この技術士は、今年度、原子力に関する部門が新設されるんだ〜という程度でほとんど眼中になかった。知名度も低いし、取ったからって何のメリットもなさそうだったから。 なぜ受験することになったかというと、この試験の前に受けた核取の試験会場で、同じ核取の受験者から「もちろん、技術士も受けるよね?」と、受けるのが当たり前のように言われた。ときかね管理人として、そう言われて受けないわけにはいかないということで、慌てて情報収集を始めたのが、この試験の約半年前の3月中旬だった。
まずは、インターネットで情報収集をするが、新設される部門に関する情報はない。あちこちのHPを見て、最近、試験制度が変わったということは分かったが、さすがはインターネット、自分で知識がないと、どの情報が正しいのか分からない。そこで、本屋に行って、技術士1次試験の初歩的な参考書(技術士一次試験完全研究)を購入する(まったくテキストのなかった核取に比べて、専用の参考書や問題集があまりに豊富で立ち読みしながらにやけてしまった)。
自宅に帰り、この本を読んでやっと試験の流れが分かった。 共通科目は免除できる(数学とか今更、出来そうもないので良かった。)。基礎科目と適正科目と専門科目の3科目を受験すれば良いと知った。 次に過去問題をアマゾンで入手し、自分の力を計った。それと同時に、学会で配られた専門科目の模擬試験問題を入手した。 時間を測りながら3科目を解いてみると、時間的にはなんとかなりそうなのだが、基礎が難しい。こんなことがらを覚えなくちゃなんないの?どんな勉強をすればこんな幅広い知識が得られるの?あと半年弱で修得できるの?と悩む。無理かも・・・・と、やる気がなくなってくる。 また、常識や倫理のない私らしく適正の点数も伸びない。 専門は、なんとかなりそうな感触を得た。 とりあえず、基礎をなんとかしようと、勉強会仲間を募ったり、工業数理の教科書やイミダスなどのテキストや問題集を集めた。ゴールデンウイークくらいまでは、その辺の勉強を細々とやっていた。嫌々ながら。 風の噂で、RIや核取の知識を持っている人は、勉強しなくても受かるよ・・・・とか、技術士の知名度を上げるために技術士会は躍起になっているので、1次試験の問題は易しくなる方向らしいよとかの噂を聞いて、こりゃ、勉強しなくてもいけるかも・・・なんて、甘い考えが頭を支配していった。
ゴールデンウイークが過ぎると、核取の合格発表が近づき、勉強どころの精神状態ではなくなった。勉強しなくても受かるだろう・・・という気持ちもあって、この頃から、しばらくの間はほとんど勉強しなかった。精神安定剤である酒の力を借りないと平常心が保てないほどに不安定だったから。 その間も、勉強会の仲間は黙々と勉強していた。いろいろと勉強方法のアドバイスをもらった。勉強会仲間と会う度に(自分もやらねば)という気持ちが盛り上がったが、猛暑のせいもあり、ビールをあおる毎日が過ぎていった。 6月の中旬くらいから、こんなことではダメになると思い立ち、気持ちを入れ替えて少しずつ勉強を始めた。けど、基礎科目の勉強がつらい。なんで、こんな勉強をしなくちゃなんないのか、勉強をする度に疑問がわき上がってくる。やっても、やっても範囲が限りなくさっぱり先が見えないし、バイオなんてまったく関係ないと思っちゃうし。 そうこうしながらも、毎日2〜4時間の勉強は続けた。蒸すような暑さに、ビールを飲みながら勉強した日もあった(酒の飲みながらで、やる意味あるのか、と思いつつも)。 身の入っていない、だらだらとした勉強を続けたが、一向に光は見えない。8月に入り、残り2ヶ月となった頃、勉強方法を転換する。テキストの読みすすめをやめて、問題集解きに専念する。何が出るか分からない試験でも、とにかく過去問や予想問題集の先に光があると信じて、多くの問題を解くという実践的な勉強に切り替える。問題集も追加した。問題解きの方が勉強が楽しいし。 この勉強を試験直前まで繰り返した。最後の頃は、各科目100問程度の問題を完全に覚えたので、イミダスの暗記をした。ここで頭に入れたフラーレンは役に立った。