続々と到着する新潟メールに嬉しい悲鳴が止まらないところではありますが、ここで恒例、実食編です。群馬県VOTEの結果、ワンツーフィニッシュを飾った桐生が誇るB級ご当地グルメ「子供洋食」と「コロリンシュウマイ」を野瀬とデスクが食べに行ってきました。
番外編では、実食編の取材過程で明らかになった、地元の人が愛してやまないのに地元の人以外はめったに口にすることができないという「幻のB級ご当地グルメ」を、デスクが必死の形相で追いかけてきました。合わせてご覧ください。
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<写真を拡大> わたらせ渓谷鉄道(右)と東武鉄道が肩を並べる |
2011年8月12日、群馬県実食編の取材がスタートした。本当はナビゲーターを引き受けてくださった伊勢崎出身前橋在住のTwo Pumpsさん、千葉県民のデスクと13日にJR桐生駅で集合するつもりだったのだが、東京西郊の我が家から桐生は遠い。熱帯みたいな暑さの中を、何度も電車を乗り継いで行くのは辛い。そこで単独事前取材を兼ねて前泊した。
絹の町として大いに栄えた桐生である。商店街の立派さに往時の繁栄が刻まれている。老舗も多く、街並みには風格がある。
<写真を拡大> Two Pumpsさんと野瀬が肩を並べる |
しかしながら地方都市の姿はどこも似ている。車社会以前に成立した中心市街地に駐車場は少なく、車が下駄代わりの人々にとっては不便になった。アーケードの下にシャッターが連なり、歩く人の姿も少ない。
商店街に人を呼び街歩きを楽しんでもらおうと、商工会議所は「一店一作家(工場)」と銘打って市内のものづくり作家の作品に出合うキャンペーンを張っている。いいアイデアと思う。
私は夕方に着いたのでゆっくり作家の作品を見る時間がなかったが、余裕を持って訪れれば楽しい時が過ごせそうな企画である。
<写真を拡大> ひもかわうどん |
何年ぶりかでやってきた桐生の町を少しだけ歩いてホテルに戻った。泊まったホテルの1階に入っている店が「ひもかわうどん」を出す。そのことはチェックインして初めて知った。幸運な偶然である。
部屋でシャワーを浴び、髪の毛も乾かないまま店の客となった。ウーロンハイで喉を潤してメニューを熟読する。うどんの店ながら充実した居酒屋メニューになっている。
冷奴とゲソのから揚げをつまみながらウーロンハイを飲み続け、お腹が膨れる前に日本酒に切り替える。旅先でのひとり酒っていいものである。神田のひとり酒と同じくらいよい。
<写真を拡大> ずずずー |
さあ「ひもかわ」に取り掛かろう。私の周囲の客はほとんどが「ひもかわ」を注文しているので、その姿形は確認済み。それだけにビビる。あれを食べるの?
ひもかわには温冷があるが、暑い盛りなので考えることもなく「冷」を頼む。ほどなくして「へたり込んだ妖怪一反木綿」が登場した。
手で広げてみると幅10センチ、長さ25センチほどもある。「ひも」ではなくて「帯」である。手ぬぐいを0.6倍くらいに縮小したものを想像していただきたい。それが布のようにきれいに畳まれて皿にのっている。
<写真を拡大> アイスまんじゅう |
1枚ずつ食べるにしてもこの大きさである。喉につかえないであろうか。
そこはよくしたもので、向こうが透けてみえるほどの薄さである。そして表面はすべすべとしている。
つけ汁に先っぽを浸して「ずずずー」とやると、帯のような麺が口の中であっという間にすぼまって胃に落ちていく。喉越しも良い。
もともと桐生のひもかわはもっと細いものである。名古屋のきしめんよりやや幅広といったところであろうか。この店の帯型ひもかわは特別なのである。
