今後の核燃料サイクル政策の選択肢を検討してきた原子力委員会は二十一日、二〇三〇年時点で総発電量に占める原発の割合(依存度)に応じた選択肢の報告書をまとめた。依存度を0%、15%、20〜25%の三つに分け、使用済み核燃料や再処理工場、高速増殖原型炉「もんじゅ」の扱いをどうすべきかを記した。どれがいいかは書かなかったが、核燃料は再処理と地中に埋める直接処分を併存させる方式が望ましいとの意向をにじませている。
原子力委は近く、政府エネルギー・環境会議(議長・古川元久国家戦略担当相)に報告書を提出。同会議は八月にも新たなエネルギー政策をまとめる。
報告書は、原発依存度が0%(脱原発)を選ぶ場合、残された使用済み核燃料は全て直接処分し、再処理工場(青森県六ケ所村)は廃止、もんじゅの開発は中止し、高速増殖炉関連は基礎研究程度にとどめるのが適切だとした。
依存度が15、20〜25%の場合は、使用済み核燃料が継続的に発生することになるため、どちらも再処理工場は稼働させる形に。処理しきれない核燃料が残るため、再処理と直接処分の併存が適切とした。再処理で取り出したプルトニウムの使い道として、高速増殖炉実現に向けた努力を続けるのが適切とした。その一環で、もんじゅは一定期間動かす、としている。
また、20〜25%の場合は、併存のほか、高速増殖炉の開発を積極的に進め、核燃料は全て再処理することもメリットが多いと指摘した。
どの選択肢がいいか直接的な意見は示さなかった。ただ、将来、政策が見直されてもいいよう備えることを推奨したり、急激な政策変更は再処理工場を受け入れた自治体との信頼を崩すことへの懸念を示したりしている。その点で、使用済み核燃料は併存方式を採るのが望ましいと受け取れる。
併存方式なら、再処理工場は残り、もんじゅも基本的には存続する。政策変更に伴う混乱は避けられる。ただし、東京電力福島第一原発事故を受けた核燃料サイクル政策の見直し議論は、これまでの政策とほとんど変わらないことになる。
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