寒気がしたから、 気づかれぬように抱え上げて道場に放置したけど)

秘蔵のグラビアのスクラップブックは全てのページを、綾子が同じ格好で再現したコラージュに差し替えてあったし…俺 のケータイのデータフォルダには綾子自身のアレやソレの写真、加えて着信メロディーは口説き文句が曲として録音され た物が設定してあった。 所有のPC用アダルトゲームは、いつの 間にか全部『妹萌』と呼ばれるカテゴリのソフトに変わってた。 (部屋にも携帯にも)ロックかけてもいつ のまにか破られてるし…何この手の込みよう。

風呂入りたいな…思ったら必ず先に綾子 が脱衣所に入ってるし、鉢合わせしても 悲鳴すら上げねぇ…それどころかその素晴らしいカラダをアピールしながら脱ぐし、極めつけは「あらお兄様、一緒に入る…いえ、カラダを洗って欲しいのですか?」だとよ。

こないだの朝なんか俺に覆いかぶさった まま、男の朝バナナさすって「お兄様の 、大きくて逞しいですね…おいしそう」 ってウットリしながら俺の寝顔見てやが った。 イカン、南先生がしてくれたおしっこの 始末とあの柔らかな感触が脳に…オホン ! 南先生に関しては後述する。

「義妹 あやこ よ、お前は俺を朝から獣にしたいのか? 」 …なんてとてもじゃないが怖くて聞けな い。 聞こうもんなら即座に肯定し、その場で 全裸になってM字開脚する事ウケアイだ 。

「わたし、おおきくなったらおにいちゃんとけっこんするの」は、マジで血の繋がった…幼稚園までの妹で充分だっての 。

このままじゃいつ理性を本能が凌駕するか…。 綾子…頼むから、お前は自身の体が…男に対しとんでもない破壊力を備えている事を自覚してくれ。 お前のカラダな、とてもじゃないが16歳とはいえないぐらい肉感的に発育してるんだぞ?

「れろれろ」

「うひゃっ」

こ、コイツ…俺が自分の口を手で塞いで いるのを良いことに、その手をベロベロ と…実にいやらしく、それでいて美味し そうに舐め上げてやがる。 イカン、マジで登校に使う時間が足りなくなりそうだ。 ちなみに登校に使う時間が足りなくなる と言うのを世間一般的には『遅刻』と言 うのだが、俺が遅刻しそうになる場合… それは専ら綾子のせいであると俺は断言 しておく。

「ええい離さんか!」

「あんっ…お兄様の手の味、もっと堪能したかったのに」

「せんでええわ!」

「そうですか、ではお兄様…今度は私の味を、私をお食べになって?」

言って両腕を広げ、そこに実っているみ ずみずしい果実を惜しげもなく俺の目に 晒し…俺に食べてもらおうと距離を詰め 始める綾子。 その腕で俺の頭を自らの胸の谷間に抱き 込んでホールドし、俺の理性を飛ばして …あわよくば既成事実を作ろうってハラだろ?

「食うか!つかこのままだと遅刻するわ !」

「義妹 いもうと を(性的に)食べてて遅刻…あぁ、なんと羨ましいシチュエーション…」

「どこが羨ましいか…お前はこれでも食ってろっ!」

―バサッ!―

と言うわけで俺は自身の貞操を守るため 、それまで着ていた寝巻きのシャツを綾 子めがけて投擲…それは綾子の顔へ命中 する。 綾子は突然顔に張り付いたそれを引き剥 がすと、突然…そのシャツに顔を埋めた 。

「あん、お兄様…そんな、シャツなんか 脱ぎ捨てて…私を誘ってるんですね?っ て…これは!?お兄様の寝汗を吸い込んだ シャツではないですか!?……くんくん、は ぁ…良いにおい…コレは私のコレクショ ンの中で最上級の…すんすん、あぁ…」

ふはは、かかった綾子よ。 貴様の行動パターンなんか8年あれば十 分に看破出来るわ! それ、トンズラだっ!