<写真を拡大> かっちかち |
ともかく、取材の目的は達した。悪い夢でも見ると明日の取材に差し支えるので、コップ酒をガンガンやって気を失った。
翌朝、約束の時間までに余裕があったので桐生駅の物産店で「アイスまんじゅう」を買って食べてみた。
アイスまんじゅうという名の氷菓は全国に点在する。我が久留米が誇る丸永製菓(まるながしぇいか)のアイスまんじゅうは粒あんだが、桐生のそれはこしあん。棒アイスの先端部分を黒く染めている。
<写真を拡大> 武正米店 |
まずはあんこの部分からと思って歯を立てた私は顔をしかめた。おっそろしく固いのである。人工と天然両方の前歯でもう一度かじってみたが、わずかに何本かの溝ができた程度。
棒を持つ手をぐるりと回して攻めやすそうなところを探す。どうもあんこの下辺りに弱点がありそうと思われた。そこで「えいや」と歯に力を入れたら、大きな塊が口の中に転がり込んできた。
「うーん」
<写真を拡大> ポテト入り焼きそば |
副交感神経を直撃されて頭が痛い。といって吐き出すわけにもいかない。口を手のひらで覆って我慢しながら溶けるのを待った。
後は直射日光の力で少しずつ柔らかくしながら、ゆっくりと片づけたのであった。
そうこうするうちにTwo Pumpsさんが愛車で登場、デスクもひょこひょこ現れた。
最初に向かったのは「武正米店」。名前通り、一応米屋さんだが店の中にはテーブルと厨房があってどっちが本業かわからない。店主の武正恒司さん(69)は取材慣れしていて説明に淀みがない。
<写真を拡大> 子供洋食 |
武正さんの名刺には「米・焼そば・懐かしい味子供洋食」と書いてある。やっぱり本業がわからないのである。
ということでポテト入り焼きそばと子供洋食を作ってもらった。
焼きそばはゆでたポテト、モヤシが具でソースがしっかりと絡まっている。トッピングは青のり。
子供洋食はというと、ゆでポテトのソース炒めと簡略化して言ってよい。昔はソースがかかるとそれだけで洋食感が立ち上ったものである。この食べ物も当時の雰囲気をいまに伝えるものであろう。
<写真を拡大> コロリンシュウマイ |
それにしてもポテトがこれだけ入っているとお腹が膨れる。胸焼け注意報が出る前に店を辞した。
続いて「コロリンシュウマイ」である。移動販売車が止まっている店は持ち帰りが基本。4個100円から売っている。先客が何人か待っていた。人気あるなあ。
本編で書いたようにシュウマイと言いながら肉類は登場しない。ジャガイモでんぷんが主役である。固くならないうちにソースをつけて食べる。
それにしても焼きそば、子供洋食、コロリンシュウマイとなんにでもソースである。カツ丼もソースであるから、群馬県は相当なソース県である。
<写真を拡大> 駅舎=温泉 |
世間は夏休み、いやお盆休みの只中にある。なのになぜ私たちはこんな時期に仕事しているのであろうか。見てごらん、全員汗みどろ。こんなときには……。
そう温泉が一番さ。
私たちは車でわたらせ渓谷鉄道水沼駅に向かった。そこは駅舎が温泉という珍しい駅なのである。街中を抜けるとすぐに山道になる。夏の日差しに輝く木々の緑を見ているうちに到着した。階段を昇って線路をまたぐとそこが駅舎。いや温泉。
<写真を拡大> そう温泉が一番さ |
常に持ち歩いているタオルを手に入ると広い湯船がある。源泉かけ流しである。
ざぶんと浸かって顔をつるんと洗えば「うーん」という声が思わず漏れる。人が少なくていい。
露天風呂がある。行ってみるとTwo Pumpsさんとデスクがいる。見なくてもいいものを見てしまった。
デスク 見なくていいものは見なくていい!
