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渋谷駅が変身、3つのホームが大移動 迷宮の過去と未来

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2012/6/22 7:00
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■渋谷駅の上をロープウエーが走っていた

かつて渋谷の空を運行していたロープウエー「ひばり号」。東急プラザ9階に、写真が掲示してある
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かつて渋谷の空を運行していたロープウエー「ひばり号」。東急プラザ9階に、写真が掲示してある

 1934年(昭和9年)、渋谷駅に東横百貨店(現・東急東横店東館)が開業した。国鉄(当時)渋谷駅が編さんした「渋谷駅100年史・忠犬ハチ公50年」は「渋谷としては初めての白亜の高層ビルだった」と当時の印象を記す。さらには「町全体がいっぺんにモダンに生まれ変わったよう」との地元女性の話を紹介している。それほどのインパクトがあったようだ。

 1938年(昭和13年)には玉電ビルが完成した。この2つのビルは戦後、双方の間を子供用のロープウエー「ひばり号」が走るなど、長らく渋谷のランドマークとなった。ひばり号は東横百貨店の屋上から玉電ビルの屋上に向かい、そのまま降りることなく東横百貨店まで引き返したという。今でいうなら東急東横店の東館と西館の間で、まさに山手線をまたぐ「夢の乗り物」だったようだ。

 玉電ビルはその後、11階建てに増築して東急会館となり、現在は東急東横店西館となっている。玉電はその後東急玉川線となり、1969年(昭和44年)に廃線となった。JR玉川改札はかつての玉電渋谷駅の正面にあった改札口だ。

 玉川線には「道玄坂上」「大坂上」などの駅(停留所)があった。これらは現在のバス路線に一部、受け継がれている。「池尻」「三軒茶屋」「駒沢」などの駅は、東急玉川線とほぼ同じ区間を地下化した東急新玉川線(現・田園都市線)の駅として名前が残っている。

■小泉純一郎元首相も認めた「忠犬タマ公」

ハチ公像前には今も記念撮影をする人の列が絶えない
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ハチ公像前には今も記念撮影をする人の列が絶えない

 120年を超える渋谷駅の歴史。なかでも変化が激しかった1930年代以降の変遷を見続けてきたのが忠犬ハチ公の銅像だ。1934年に建てられた銅像は、今も「日本を代表する待ち合わせ場所」として多くの人々を集めている。

 そのハチ公の縁で、渋谷駅はかつて新潟駅と「姉妹駅」を宣言したことがあるという。

 JR新潟駅の上越新幹線コンコースに「忠犬タマ公」という銅像がある。ハチ公と同時期に忠犬としてたたえられた犬だ。雪崩にあった飼い主を2度にわたって救い出したという。この縁で1982年、当時の渋谷、新潟の駅長が連名で姉妹駅を宣言した。JR東日本新潟支社によると「特に活動はしていませんが、宣言の破棄はしていないので今も有効では」とのことだった。

 ちなみにタマ公の話に感動した人物が神奈川県の横須賀市にいた。記念碑を建立し、そこに揮毫(きごう)したのが小泉純一郎元首相の祖父、小泉又次郎氏。元首相も在任中に新潟の石碑に揮毫した、という後日談がある。

 ところでハチ公といえば渋谷には「モヤイ像」という石像がある。ハチ公に次ぐ待ち合わせ場所ともなっているこのモヤイ像、イースター島の「モアイ像」の関係かと思いきや違うらしい。石像の脇にひっそりといわれが書いてあった。

 それによると、この石像は伊豆諸島の新島から寄贈されたものだという。新島には「協力して作業する」という意味の「もやう」という言葉があり、この助け合いの精神を願って造ったのがモヤイ像だとか。

 時にダンジョン(迷宮)とも称される渋谷駅。昭和女子大の田村准教授は「まるで生き物のよう」と評する。変わり続ける駅は、これからどのような物語を紡ぐのだろうか。(河尻定)

モヤイ像はハチ公前よりは落ち着いた待ち合わせ場所として利用する人が多い
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モヤイ像はハチ公前よりは落ち着いた待ち合わせ場所として利用する人が多い

モヤイ像の脇には新島から寄贈されたことを記すプレートがあった
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モヤイ像の脇には新島から寄贈されたことを記すプレートがあった


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