バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は20日の記者会見で「必要とあらば追加措置の用意はある」と述べ、今後の緩和に含みを持たせた。大型減税の失効や財政の強制削減が2013年から一斉に始まる「財政の崖」問題については、「米経済にいくらかの影響を与えるだろう」との認識を示した。また、「欧州発の起こり得る問題に我々が備えることが重要」と述べ、米金融市場や金融機関の監視に力を入れる考えを示した。詳細は以下の通り。(ニューヨーク=伴百江、蔭山道子、ワシントン=岩本昌子)
●緩和ペースがゆるやかすぎるとの批判について
08年12月まで継続的にフェデラル・ファンド(FF)金利を引き下げた後は資産買い取りとツイスト・オペという標準的ではないやり方で量的緩和を実施してきた。そうした性質上、量的緩和が景気にどう影響を与えているかの効果を見ながら実施するので、金融政策は継続的というよりもデコボコとしがちだ。これまでFRBの景気の見方が楽観的すぎたことがわかれば、追加の緩和をする必要もあった。緩和の規模は控えめだが、その効果は資産買い取り実施の後も続いている。
持続的な経済成長と労働市場の回復のために必要とあらば追加措置の用意はある。
●新たな資産買い取り実施の可能性
前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降発表された数多くの経済指標はややがっかりさせられるものが多いが、季節調整の影響をどう読むかなどまだ不透明な点も多い。一方で欧州危機は深刻化しており、景気の先行きも影響を受けている。ツイスト・オペの期限延長はその意味で景気には新たな支えになるだろう。追加緩和の際にはもちろん新規の資産買い取りを検討している。
●金融政策のホワイトハウスとの協調について
政策当局からの協力は大歓迎だ。ただ、FRBの金融政策の持ち玉は尽きたという見方は受け入れられない。我々の金融緩和のツールは標準的ではないが、一段の緩和をして景気を回復させる余力はまだある。
●ロムニー共和党大統領候補の批判について
資産買い取りプログラムは資産価値と金融市場の安定化に効果を発揮している。住宅市況がなかなか反応しないなどの問題はあるが、量的緩和第2弾(QE2)は当初あったデフレの問題を解消したし、我々は今後も追加の緩和を実施することができる。FRBは超党派の立場であり、政治的立場とは関係なく純粋に経済の基盤をベースに政策決定をしているし、今後もそうだ。
●ツイスト・オペの効果は
金利は質への逃避など緩和以外の要因でも押し下げられている。ツイスト・オペや資産買い取りプログラムだけでなく、投資家が米国債をFRBに売って社債を買うことで社債の金利を低下させ、利回りスプレッド(格差)の縮小が可能だ。あるいは銀行が米国債を売って、その資金を融資にまわすことができる。金融緩和は単に長期金利への影響だけでなく、他の金融商品の金利や利回りスプレッドなど、景気回復を支えるもっと広範な効果が期待できる。
●景気低迷が10年以上続く恐れはないか
それを避けるために我々は金融緩和を実施している。失業率は依然として高水準だが、ピークだった10%から今は8%に近づいている。ゆっくりだが低下している。雇用情勢が望ましいペースで改善しなければ、追加緩和の用意がある。
●失業率が高止まりすると予測するのに追加緩和をしない理由は
ツイスト・オペの延長は景気を支えるための新たなステップとらえている。もっとも、追加緩和に踏み切るためには景気の現状や欧州の状況について一段の情報が必要だ。量的緩和にもコストとリスク、金融市場の安定と出口政策が伴うため、容易に実施すべきではない。追加緩和が絶対必要との確信が持てたときに初めて実施するものだ。
●欧州危機に対するFRBの取り組みについて
欧州がまず最前線に立つべきだ。欧州にはこの問題に取り組む十分な力量がある。ユーロ圏を維持することが重要だと欧州各国は認識し、この問題に取り組んでいる。我々は欧州危機の解決を欧州諸国のリーダーシップに委ねる。FRBは頻繁に欧州の中央銀行関係者と連絡をとり、できるかぎりの支援をしようとしている。
先ごろ実施したドル・スワップを他の中央銀行に提供する協調策はドル資金調達市場の圧力を緩和するのに役立ち、欧州銀行のドル融資の継続を可能にした。ただ、現時点でFRBにできることは対話を通じて欧州諸国に助言をすることだ。
FRB、バーナンキ、FOMC
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