それと、勉強仲間とのチャットでのガチンコ勉強はおもしろかったし、暗記の確認が出来て有効だったと思う。 (試験前日) 10月は台風の季節。万が一でも試験会場に着けないということがないように、試験会場近くの高田馬場に前泊した。11:15集合なので、朝、自宅を出ても十分間に合うのだけど・・・・・ 午後3時にチェックイン。部屋に荷物をおいて、試験会場までの下見をする。地下鉄東西線早稲田駅から地上に出て、適当に歩きながら試験会場を探すが見つからない。受験票には徒歩5分と書いてあったと記憶している。さすがに10分も歩けば必ず着くはず思いながら歩く。しばらくうろうろして早稲田大学の別の学部に着いたので、そこの守衛さんに大隈の像のある学部の場所を訊いて、反対方向だと知り、やっと到着(下見に受験票を持っていかなかったので、何学部かも分からず、ただ大隈の像で部屋割り表の配布することしか記憶になかった)。 門の前で(明日は、ここで試験を受けるのか)と思った程度で特に高揚感なし。どうも、いつもの試験と気持ちの入れ込み方が違う。
ホテルへの戻り道で、ちょっと早めに夕飯を食べて、スーパーでおやつと飲み物を買ってホテルに戻る。とりあえずリラックスするためにテレビをつける。笑点を観て、ちびまるこちゃんを観て、サザエさんを観る。どれ、少しは勉強するかと思ったけど、さんまのからくりを見始めてしまった。ずるずるとテレビを観る。行列の出来る法律相談所を観て10時。そろそろ寝ないと思い、布団に入る。何となく部屋が寒いなーと思っていたけど、布団をかけても薄ら寒い。風邪がぶり返すとやだな・・・と思って、空調のスイッチをいじる。冷風しか出ない。フロントに電話して、暖かくならないのか、と訊くと、それは出来ないから、毛布を貸すとのこと。チェッ!これだから安いホテルは・・・と思いつつ、にこやかに毛布を受け取る。その毛布を掛けて就寝。珍しく興奮少な目で、11時半頃にはすーっと眠りに入った。
(試験当日) 6時40分起床。すっきりと目が覚める。 気負いも緊張もない。 少しは勉強しないとと思い、持参したテキストを眺める。気持ちの高まりはなく、平常心であったが、今ひとつ、頭に入らない。テレビをつけてぼーっとする。しばらくそうしてから、荷物を整理して、熱めのシャワーを浴び、身支度を整える。 8時に近くのすき家に朝飯を食べに行く。その近くに、ちょうどコンビニがあったので昼食を買う(おにぎり3個、チーカマ、爽健美茶)。 まだ試験会場に行くのには早すぎるので、部屋に戻り、何ともなしにテキストを見る。5分ほどで飽きる。テレビを観る。試験の時間が迫ってきても、興奮はない。いつもの心地よい緊張感や気持ちの高ぶりがない。十分な準備をしてこなかったからか、それとも、今回の試験をなめているからなのか・・・・・。 10時になったので、ホテルをチェックアウトして試験会場に向かう。 多くの受験者が早稲田大学を目指して歩いている。その人の流れに乗って歩く。パラパラと雨が降っているがカサはささない。昨日、下見をして、カサをささなくても大丈夫な距離だと知っていたから。 大学の門をくぐり、大隈の像の前で試験会場の部屋割りの紙をもらう。 建物の入り口で大勢の人がたむろしていたが、気にせずにまっすぐに指定の部屋に向かう。 10時過ぎに部屋に入った。既に2名の人が席に座っていた。自分の席を探すが席には番号が書いていない。既に座っている人に、「席は自由なんですか」と訊くと、分からないけど座っているとの返答。席は自由なのかと思いつつ、自分の好きな最後列の席に座る。 数分の後、試験官が来た。「席は決まっているのか」と訊くと、今から机に受験番号カードを貼るとのこと、試験官の張り出した席順表を見て、最後列の席であることを確認し、そこに移動する。 今までの試験で最後列の席で試験に落ちたことはない。縁起がいい。これはいけるかもと思った。 11時近くなって、部屋は受験者で埋まっていった。人が増えると、だんだんムシムシしてきた。けど、寒いよりは暑い方が好きなので、好都合と思った。 このときの格好は、長袖のシャツで腕まくり。