スターズリーグには、Jリーグを経験した監督が実に4人もいる。初期のJリーグで清水エスパルスやヴェルディ川崎を率いた、アルサードのレオン監督は、
「スターズリーグは昔のJリーグに似ている。10年後、いまのJリーグのようになるかもしれない」
希望的観測を口にしたが、鹿島アントラーズにいたアウトゥオリは否定的だった。観客の少なさを、自虐的に笑い飛ばしていた。
「僕のチーム、アルラヤンはスターズリーグでもいちばん人気があるよ。なにしろ、ミニバン1台分もファンが集まるんだから。選手には重圧もないし、情熱もない」
アルアラビのオランダ人コーチが、カタールの限界をひと言で言い表わした。
「カタール人は、みんな金持ち。ブラジル人のように上手くならなきゃいけない理由が、どこにもない」
ロナウジーニョやルーニーが裕福な家庭に生まれていたら、いまの彼らはなかっただろう。貧しさは天才を育てる揺り篭であり、その貧しさがカタールにはない。
しかし、あきらめるのは早い。自国人がだめなら、外国人に目を向ければいい。
この国のスポーツ界には、海外から実力者を引き抜いて競争力を高めてきた実績がある。アジア大会では、ケニアからの帰化選手がマラソンや中長距離種目で優勝。男子バスケットボールでは、セネガル人を多数擁するチームをカタール代表として送り出した。
サッカーも例外ではないが、こちらはFIFAという障害がある。W杯3次予選のイラク戦ではエメルソンが起用されたが、ブラジル時代、ユース代表でプレーした経歴が引っかかり、帰化を認められなかった。FIFAの帰化規約は、カタールを取り締まるために存在するかのようだ。
そのことについて尋ねると、協会関係者は悪びれることなくいった。
「今後は規定の範囲内で補強をします。我が国は人口が少ないので、出稼ぎ移民の子をカタール人と見なすことになるでしょう」
すでにカタール代表は、人種の坩堝と化している。ブラジル人やウルグアイ人、セネガル人の存在は知られているが、ソマリア人やスーダン人も少なくないらしい。
2部リーグでプレーする19歳のアセッドは8年前、戦火と飢餓に見舞われた祖国ソマリアを抜け出し、ドーハに渡ってきた。
「ソマリアに比べたら、カタールは天国です。国を出たくても出られない人が多い中、僕はドーハに来られた。とても幸運でした」
月給は15万円。住居費や食費はチーム持ちなので、多くを貯金できる。もっとほしいが、決して悪くない。
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