記されなかった使い魔 その十二
舞い降りたのは獅子の顔と蛇のしっぽ、鷲の翼をもつ幻獣だった。
グリフォンである。
まだ食ったことがない。
うまいのだろうか?
食ってみたい、だがその背に人が乗ってるともなればそういうわけにはいかない。
サイトが残念だと思っていると驚愕の出来事が巻き起こった。
グリフォンである。
まだ食ったことがない。
うまいのだろうか?
食ってみたい、だがその背に人が乗ってるともなればそういうわけにはいかない。
サイトが残念だと思っていると驚愕の出来事が巻き起こった。
「久しぶりだね、僕のルイズ!」
そう言うとグリフォンに乗っていた彼は颯爽と飛び降り、一目散にルイズを目指した。
その彼は羽帽子を被った貴族であろう男でちょび髭が特徴だった。
そして、そのちょび髭のダンディなお兄さんは突然ルイズを抱き上げたのだ。
その顔はどう見たって愛しいものを見る慈愛のこもったそれだった。
そして言うに事欠いて僕のルイズなどといいながら、ルイズの小さな体を抱きしめている。
サイトは戦慄した。
サイトが生まれて以来はじめてみる生物がそこにいた。
俗に言うロリコンという社会の闇にはびこる魔物である。
俺はノーマルだ、俺はノーマルだと苦しいいわけを頭の中に描きながら、実はリリカルなアニメの主人公の幼女たちが大好きな現代社会にはびこる真性の闇の存在の化身である大きいお兄さんたちである。
巨乳を信望し成熟した女性こそを至高とするサイトたちおっぱい戦士と正反対のところにいる、貧乳或いは無乳を愛する究極のロリータコンプレクッス感染者たち。
両者は有史以来どちらの乳こそがすばらしいのか喧々諤々と議論を戦わせてきた宿命のライヴァルである。
幸いというべきかサイトの周りにはその宿命の敵は現れなかったのだが、ここに来て遂に彼らの尖兵である男が現れたのだ。
サイトの体に緊張が走った。
ロリコンは危険な存在だ。
今までなんど優秀なおっぱい好きが彼らの攻勢に耐えかねロリコンに転んできたのだろうか?
ロリコンは行き過ぎると犯罪だというのに、だがそこがいいと警察や法の目を掻い潜ってロリコンはその勢力を広げているのだ。
なぜだなぜあんなにおっぱいが大きいヨーコさんより、ぺったんこなニアのほうが大好きだと転んでしまったのだ、裏切られたおもいだよ、きのこさん……
閑話休題
サイトは注意深く相手を観察する、もしちょび髭が軽度の妄想にとどめておけるロリコンならばまだいい、だがもしも実際に行為に及ぼうとする重度のロリコンならばそれは犯罪である。
妄想までで収めておけるならサイトも何も言うまい、或いは責任を最後までとるのならギリギリ何も言うまい、だが責任とる気がないなら犯罪である。
目の前の男はどうなのか?
あのちょび髭一体何歳なのだろうか?
見た感じ三十近いのではないだろうか?
それが見た目ロリであるルイズを抱きしめて恍惚の表情を浮かべているのは犯罪以外の何者でもなかった。
だが、よく考えてみれば確かルイズは16歳なはずで、それならば結婚できるからギリギリOKか?
いやでもルイズの年じゃ淫行条例でお縄につくのでは?
結婚してるのならOK?
サイトの中で様々な疑問が浮かぶ。
このまま静観するべきなのだろうか?
件のご主人様はちょび髭の行動に困惑しつつもいやそうな顔をしてないから、サイトが手を出すのは野暮なのかも知れない。
だが、犯罪をミスミス見逃していいものか?
ルイズがこちらをチラチラ見るのはサイトに助けて欲しいのか、しかしルイズの性格ならいやならすでに伝説の筋肉ドライバーでちょび髭を沈めているはず。
どうするべきか?
サイトが悩んでいるとルイズがおずおずと口を開いた。
「ワッ、ワルドさま……お久しぶりです」
「あぁ、本当に久しぶりだね、我が婚約者殿」
ちょび髭がルイズをクルクルとまわしながら呟いた言葉をサイトは確かに聞いた。
『婚約者』
ならば!
ギリギセーフ!
