現場にアタック

2012年06月18日(月)
担当:白井京子
 
佐賀県の武雄市長が、図書館の利用者を増やすために、
来年4月から開館時間を3時間延長し、365日年中無休にするという方針を発表しました。
この番組でも以前取り上げましたが、その運営先が書店・レンタル大手のツタヤということで、
話題になりました。
なぜツタヤなのか、民間への委託について、
武雄市教育委員会文化学習課の錦織賢二係長に、お話を伺いました。

 
代官山の蔦屋書店T―Siteというのがありますが、電子端末を使った検索とか、
カフェとか、映画や音楽、そういった部分のノウハウを武雄市の図書館に導入して、
市民価値を高めるポイントとして、ご提供いただきたいということで考えています。
施設としては公立の図書館となりますが、運営のところを民間の方に力を借りて、
指定管理料をお支払いして、そのなかで運営をしていただく。
市民の皆様にも利用しやすくなって、なおかつ市としては、
経費の削減も図りたいということで考えています。

 
代官山のツタヤは新たな試みの店舗で、まるで図書館のような作り、カフェも併設されています。
この発想に市長が眼をつけ、また、元々ツタヤが年中無休と長時間営業を
得意としていたこともあり、打診して、基本合意に至ったのだそう。
こうしたなか、サービス展開の中で、ツタヤのTポイントカードを使えるようにすると発表したことから、
貸出履歴が民間に渡ってしまうのではと、個人情報の問題が取り上げられたこともあって、
武雄市の民間委託の話は、全国的に注目されることにもなりました。
ただこれは先週「履歴が民間に渡らないようにする」と市長が発表しています。
 
ところで、これまでも民間への業務委託は可能でしたが、
こうした大胆な発想の委託ができるようになったのは、
小泉政権の時に「指定管理者制度」というものができたから。
業務委託と指定管理者の違いについて、
図書館の委託運営サービスを展開している、
図書館流通センターの谷一文子社長にお話を伺いました。

 
 
業務委託というのは、やはり一部分なんですね。
この部分だけやってくださいとなると思うんですが、
指定管理者制度になりますと、例えば施設の管理も含めて、
館長さんからすべて、民間の者で運営するという形になります。
今までの「待ち」の姿勢から、沢山のお客様に来ていただくようなサービスを
していくという所で、住民の皆様に沢山のメリットが有ると思っています。
逆にデメリットは、限られた予算のなかでやっていますので、
民間で一生懸命サービスやって、お客様どんどん増えるんですが
予算的には増えることがないので、そこはちょっと、厳しいものもございます。
 
 
図書館流通センターは、もともと図書館にシステムや図書の納入などを行なっていた会社で、
いまでは日本の図書館3200館のうち、156館から指定管理者として委託されています。
東京でも指定管理者が図書館を運営するケースが増えていて、
代表的なのは開館時間の延長ですが、地元の飲食店の案内などの簡単な観光案内、
図書館とは直接関係しない講座やセミナーを開いて文化交流の場にすることなど、
いろんなやりかたで、図書館の魅力を高めています。
 
こうしたなか、武雄市はツタヤと組んで魅力を高めようとしていますが、
地元の競合する商店では、この新しい形の図書館が、
自分たちの商売に影響が出るのではないかと心配しています。
武雄市内で働く人に話を伺いました。

 
非常に世論的には代官山のツタヤをモデルにするということで、
市民の方でも歓迎されている方が結構いらっしゃるんですが、
実際図書館の中で本の販売をするとか、雑誌を増やすとか、文具を置くとか、
そういうことになれば、どうしても我々の商品とバッティングする部分が
あるんじゃないかと危惧はしています。
市民サービスの一つとして、図書館は無くてはならないものだと思いますが、
やっぱり、公共の税金を使って経営している図書館が地元の商売を圧迫するようなことを
やられると、私達も困るという思いがある。

 
市内の店舗、何店かにお話を伺いましたが
「図書館のサービスが向上するのは歓迎するけど、
                     雑誌や文房具を売られると、ツライ。」
特に書店は経営が厳しい。
全国の書店は、この1年でおよそ370店舗と、1日1店のペースで閉店しました。
定期的に発行される雑誌はコンスタントな売上が見込めるものだけども、
これまであった図書館帰りにコンビニや書店で本や雑誌を買っていく、
という流れがなくなってまうのでは、という不安を抱いています。
都心部は大型書店が多いのであまり気にならないけど、
街の小さな書店にとっては、図書館が便利になりすぎるのも、ちょっと不安のよう。
再び図書館流通センターの谷一社長のお話。

私達も東京の会社なので、地方の書店さんたちが大変心配されることもあるんですけど、
地元の書店さんと上手にコラボしていくって、大事だと思うんですよね。
地元の書店さんでなければできないことって沢山あるんです。
郷土資料を集めようと思いますと、書店さんにお願いするのが一番いいんですね。
そういうことで、共存していくということが大事ではないかなと私たちは思っています。
 
図書館だけが充実しても、地元の書店がダメになってしまえば、本当の地域の発展とは言えません。
今後もおそらく、「官から民へ」の動きは進んでいくとは思いますが、
自治体は図書館と地元商店の「共存」をしっかりと考えた上で、委託を検討する必要がありそうです。

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