東日本大震災から15カ月目となる6月11日から3日間、仙台教区復興支援のための全国担当者会議が開かれた。現在全国のカトリック教会が運営する支援拠点は8ベースとなっている。最初の2日間、5グループに分かれて、こうした拠点を中心に視察。最終日に仙台・元寺小路教会で復興支援を考えるシンポジウムを行い、支援活動に祝福を願うミサをささげた。
各教区や男女修道会から集まった担当者は60人余り。さらに公開のシンポジウムには全部で130人ほどが集まった。
シンポジウム、第1部のテーマは「津波被災地での復興支援活動を考える」。復興支援活動における課題を共有するため、岩手県の4ボランティア拠点と一つの障がい者支援センターの担当者、また現場の後方支援を行っている女子修道会、信徒有志グループ、仙台教区サポートセンターからの担当者が出席し、これまでの支援活動と今後の課題について以下のように報告した。
被災者の格差が広がり、仕事のない人、衰弱したり認知症が進んだ高齢者など“生きる力”が低下する人が増えている▼ボランティアに行こうという人はぐんと減っている一方、被災者からは「忘れないでください」という声がよく聞かれ、支援継続が必須▼支援者の確保が難しい中、新たな人が出てきて交替しながら続けていける喜び▼外から支援に入ることが、地域の人の自立の妨げになっていないかという不安▼避難所にたどり着けない障がい者を、1軒1軒回って訪ねたが、将来の災害についても教会はこうした“弱者”対策を行う準備の必要性▼支援の中で、多くの信者でない人たちと自発的な共同体が各所で形成された▼将来に向け、地域のケアを地域に任せていく仕組みを作っていく重要性、といった話が上がった。
福島―“複雑な状況”
第2部は「『フクシマ』をめぐる復興支援活動を考える」と題し、福島の現況について、県内で支援活動を続ける5グループが発題した。
福島の被災者の場合、同じ仮設訪問をしても、帰るあてや将来のめどが立たず、毎日することもなく自暴自棄になっているといったケースが、より深刻な状況。積極的に仕事を見つけ、働き始める人がいる一方、絶望していく人も多く、自死の問題も大きい。放射能に対する不安と同時に、県外者からの差別、農作物への風評被害といった困難もある中、県内の小教区による支援活動と県外からの教区・小教区の支援を結集し、福島の問題を自分の問題として寄り添い続ける必要性が訴えられた。
最初2日間で福島を視察したグループは、原発がある浪江町などからの避難者の話を直接聞く機会を得た。「2重3重に、すごく複雑な状況。強制避難の人、自主的に避難している人、自宅に住んでいるが放射能被害を受けている人、その中で家族分断…。補償金が出ているが働くと減らされる。“人を生かす制度ではない、国は考えてほしい”と訴えていました。とても難しい問題です」(米田みちる修道女/聖母訪問会)
現実の中で信仰年を
午後は、「震災犠牲者を追悼し、被災者への癒しを求め、復興支援活動に祝福を求める」ミサがささげられた。説教を担当した菊地功司教(司教団復興支援担当)は、今年10月から始まる信仰年に関連し次のように話した。
「信仰年は、私たちが何を信じているのか、信仰を見直すこと。被災地で、何もなくなったところでどう福音を生きるか? 新しい人との出会いで、行い、言葉を通じて私たちの信仰者としての生き方が少しずつ伝わる。日本の教会がみんなで一緒になって、まさしく新しい福音宣教に取り組んでいる、信仰年についてあらためて考えるのでなく、司教団が現実の中ですでに取り組んでいることを見直せば、私たちは信仰年を生きることができる。この神から与えられた時を失わず、生き、深めていきたい」
|