汗を拭いているとTwo Pumpsさんが「はい、これ」。本日2個目のアイスまんじゅうである。固さを知っているので、今回は用心して食べる。温泉でほてった体に冷たいアイス。神田のひとり酒に負けない美味さである。アイスってこんなに美味しかったんだ。
<写真を拡大> 水沼駅に入線するわたらせ渓谷鉄道 |
2人は車で桐生に戻り、私だけがわたらせ渓谷鉄道に乗った。1両だけながらシーズンだからだろう、若い女性の車掌さんが切符を切ったりお土産物を売ったりしている。
車窓から渡良瀬川の清らかな流れが見えたり隠れたり。カメラで景色を追っているうちに桐生に着いた。
これから前橋に行く。
Two Pumpsさんが伊勢崎市の老舗焼きまんじゅう店に案内してくださったが、残念ながら「もう終わりました」。毎日丁寧に手作りしているので数に限りがあるとのことであった。
<写真を拡大> 丹念に手作り、たまむらとうふ |
前橋の手前で豆腐の店に立ち寄った。ここも豆腐を丹念に手作りしていて、東京でもわずかながら売っているという。
デスク いつもお世話になっています。
前橋でホテルにチェックインして夜の街に繰り出した。目指した「丸光ホルモン」は夏休み中。次に向かったのが前橋中央通り商店街にある「パーラー・レストラン モモヤ」であった。要は食堂とレストランと喫茶店が一体となって、なおかつ酒もあるという店。ここの名物は「とんかつうどん」なのだが、遅く行ったので売り切れであった。
<写真を拡大> 食堂とレストランと喫茶店が一体となって、なおかつ酒もある |
そこでヒレカツを単品で頼んでビールをグビグビ。デスクはもうひとつの名物「涼柳麺(りゃんりゅうめん)」を注文した。冷たいラーメンである。鶏出しのスープに細麺。メンマ、チャーシュー、刻みキュウリがのってゴマが風味を添えている。
ちゃんと味見をしようと思っていたのに、注文したデスクが店主の森田武徳さん夫妻と夢中になって話しているうちにすっかり伸びてしまい、責任を取ったデスクの胃袋に全部が収まった。
デスク、どんな味だった?
<写真を拡大> モモヤの涼柳麺 |
デスク 残念ながら麺は伸びてしまっていましたが、スープが美味しかったです。酢を使わずにさわやかさと味わい深さを出しているところが出色でした。
それからのことはよく覚えていない。ホルモンの店に行って飲み食いしているうちに昼間の疲れが出て、寝てしまったような気がする。
翌朝、再びTwo Pumpsさんと合流した。といっても、Two Pumpsさんとデスクは昨日のうちに突如テーマに浮上した物件を探しにお盆の町に繰り出すことになっている。私は予定通り高崎に行き別行動。
<写真を拡大> 小さくなるまで見送っ…はじめから小さかった? |
2人が乗った車が小さくなるまで見送った私は歩いて前橋駅を目指した。朝からかんかん照り。暑い。1歩進むごとに汗が出る。駅が近づいたころ思い出した。
「前橋駅前にスパがあった」
ということで私はスパの客となった。スパというより日帰り温泉かな?
ともかく温泉で汗を流して両毛線で高崎へ。そこから再びスパに……入りませんよ、そんなには。向かったのはスズラン百貨店高崎店である。地下1階の「すかや本店」というそば屋に直行する。
<写真を拡大> 冷やしたぬき(並) |
本編で書いた「天然どか盛り」のそばを注文する。前回来たときは「もりそば大とかき揚げ」で簡単にKOされたので、今回は「冷やしたぬき(並)」で様子を見る。
具は天かす、刻んだかまぼこ、キュウリ、ワカメ、ゆで卵半分であるが、そこに生のタマネギが入っていることに注目いただきたい。そば関連では初めてみるトッピングであった。
そして思った通り、そばが天然どか盛りであった。東京の大盛りサイズ。予期していたとはいえ量が多い。再び撃退されてしまった。
<写真を拡大> そばが天然どか盛り |
「うーっぷ」とお腹をさすってお菓子売り場へ。「ガトー フェスタ ハラダ」のラスクを買うのである。ところが売り場に来て驚いた。地元なのに行列ができている。1人の客が買う量の多さかから考えると、職場への帰省土産にするらしい。
行列が嫌いな私も並んで買った。
これで私のお役目は終わりである。新幹線に乗って帰ろう。暑いしな。
<写真を拡大> 王様のおやつ |
こうして高崎駅に着くとお土産売り場で例のラスクを売っていた。こちらは客が少なく行列ななし。こっちで買うんだった。
ところでデスク。あの物件の取材はうまくいったの?
この後は任せたよ。
デスク ではこの続きは「番外編 幻の群馬B級ご当地グルメ『きんぴらうどん』を追う」にてご覧ください。引き続き、よろしくお願いします。
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■番外編 幻の群馬B級ご当地グルメ「きんぴらうどん」を追う(デスク)
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■群馬B級グルメ(その4前編) イモと言えばジャガイモじゃが
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