サイトはウンウンとうなづいた。
ちょび髭はサイトと相容れない対極の男だが、責任とる気でいるのならサイトがどうこう言うことではなかった。
記されなかった使い魔 その十二
アンリエッタ王女はルイズが部屋から出る最後に、一人だけ護衛の男を送るというような言葉を残していった。
そんな男がいるのなら初めからそいつに任務も頼んだらいいのにと思うサイトだったが、おそらくその人物は任務の内容自体は知らず、ただルイズの純粋な護衛として派遣されるのだろう。
そうでないと姫がわざわざルイズに頼む理由がなくなるのだから当然だ。
サイトは極秘任務とはいえ突然何日も学校を離れるのだからマチルダやシエスタ、キュルケには学校を離れる事を伝えに行った。
彼は結構マメな男だった。
そしてキュルケとシエスタにはアルビオン土産を約束し、マチルダにはアルビオンの市井の様子を探って欲しいと頼まれた。
マチルダの家族はアルビオンにいるらしく、あまりも危ないようなら家族をトリステインに呼ぶことも考えているようでその判断をサイトに依頼したのだ。
サイトは二つ返事で引き受けた。
そして夜があけたのである。
マチルダがあの日じゃなかったら旅立つ男とその男に餞別を送る女的なシチュで夜這いが成功したのにと内心残念に思っていたサイトは魔法学院の前で借りてきた馬の面倒を見てきた。
傍らには眠そうなルイズと妙に張り切っているギーシュがいる。
サイトの目にキラリと光る何かが映った。
それは指輪だった。
ルイズの指に輝くそれは水のルビー、王家に伝わるという水の秘宝である。
昨夜ルイズがアンリエッタから借り受けた王族の使いであるという証である。
それを隠しもせず堂々とつけているルイズにサイトが注意しようとすると突如サイトたちに影がかかり、そして冒頭の場面が巻き起こったのだ。
ちょび髭はにこやかにサイトとギーシュに笑いかけ自己紹介をしてきた。
「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだルイズの使い魔くん!」
そう言って握手求めるちょび髭は無駄に爽やかだった。
体操のお兄さんみたいだ、サイトは子供向け情操教育番組の無駄に爽やかではきはきしゃべる司会のお兄さんを連想した。
「えぇっと、一応ルイズの使い魔なつもりの平賀サイトです」
サイトの煮え切らない答えにルイズが噛み付くように声を上げる。
「あんたは一応じゃなくてちゃんとした私の使い魔でしょ!」
グリグリと足を踏みにじるルイズの攻撃が地味に痛い。
そのくせちょび髭に向かっては作り笑いでニコニコしているのだから……ルイズ、恐ろしい子とガラスの仮面バリに叫びたいサイトである。
ワルドはそれに気づかぬようにギーシュにも爽やかな挨拶をこなし、自身の来訪の目的を告げた。
どうやら彼こそがアンリエッタ王女が告げた護衛のようだった。
それがルイズの婚約者とは偶然なのか、あるいは姫様が気をまわしたのか?
そうだとしたら姫様グッジョブである。
婚約者殿がご主人様を守ってくれるならサイトの役割は最小限で済む、サイト自身はアルビオン観光にせいが出せるというものだ。
たとえ戦場とはいえ基本不死身なサイトはあまり戦時下の国に行くということに(自分の身の安全ということに関しては)楽観的だった。
それ以上に国が空に浮いているといわれているアルビオンに訪れるのがかなり楽しみだったのだ。
好奇心におらワックワックしてきたぞとニコニコしているサイトにルイズがサイトの耳元まで口をやってきつい声で話しかける。
「あんた、これから大変な任務だって言うのになにニヤニヤしてんのよ、使い魔のしつけがなってないってワルドさまに思われるでしょ!」
何やらイライラしているようなルイズは、やはり大事な任務に緊張しているようだった。
だが八つ当たりされる筋合いもないので言い返してやろうとサイトが口を開こうとしたとき、ワルドがグリフォンに飛び乗り、皆に声をかけた。
「さぁ、それじゃ自己紹介も終わったことだし、そろそろ出発しよう!アンリエッタ殿下からは先を急ぐ任務だと聞いている、少しでも早く出るのがよいだろう?さぁ、ルイズ、こっちにおいで?」
そう言ってルイズを手招きする。
ルイズは何やらサイトのほうをチラチラみて何かいいたそうにしていたが、「フン」と急に鼻を鳴らしてワルドのほうに歩いていった。
「何か機嫌の悪くなることでもあったのかね?」
首をひねるサイトにギーシュが話しかける。
「使い魔クン、君とは一度華の愛で方について話し合ってみる必要があるようだね」
そう言って訳知り顔で肩をたたくギーシュはひどくむかついた。
貴様は二股して失敗した男だろうに、そんな奴の女性の扱い方なんて聞いても仕方がない。
サイトはため息をついて自身が用意した馬にまたがり鞭を入れた。
それを見てルイズとワルドを乗せたグリフォンが舞い上がる。
後には愚にもつかない自身の恋愛談を語る痛い男が残された。
