しかし、結局、グリーンピースの調査は認められず、調査船は福島海域から離れた。その結果、国際環境団体の調査を断ったということで、日本政府は海外政府から疑いの目で見られている。
「日本政府はわかめやこんぶなどの海藻類の調査を行なわないのです。アサリやホタテ、ウニなどの貝類も同様ですが、こうした固定性の生物こそ放射能汚染の影響を受けやすく、調査の対象とすべきなのです」
佐藤氏も指摘する通り、移動域の狭い海棲生物こそ放射能の汚染を受けやすい。その点は漁業関係者ほど深刻に受け止めているようだ。
「なんでもいいから全部調査してほしい」
千葉県・銚子港の漁師の嘆き
「なんでもいいから全部調査してほしい。不安が広がってまったく商売にならん。ダメならダメでいいんだ。(政府が)大丈夫だ、大丈夫だ、といわれても客は付かんよ」
火曜日(5月10日)、筆者は千葉県の銚子港に行った。日本最大の水揚げを誇る銚子港は三つの魚市場を持つ。そのひとつで船から荷を降ろしている漁師にきくとこう返ってきた。
風評は情報を隠すから広がる。政府や大手メディアは具体的な情報を出さずに「安全」「安心」を連呼してきた。それこそがデマを広げる最大の根拠になっているということにいったいいつ気づくのか。
グリーンピースが、銚子の漁船も漁をしている海岸近くに打ち上げられたわかめを拾って測ったところ、計測器の針が振り切れたという(注)。
もはや日本政府のデータを信じろという方が難しい現在、多様な情報を得て、そこから判断を下すのが国民の生きる道である。
注:グリーンピース・プレスリリース 2011年5月12日「高濃度の放射性物質を海藻類から検出 グリーンピースの海洋調査で、政府に緊急調査を要請」