シャツの下はTシャツ1枚(Tシャツ1枚の人も いた)。 (適正科目) 11時20分頃から、受験の手引き、解答用紙、問題用紙が配られた。 受験の手引きに沿った試験の説明を聞く。受験の手引きに基礎科目の各群の問題数が載っている。解析6問。例年より多い。解ける問題があるかもと淡い期待を抱く。 試験官の指示により、解答用紙にフリガナ、氏名、受験番号を記入し、受験番号をマークする。 受験票が落ちないように、受験番号カードのテープをちょっと剥がして、受験票を挟み込むように張り付ける。机が狭いので落とすことが良くある。今までの受験で培った知恵である。また、そういった意味では座布団の持参も知恵だと思う(私は、これがないと1時間以上の試験は耐えられない)。
筆記具、電卓を空いてる場所に整頓して、シャーペンを持ってスタンバイする。 再度、受験番号と氏名を確認する。気持ちの高ぶりはあまりない。 試験官の「11時30分になりました。始めてください」の合図で問題を開く。 緊張感も何もなくだらだらと問題数を確認する。1ページ目を開いて、いきなり問題番号が「U」とかなっている。えっ「T」は?落丁?試験官に訊くべき?とか思ったが、問題はきっちり15問ある。なるほど、共通科目がTなのかなどと冷静に分析する。 適正は時間的に厳しいことはない。予定どおり30分で全問を解くことにする。 1問目から進める。特に引っかかる問題はない。消去法を組み合わせてどんどん問題を解いていく。課題4 公益通報保護法とか出てきたので、△マークを付け、軽く読んで、後回しにする。課題5も何となくは分かるが難解なので△マークを付けて後回し。その調子で15問まで解き終わって△の数を数えると、4〜5問。こりゃ、楽勝だと思いつつ時計をみると、約30分。予定どおり。 △マークの問題を雰囲気とカンで答えて、全問解答を選ぶ。 最後の問題から前に向かって、見直ししながら解答用紙にマークしていく。15問全部をマークして、解答用紙を見て大変なことに気付く。5択のうちの2番の解答がひとつもない。15問5択だから1つの番号に対して3問程度で分布するはず。さて、どれを2にするかで迷う。まあ、ボーダーの7問はクリアしている。あやしげな解答を2にしよう。ということで、怪しい問題を2つほど2に変更して、解答完成。時間は50分。最後の10分はマークミスや受験番号の見直しをして、時間をつぶす。
「解答を回収箱に入れて、荷物を持って退出してください」との試験官の合図で、自分の荷物を持ち、解答用紙を回収箱に入れながら部屋を退出する。このとき、受験票を剥がそうとして、受 験票が少し破けてしまったが気にしない。 しばらくの間、廊下で待っていたが、なんの音沙汰もないので、部屋を覗くと半分くらいの人が飯を食べている。(なんだ、入って良かったのか)と思いつつ、自分の席に戻り荷物を置く。
適正が良い感じだったので、これは、落ちるわけにはいかないと、だんだん思い始める。 昼食後、テキストをぺらぺら眺めたが、頭に入らない。どんな受験生がいるのかと気になり、原子力・放射線部門の他の部屋を覗いて歩く。会社関係など、5名程度と挨拶を交わす。 (専門科目) 13時20分頃、専門科目の解答用紙と問題が配られ、専門科目試験の説明が始まった。問題数は30問。25問を答えることを頭にたたき込む。 シャーペンの芯の長さを調整しながら、時間配分を考える。(1時間で文章問題をざっと解き終わして、計算問題を後回しにして、見直して・・・・)と計画を立てる。 「始めてください。」の試験官の合図で問題をめくる。1ページ目の問題を見て、げっ!難しいじゃん!!前評判と大違い。難しすぎる。こんな問題が解けるのか?と思ったが、今は解くしかない。問題に専念する。だんだん、やってやる!!という気持ちが強くなってくる。