「まっ、待ってくれーーーー!」
男二人が馬を並べて進んでも楽しいものでないのはサイトにとって自明の理だったが、サイトはここにきてなかなか楽しい時間を過ごしていた。
「おっぱいとは神の真理だ」
「そうだね、あの柔らかなふくらみには宇宙を感じるよ」
サイトとギーシュはだらだらと馬を進ませながらおっぱいについて駄弁っていた。
「ならばわかるだろう?巨乳こそがその神の真理を解き明かすカギであると!」
「馬鹿を言ってはいけないよ、サイト!おっぱいに優劣などない、あるのはおっぱいという素晴らしき夢だけさ」
本人たちは世の真理を熱く語っているようで、実際激しくどうでもよい会話だった。
「お前こそ馬鹿な事を言う、無乳、貧乳のどこに夢を見れるというんだ?揉んでも擦っても気持ちよさは巨乳に千歩劣るのが真実だろう?」
「それは極論だよ!君にはわからないのか?ふくらみかけという言葉に宿るロマンが!手にちょうど収まるぐらいの乳が持つフィット感が!」
「それは錯覚だ!そんなものは巨乳という現実の前にはたやすく押し流されてしまう、その程度のものだ!だいたいふくらみかけだと?貴様もしやロリーな非国民ではあるまいな?」
「ふふん、僕は否定しないさ!大きな乳から小さな乳まで愛することができるナイスガイが、この僕、ギーシュ・ド・グラモンさ!」
「そんな節操なしは矯正してやる!」
サイトがギーシュを殴ってやろうと馬を寄せるとそこに高速で飛来する物体を感知した。
直上から振りかぶって投げられたそれはナイスコントロールでサイトとギーシュにぶち当たって、馬から引きづり落とした。
「いつまでくだらないこと話してるのよ、あんたたち!私たちは先を急いでるの!あと、馬鹿犬、巨乳、巨乳てうるさいのよ!」
ルイズがグリフォンの上から顔を真っ赤にして怒り狂っている。
サイトがギーシュのほうを見るとギーシュの顔には見事なまでに靴型ができていて、おまけに彼は目をまわして気絶していた。
靴を蹴り飛ばしたのか、投げ飛ばしたのか知らないが、よくあんな高い場所からサイトたちに命中させることができたものである。
なにか変な呪いでもかけられているのではないだろうか?
たとえばルイズがサイトに放った攻撃は必ずサイトに命中するといったような……
厭な想像にサイトは身震いした。
なぜか身に覚えがあるような気がしてしまうのでなおさらだった。
「使い魔クン、ラ・ロシェールまではまだ遠い、それに月の配置からして急がなければ船に乗り遅れてしまう、もう少し頑張ってくれないか?」
ワルドがそう言うが、すでにギーシュは気絶してしまっている。
馬にくくりつけてしまえばいいが、どちらにせよグリフォンと違って馬で移動する自分たちはこれ以上はスピードを上げられないのだ。
そしてこれが一番大きな理由なのだが、いいかげんサイトは馬旅に飽きていた。
「う~~ん、これ以上はちょっと無理かもです。さすがに船に乗り遅れるのはまずいでしょうし、先に行っててもらえませんか?」
サイトがそう適当なこと言うとルイズが何やら憤慨して何か言おうとしたが、ワルドがそれを遮り言った。
「わかった、ならばラ・ロシェールで待っているよ!」
そう高らかに言ってグリフォンは空を駆けていく。
ルイズが振り返ってこちらを睨めつけていたような気がしたが気のせいだと思う。
そうして傍らで目をまわしているギーシュを肩に背負った。
「さて、行きますか……」
初めからこうしとけばよかったな~とサイトは嘆息して、全力で走りだした。
そう言うとグリフォンに乗っていた彼は颯爽と飛び降り、一目散にルイズを目指した。
その彼は羽帽子を被った貴族であろう男でちょび髭が特徴だった。
そして、そのちょび髭のダンディなお兄さんは突然ルイズを抱き上げたのだ。
その顔はどう見たって愛しいものを見る慈愛のこもったそれだった。
そして言うに事欠いて僕のルイズなどといいながら、ルイズの小さな体を抱きしめている。
サイトは戦慄した。
サイトが生まれて以来はじめてみる生物がそこにいた。
俗に言うロリコンという社会の闇にはびこる魔物である。
俺はノーマルだ、俺はノーマルだと苦しいいわけを頭の中に描きながら、実はリリカルなアニメの主人公の幼女たちが大好きな現代社会にはびこる真性の闇の存在の化身である大きいお兄さんたちである。
巨乳を信望し成熟した女性こそを至高とするサイトたちおっぱい戦士と正反対のところにいる、貧乳或いは無乳を愛する究極のロリータコンプレクッス感染者たち。
両者は有史以来どちらの乳こそがすばらしいのか喧々諤々と議論を戦わせてきた宿命のライヴァルである。
幸いというべきかサイトの周りにはその宿命の敵は現れなかったのだが、ここに来て遂に彼らの尖兵である男が現れたのだ。
サイトの体に緊張が走った。
ロリコンは危険な存在だ。
今までなんど優秀なおっぱい好きが彼らの攻勢に耐えかねロリコンに転んできたのだろうか?
