この恐るべき安全軽視が、本当に政府による決定なのか、にわかに信じられない。関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を政府が正式決定した件のことだ。
安全を置き去りにした決定は、政府が国民に恐怖を強いるに等しい。直ちに決定を撤回すべきだ。
野田佳彦首相は「福島を襲ったような地震や津波が起きても事故は防止できる」と断言したが、科学的根拠が見当たらず、あまりに無責任だ。
そもそも福島第一原発事故の原因すら分かっていない。東京電力は想定外の津波のせいだと強弁するが、津波が来る前に配管が破損した疑いは消えていない。
原子力規制庁はまだ根拠法すら制定されていない。福島第1原発にさえ設置されていた免震重要棟が大飯原発には整備されておらず、非常時の指揮所は存在しないに等しい。放射性物質のフィルターが付いたベントは4年後に設置の予定で、津波の経験を踏まえた防潮堤のかさ上げは2年後にしか完成しない。ないない尽くしで、よく再稼働を決断できるものだ。
大飯原発は地震の巣である活断層の密集地帯に位置し、敷地内を軟弱な断層が走るが、地質の再調査をする予定もない。首相は新安全基準を安全性の根拠にしたが、これをつくった原子力安全・保安院は、福島原発事故を防げなかった当事者だ。しかも、この基準は首相の指示からたった3日でつくった即席の代物である。これで安全だと信じる人はまずいるまい。
再稼働決定に至ったのは、電力不足の印象が巧みに植え付けられたためだろう。政府の需給検証委員会が、関西電力管内で最大15%の電力が不足するとの予測を発表したのが空気を変えた。
だが、民間の節電努力もさして勘案しない代物だ。手術中の病院も停電するなどと不安があおられたが、総合病院には自家発電設備があるのが普通ではないか。
再稼働の結論を誘導するための予測、という印象をぬぐえない。事実、東京電力の経営再建をにらみ、東電の原発を再稼働させるのが政府の本当の狙いとも伝えられる。公正性が疑われる決定と言うほかない。
政府がなすべきなのは恐怖の強制ではなく、恐怖の除去だ。脱原発を明確に打ち出し、省エネ・新エネ技術立国の道筋を明示するのが本来の仕事のはずである。福島の教訓を無駄にしてはならない。
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