戦国武将の織田信長が徳川家康に振る舞った料理「安土饗応(きょうおう)膳」を、滋賀県近江八幡市の宿泊施設「休暇村近江八幡」の料理人が再現し、19日披露された。信長は味に不満を持ち、料理を用意した接待役の明智光秀を叱責(しっせき)し、それが2週間後の「本能寺の変」につながったとも伝えられる。
饗応膳は1582(天正10)年、信長が武田勝頼を討った家康を安土城で3日間もてなした際に出したとされる。江戸時代の文献「続群書類従」によると、計4回、約140品が振る舞われたといい、今回は最初に出された「をちつき(落ち着き)膳」を再現。タイの焼き物にホヤのひや汁、アワビの煮物、ハモの串焼き、スズキの汁物、ふなずしなど全国の山海の幸を使った33品が並んだ。
鶴だけはキジで代用し、調味料は塩、酢、酒、みそ汁の上澄みなど和食の定番。担当した休暇村の調理長大島康広さん(47)は「意外に現代の食材と変わらない」と話す一方、「良くいえば食材の良さを生かした味。現代人の好みから言えば、美味とは言えない」。当時は調味料を混ぜ合わせる技法が発達しておらず、味付けは単調でかつ、若干濃いめという。