ロリコンは行き過ぎると犯罪だというのに、だがそこがいいと警察や法の目を掻い潜ってロリコンはその勢力を広げているのだ。
なぜだなぜあんなにおっぱいが大きいヨーコさんより、ぺったんこなニアのほうが大好きだと転んでしまったのだ、裏切られたおもいだよ、きのこさん……
閑話休題
サイトは注意深く相手を観察する、もしちょび髭が軽度の妄想にとどめておけるロリコンならばまだいい、だがもしも実際に行為に及ぼうとする重度のロリコンならばそれは犯罪である。
妄想までで収めておけるならサイトも何も言うまい、或いは責任を最後までとるのならギリギリ何も言うまい、だが責任とる気がないなら犯罪である。
目の前の男はどうなのか?
あのちょび髭一体何歳なのだろうか?
見た感じ三十近いのではないだろうか?
それが見た目ロリであるルイズを抱きしめて恍惚の表情を浮かべているのは犯罪以外の何者でもなかった。
だが、よく考えてみれば確かルイズは16歳なはずで、それならば結婚できるからギリギリOKか?
いやでもルイズの年じゃ淫行条例でお縄につくのでは?
結婚してるのならOK?
サイトの中で様々な疑問が浮かぶ。
このまま静観するべきなのだろうか?
件のご主人様はちょび髭の行動に困惑しつつもいやそうな顔をしてないから、サイトが手を出すのは野暮なのかも知れない。
だが、犯罪をミスミス見逃していいものか?
ルイズがこちらをチラチラ見るのはサイトに助けて欲しいのか、しかしルイズの性格ならいやならすでに伝説の筋肉ドライバーでちょび髭を沈めているはず。
どうするべきか?
サイトが悩んでいるとルイズがおずおずと口を開いた。
「ワッ、ワルドさま……お久しぶりです」
「あぁ、本当に久しぶりだね、我が婚約者殿」
ちょび髭がルイズをクルクルとまわしながら呟いた言葉をサイトは確かに聞いた。
『婚約者』
ならば!
ギリギセーフ!
サイトはウンウンとうなづいた。
ちょび髭はサイトと相容れない対極の男だが、責任とる気でいるのならサイトがどうこう言うことではなかった。
記されなかった使い魔 その十二
アンリエッタ王女はルイズが部屋から出る最後に、一人だけ護衛の男を送るというような言葉を残していった。
そんな男がいるのなら初めからそいつに任務も頼んだらいいのにと思うサイトだったが、おそらくその人物は任務の内容自体は知らず、ただルイズの純粋な護衛として派遣されるのだろう。
そうでないと姫がわざわざルイズに頼む理由がなくなるのだから当然だ。
サイトは極秘任務とはいえ突然何日も学校を離れるのだからマチルダやシエスタ、キュルケには学校を離れる事を伝えに行った。
彼は結構マメな男だった。
そしてキュルケとシエスタにはアルビオン土産を約束し、マチルダにはアルビオンの市井の様子を探って欲しいと頼まれた。
マチルダの家族はアルビオンにいるらしく、あまりも危ないようなら家族をトリステインに呼ぶことも考えているようでその判断をサイトに依頼したのだ。
サイトは二つ返事で引き受けた。
そして夜があけたのである。
マチルダがあの日じゃなかったら旅立つ男とその男に餞別を送る女的なシチュで夜這いが成功したのにと内心残念に思っていたサイトは魔法学院の前で借りてきた馬の面倒を見てきた。
傍らには眠そうなルイズと妙に張り切っているギーシュがいる。
サイトの目にキラリと光る何かが映った。
それは指輪だった。
ルイズの指に輝くそれは水のルビー、王家に伝わるという水の秘宝である。
昨夜ルイズがアンリエッタから借り受けた王族の使いであるという証である。
それを隠しもせず堂々とつけているルイズにサイトが注意しようとすると突如サイトたちに影がかかり、そして冒頭の場面が巻き起こったのだ。
ちょび髭はにこやかにサイトとギーシュに笑いかけ自己紹介をしてきた。