こうして俺は、寝汗シャツに気を削がれ た綾子からダッシュで離れてダッシュで 着替え…遅刻する訳には行かないので、 またダッシュで着替え…家から20分の ところにある、現在在学中の高校へ足を 向ける。

聖丘学園はこの街で一番大きな学校で、 東京ドームとほぼ同じ面積の敷地に同名 の小学校と中学校と高校と大学をそなえ る国内有数の大学園だ。 エスカレーター式ではないが、同じ敷地 内と言う事もあり基本的にみんな小中高 と同じ聖丘に進む。 まぁ高校以降は任意で各地の別の学校に 行く事も出来る。 偏差値としてはそこまで高くない…中学 校全学年を通して全教科平均60点〜7 5点取ってりゃ入試は問題なく突破でき るだろう。

「今朝の襲撃はやばかったな…襲撃が発 情具合と共に段々エスカレートする義妹 いもうと ってどうなんだ?」

走りながら誰にとも無くつぶやく俺。 …と、その時…

―ぐうぅ…―

唐突に…腹が鳴った。

「…しまった、綾子を撒くために急いで 出てきたから朝飯食ってないんだっけ… どっかオーゾンは…」

オーゾンとは蒼い看板が印象的なコンビ ニである。 また周辺にはハミマ・ヘブンレイブン・ ナイティー・トンクス…それら大手コン ビニが勢ぞろいするのがココ、星舞 ほしまい 商店街。 この商店街で手に入らない日用品は無い と言っても過言ではなく、食料品は衣服 、生活雑貨や化粧品…文房具やCD、本 やDVD…はたまたHグッズやマニア垂 涎のフィギュアでさえ安価で買える店も あるし、薬局は愚か内科・外科・小児科 ・皮膚科・耳鼻咽喉科・眼科と言ったほ ぼ全ての診療所が要所にあるし総合病院 だってある…またゲーセンやパチンコ屋 は完璧だし、ファストフード店もマッギ ュやメスバーガー、コッテリアだってあ る。 それにファミレス系だと吉野屋 きちのや って丼屋とかゴゴイチってカレー屋、メ スド(ドーナツ屋)、ダーミヤンなんて中 華レストランまである。 電化製品なら商店街を少
し離れた場所に ある大型家電製品店『ジョーシキ』か『 ミドル電化』で全て揃うし。 この商店街にしか売ってない物も多く、 リピーターとしてここまで買いに来るモ ノズキもいるって話。 俺はここ育ちだから関係ないけど。

ともあれ俺は今、自身を苛んでい空腹を 満たすため…目に付いたオーゾンへ向かう。 買うのはもちろん、好物であるフライドチキンだ。

**

「ありがとうございましたぁ♪」

ちょっとタレ目なのが惜しいが、仕草が 可愛いし俺みたいな奴にも優しいので許 してやる。 まぁ店員だから、客に優しいのは当然だ がな。 俺は今しがた(6本)購入したフライドチ キンを開封し、早速1本パクつきながら また走る。

「んぐっ…もぐもぐ、ごくっ!肉汁を閉 じ込める絶妙な揚げ加減に、鼻腔をくすぐり舌を震わせる絶妙なスパイスの香り …くう〜っ!色々食べ歩いたけど、やっぱりチキンはオーゾンで決まりだな…… …あ?」

とまぁこんな感じでチキンを食っている と、ふと…言い知れぬ違和感を感じ、思 わず俺は足を止めた。

違和感その1、何も音がしない…人はいるのに。
違和感その2、誰も動いていない…風す ら吹いてない。
違和感その3、上記違和感は俺しか感じてない。

「なんだこれ…」

極めつけの違和感その4は、今まさに横 断歩道を渡ろうとしている中年のサラリ ーマンの口元。 吐き出された痰が、口から飛ばされて地面まで行く途中の状態で静止している。 他にも直前まで風で翻っていたであろう 、同じ聖丘学園高校の女子生徒のスカー トや…打ち水のために撒かれた水。 ヒールが折れて転ぶ直前のOL…それら が全て、まるで再生中の映画を一時停止 したように動きを止めていた。

