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「ゴビンダは金に困っていただろう」「もっと金をほしがっていただろう」
狭い取調室で刑事からそう問われ、ナレンドラ・クマル・カドカさん(42)は「違う」「そうではない」と繰り返した。刑事はときには、机をバーンとたたきながら「ウソだろう」「本当のことを言え」と大声をあげたという。
1997年3月。ゴビンダ・プラサド・マイナリ元被告(45)と同居していたカドカさんは不法残留の容疑で警視庁に逮捕された。いまネパール東部でショウガ輸出業を営むカドカさんは「ゴビンダが金ほしさに女性を殺した、というのは、いかにも見当外れだった」と振り返る。
計5人のネパール人の同居人は、まとまった金を母国の家族に送金するため、互いに金を融通しあっていた。部屋には常に25万円ほどの現金があったという。
「あのとき、警察がもっと捜査を広げていれば、ゴビンダが巻き込まれることはなかったのでは……」
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