尖閣よりも日中友好

尖閣の領有、帰属問題には日中ともに触れないのが得策である。どちらかが攻撃的になると必ず対立がエスカレートする。ひたすら静かに鎮静化を図るべきである。そして大陸棚の共同開発などを日中折半で進めるのが上策である。一緒に作業をし、利益を分かち合うなかから信頼関係は生まれてくる。それを始める絶好のチャンスが尖閣周辺海域の共同調査であり、探査のはずである。
 そもそもちっぽけな島の領有権など持ったところで何の意味もない。海域の資源を日中で安全に共同で利用できればよいだけであって国境線をめぐって目くじらをたてるのはばかげている。
 中国側の挑発や軍事行動のおかしさは否定しない。しかし中国はまだまだ若く荒々しい国である。100年近くの長い沈滞期を経てやっと離陸した今、過激な愛国的行動をとる勢力がいるのは当然だろう。そもそも我が国はかつて中国に侵攻したのである。そして台湾と満州を領土にした歴史がある。それに対して中国は我が国の都市を一度も占領したことはない。中国が領土問題に過剰ともいえるほどに反応するのは当然であり、日本人はもっと寛容であるべきだ。
 日中関係の過去の事実を前提にすれば中国側の一部勢力が尖閣を巡って攻撃的になるのは十分にわかる。もちろん過激すぎる、攻撃的すぎる場面もあるだろう。だが日米同盟は揺るぎない。それを前提に考えれば中国の示威行動に対して日本は過剰反応すべきではない。日中はお互いを必要としている。せっかく80年代に構築した友好関係をこちら側から崩すような愚策は絶対にやめるべきだ。

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登録日:2012年 06月 15日 01:48:35

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プロフィール
上山信一
(男)
慶應大学総合政策学部教授。大阪市生まれ54歳。専門は企業・行政機関の経営戦略と組織改革。都市・地域再生も手がける。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。国交省政策評価会(座長)、大阪府と大阪市の特別顧問、新潟市都市政策研究所長、日本公共政策学会理事、各種企業・行政機関の顧問や委員等を兼務。府立豊中高、京大法、米プリンストン大学修士。著作等 ツイッター@ShinichiUeyama
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