ざーっと問題を眺めながら、30問、問題があることを確認し、1ページ目に戻って、1問目から解く。パス、パス、パス・・・・と△マークが続く。9問目でやっと分かる問題に当たる。そこから順調に解答を進める。多少詰まりながらも解答を導き出す。この段階では計算問題はざーっと見るだけで解かない。 30問まで解ける問題だけを解いて、何問解けたか数えてみる。15問。時間は50分くらい。 再度、最初に戻って、△マークの問題と計算問題を読み直す。最後の科目の基礎科目を助けるために1問でも多くの正解を得なければと、熱くなってくる。おれに解けない問題はないと信じながら。
消去法等を駆使して、それっぽい解答を見つける。計算問題も解く。計算式を忘れている。やばい。いろんな式を問題の端に書いてみて、記憶を呼び起こす。なんとか答えを導き出しつつ、再度30問まで行く。増えた解答数は4問。合計19問。時間は1時間20分、残り40分。 とりあえず、19問を解答用紙にマークする。残り6問。△マークの付いている問題を更に読み直す。計算をやり直す。問16を解きなおして、問3の勘違いに気付く。慌てて直す。
この段階でボーダーラインは超えている。残りの6問は、雰囲気とカンと当てずっぽうで、解答を導き出す。 なんとか25問の解答が終わった。26問以上解答すると失格らしいので、何度もマークの数を数える。問題と突き合わせてマークミスを確認する。 これにて時間切れ。ほとんど余裕はなかった。途中退室者もいない。
適正、専門と、なんとかいい感じで進んでいる。これはいける!最後の基礎をがんばろうと思いながらトイレに向かうと、驚異的な渋滞。20分のロス。小腹がすいたので試験前に何か食べようと思っていたのに、部屋に戻ったら、すぐに基礎科目の解答用紙と問題が配られてしまった。 腹減ったと思いつつ、試験に集中する。ここに来て気分がやっと盛り上がってきた。受かってやる!!という気持ちが強くなってくる。 (基礎科目) 試験官の説明を聞きながら、受験の手引きを見て作戦を立てる。とにかく、基礎科目は時間との戦い。最初からダッシュをかける。 「始めてください。」の試験官の合図で、問題を開く。 まずは、目についた信頼性の問題から。多少数値が合わないが、この辺でオッケーだろう。 そこから、ぺらぺらとページをめくり、ははーん、こんな問題なんだと思いつつ、情報・論理、解析、化学・バイオ・材料を読みとばす。最後のページから技術関連を解く。技術関連の2問は確実に解けた。ほかは完璧には分からない。飛ばす。この時点で3問。 次にバイオ。フラーレンって、たしか炭素が60個のやつだったような・・・と記憶を呼び起こし、他は化合物じゃんと消去法でも解答を確定する。次に穴埋め問題。2つまでは絞り込めたが最後が詰まらない。ホメオタシスの問題では、明らかに心臓がおかしい。こりゃ肝臓だろとつっこみながら、あまりに単純で他を疑ってしまう。けど、他の確実に合っているところは見つからない。とりあえず、確定する。これで5問。あと1問で合格だ。 最初の設計・計画に戻る。問2は常識問題。頂き。これで6問。問4もなんとか解を得る。設計・計画は3問終了。 情報・論理の問2を読む。2つに絞れるが詰まらない。保留、次。問3の問題を読むが確率問題は無理。×を付けて捨てる。問4は簡単。問5もなんとか解を得る。エイ、ヤーで問2も解を選び、情報・論理も3問終了。これで10問。 ここで、とりあえず解答用紙に答えを書き込む。残るは、解析3問、バイオ1問、技術関連1問だ。時間は残り30分。 解析は文章問題の3問を選択。文章の雰囲気からエイ、ヤーで解答を導き出す。粒径が1/10で速度は2乗だから、抵抗が小さくなってその2乗で100倍早くなると考えて100倍を選ぶ(これ間違いですね)。問2は、膨張率とヤング率の関係から単純に導き出す。こんなんで良いのかと思いつつ、何かしら選ばないとと思いつつ決定し、3問終了。 バイオでは、発酵と解糖について、酒の醸造などを考え、残り2択を絞り込み。バイオも3問終了。 技術関連も、太陽エネルギーはすっげー大きいということから決定。これにて、技術関連も3問終了。あとは、受験番号等をじっくり見直し、マークミスのないことを確認して時間いっぱい。 疲れたー。それなりに燃え尽きることが出来た。
帰りに、知り合いと喫茶店に入り、ビールを飲みながら答え合わせ。 余裕で合っている。かんぱーい。 |