2012年6月22日20時15分
国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議の履行状況を監視する専門家パネル(委員団)で、北朝鮮との武器やぜいたく品の取引を巡って決議違反の疑いを具体的に指摘している計38件のうち、21件に中国が関与していることがわかった。パネルが過去2年半余りの活動をまとめた報告書から明らかになった。
すでに公表されている2010年版に加え、非公表の11、12年版を朝日新聞が入手して集計した。中国が結果的に、北朝鮮による武器の拡散や軍事的脅威の増大に手を貸している実態が浮き彫りになった。
安保理関係者によれば、中国はこれまで報告書の公表を拒んできたが、最近、12年版の公表には同意。国連は来週初めにも公表する方針だ。日本政府関係者は21日、昨年8月の中国による大型特殊車両の北朝鮮への輸出などで、国際社会の批判が強まっていることが背景にあるとの見方を示した。
中国がかかわった21件の内訳は、「北朝鮮による大量破壊兵器や弾道ミサイル関連物資の輸出入」2件▽「武器の輸出入」6件▽「北朝鮮によるぜいたく品の輸入」13件だった。
北朝鮮との輸出入では、中国の港が経由地として使われていたり、中国企業が仲介したりしていたケースがほとんど。特に、11件で中国東北部の港湾都市・大連が舞台になっていた。
朝日新聞の報道で明らかになった北朝鮮・南浦への弾道ミサイルの運搬・発射用の大型特殊車両の輸出では、中国の「武漢三江輸出入公司」が直接の輸出元だった。今回公表される報告書では継続調査中となっており、中国の関与については言及されていない。
ただ、日本政府関係者の一人は、11月に予定される中間報告書で、中国の関与が指摘される可能性があるとの見方を示した。
国際社会への脅威となる大量破壊兵器や弾道ミサイルにからむ2件は、北朝鮮が大連経由でシリアに弾道ミサイル製造用とみられる電子部品や金属板を輸出しようとした07年のケースと、台湾から中国経由で軍事転用可能な工作機械が北朝鮮に輸出された10年のケースだった。
国連関係者によれば、パネルに出席している中国の専門家は、自国の関与を否定する根拠となる積極的な情報を示さず、疑惑が指摘された中国港湾などへのパネルの調査も拒んでいる。
パネルは、09年5月、北朝鮮による2回目の核実験を契機に設置された。毎年、報告書を安保理に提出し、安保理はそれを加盟国に周知させる義務を負う。(春日芳晃=ニューヨーク、牧野愛博)