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【福島原発事故】

母子に心のケア 専門医充実して 福島に通う小児心療医の叫び

心の問題を抱えた子どもが描いた絵を手に、ケアの重要性を訴える吉山直樹教授=東京都文京区で

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 東京から福島県須賀川市の公立岩瀬病院を月に一度訪れ、診療を続けている小児心療内科医がいる。西武文理大(埼玉県狭山市)の吉山直樹教授(66)=東京都板橋区在住=で、東京電力福島第一原発事故による放射能の影響を心配しながら、福島に住み続ける母子らへの心のケアの充実を訴えている。 (山内悠記子)

 昨年十月、高知市内で開かれた学会。吉山教授は、知人で岩瀬病院の三浦純一院長(58)と再会した。二人は約五年前に医療関係の会合で知り合い、交流を続けてきた。

 いつも感情を表に出さない三浦院長が「地震や放射能下の生活を続け、精神的に苦しんでいる福島の子どもを何とか助けてほしい」と、涙ながらに訴えた。震災後、同病院では子どもたちが「死にたい」など衝撃的な言葉を口にするケースが相次いでいた。

 吉山教授は「このまま福島で暮らしていけるのかという不安を抱える人たちに、少しでも寄り添い続けたい」と、翌月から病院を訪れた。

 吉山教授が診察した福島県浅川町に住む小学三、四年の兄弟も、心身のバランスを崩していた。二人だけでいた自宅で被災。夏には、放射線を警戒しクーラーのない教室で長袖で過ごし、外出を控えた。長男(9つ)は七月から十分に一回はトイレに駆け込み、次男(8つ)は不登校になった。

 二人は県内数カ所の心療内科を受診し、投薬を受けたが、大きな効果はなかった。

 吉山教授が試みたのは絵画療法。兄弟が描いたのは宇宙船の中で平和に眠る家族と、茶色の空の下で楽しむサツマイモ掘りの絵だった。教授は「地震とその後の生活の中で、守られたいとの思いや、不安な気持ちが現れた」と分析する。

 母親(32)が仕事を辞めて寄り添い、兄弟を抱き締めるなどスキンシップを増やした結果、症状は改善。不登校だった弟も一月に学校に復帰した。母親は「二人とも活発で、こんな症状は初めて。原発事故の被害はこれからも続く。いつでも専門の医師の診療が受けられる体制を整えてほしい」と願う。

 三浦院長によると、須賀川市内の仮設住宅で実施した健康診断では、小学生以下の子ども十人のうち六人が糖尿病だった。「異常事態。運動不足やストレスなどが原因ではないか」と懸念する。

 県によると現在、県内にいる小児専門の心療内科医や精神科医はごくわずか。吉山教授は「コミュニケーションを取りながら治療に結び付けるスキルを持っている小児専門医が必要だ」と指摘している。

 

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