銜えていたフライドチキンの骨を、件の 痰吐きオヤジの鼻の穴に突っ込んでも全く反応しない。

「俺以外のすべてがその行動を停止して んのか?まさか俺にも時を止めれるスタンドが!?こんな事って…む?」

そんなバカな事を考えつつフライドチキ ンをもう1本平らげ、ふと気が付くと足 元には真っ黒な…それも闇を溶かしたよ うな深淵とも言える黒い円があり、俺は その上に乗っていた。 俺はその円が何なのかを確かめようと、 3本目のフライドチキンを銜えてしゃが みこんだんだが…次の瞬間…

―ストンッ!―

「うおっ!?」

今まで踏みしめていたその黒い円が突然 穴と化し、俺はそれに落っこちてしまう 。 上を見るとみるみる遠ざかる星舞商店街の空。 …底が見えない。

「落とし穴かああああああああああああ あああああああああああああっ!!!!」

とかやってる一瞬の間にもう俺が落ちた 穴は見えなくなっており、俺は深淵の闇 の中をひたすら…どこかへ向かって高速 で落下していた。

そして…

―ドサッ!―

「うおっ!」

「λξ!?」

突然回りが、さっきの暗闇よりは明るく なった。 どこかに放り出されたらしい…何か声の ようなものが聞こえた気もするが…

「いちちち…穴に落ちたのか?どこだここは……何だこりゃ」

と、周りを見渡して俺はわが目を疑った 。

何故ならそこはどう表現しても不思議な 場所だったから。 さっきまで朝の風景を保っていた商店街にいたはずなのに。 その証拠に俺はまだその口に、フライドチキンの骨を銜えていた。

壁には青い光を放つ、松明ともランプと も違う…見た事もない照明器具?が多数 。 壁はその器具で青白いが天井は薄暗くて 見えない。
床には漫画やアニメでしか見れないよう な魔法陣が描かれており、俺はその真ん中にいるらしい。

「………お?」

ふと気が付くと手は柔らかくて温かい何 かを鷲づかみにしており…

「ЕфΧ…ΨΕ、ЛЛСЯ…ТΞ∀&ʼn」

同時に、蚊の鳴くようなか細い…誰かの 声らしき音が聞こえた。 声の主を探す俺。 よく見ると俺の下で荒い息を吐く赤眼の 女の子が、目を潤ませたまま頬を紅潮さ せ…どこか嬉しそうな表情で俺をジッと 見ていることに気が付いた。

「……あ」

どうやら俺は商店街からこの場所へ来た 拍子にこの女の子の上へ落ちてきたらし い。

―むにゅむにゅ、むにゅ…―

「Θε、ωλ…」

相変わらず荒い息を吐き、嬉しそうな表情をするその女の子。 ってかアレ?女の子の顔の位置がそこって事は、今の俺のこの手の位置は? 布越しにやや硬い突起が…結構大きいな …Cぐらいありそう?

じゃ無くて!!

「うわっ!うわわ、ごめん!そんなつもりじゃ…」

と、俺は今自分がこの子に覆いかぶさる ようにして組み敷き…その胸を思いっきり揉みしだいていた事に気が付いた。 だから慌てて退こうとするが…。

「З!ЯЫχδГΘ!!」

―ガシッ!―

女の子はその足で俺の腰を挟み込み、両 手は俺の手を抱きこんで動かなくなってしまう。
その時ようやく俺は、元来なら最初に気づくべきだったある事に気が付いた。

「…△$、#&з@ЯП?」

そう、この子は最初から…日本語を喋っ てはいなかったのだ。



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