「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだルイズの使い魔くん!」
そう言って握手求めるちょび髭は無駄に爽やかだった。
体操のお兄さんみたいだ、サイトは子供向け情操教育番組の無駄に爽やかではきはきしゃべる司会のお兄さんを連想した。
「えぇっと、一応ルイズの使い魔なつもりの平賀サイトです」
サイトの煮え切らない答えにルイズが噛み付くように声を上げる。
「あんたは一応じゃなくてちゃんとした私の使い魔でしょ!」
グリグリと足を踏みにじるルイズの攻撃が地味に痛い。
そのくせちょび髭に向かっては作り笑いでニコニコしているのだから……ルイズ、恐ろしい子とガラスの仮面バリに叫びたいサイトである。
ワルドはそれに気づかぬようにギーシュにも爽やかな挨拶をこなし、自身の来訪の目的を告げた。
どうやら彼こそがアンリエッタ王女が告げた護衛のようだった。
それがルイズの婚約者とは偶然なのか、あるいは姫様が気をまわしたのか?
そうだとしたら姫様グッジョブである。
婚約者殿がご主人様を守ってくれるならサイトの役割は最小限で済む、サイト自身はアルビオン観光にせいが出せるというものだ。
たとえ戦場とはいえ基本不死身なサイトはあまり戦時下の国に行くということに(自分の身の安全ということに関しては)楽観的だった。
それ以上に国が空に浮いているといわれているアルビオンに訪れるのがかなり楽しみだったのだ。
好奇心におらワックワックしてきたぞとニコニコしているサイトにルイズがサイトの耳元まで口をやってきつい声で話しかける。
「あんた、これから大変な任務だって言うのになにニヤニヤしてんのよ、使い魔のしつけがなってないってワルドさまに思われるでしょ!」
何やらイライラしているようなルイズは、やはり大事な任務に緊張しているようだった。
だが八つ当たりされる筋合いもないので言い返してやろうとサイトが口を開こうとしたとき、ワルドがグリフォンに飛び乗り、皆に声をかけた。
「さぁ、それじゃ自己紹介も終わったことだし、そろそろ出発しよう!アンリエッタ殿下からは先を急ぐ任務だと聞いている、少しでも早く出るのがよいだろう?さぁ、ルイズ、こっちにおいで?」
そう言ってルイズを手招きする。
ルイズは何やらサイトのほうをチラチラみて何かいいたそうにしていたが、「フン」と急に鼻を鳴らしてワルドのほうに歩いていった。
「何か機嫌の悪くなることでもあったのかね?」
首をひねるサイトにギーシュが話しかける。
「使い魔クン、君とは一度華の愛で方について話し合ってみる必要があるようだね」
そう言って訳知り顔で肩をたたくギーシュはひどくむかついた。
貴様は二股して失敗した男だろうに、そんな奴の女性の扱い方なんて聞いても仕方がない。
サイトはため息をついて自身が用意した馬にまたがり鞭を入れた。
それを見てルイズとワルドを乗せたグリフォンが舞い上がる。
後には愚にもつかない自身の恋愛談を語る痛い男が残された。
「まっ、待ってくれーーーー!」
男二人が馬を並べて進んでも楽しいものでないのはサイトにとって自明の理だったが、サイトはここにきてなかなか楽しい時間を過ごしていた。
「おっぱいとは神の真理だ」
「そうだね、あの柔らかなふくらみには宇宙を感じるよ」
サイトとギーシュはだらだらと馬を進ませながらおっぱいについて駄弁っていた。
「ならばわかるだろう?巨乳こそがその神の真理を解き明かすカギであると!」
「馬鹿を言ってはいけないよ、サイト!おっぱいに優劣などない、あるのはおっぱいという素晴らしき夢だけさ」
本人たちは世の真理を熱く語っているようで、実際激しくどうでもよい会話だった。
「お前こそ馬鹿な事を言う、無乳、貧乳のどこに夢を見れるというんだ?揉んでも擦っても気持ちよさは巨乳に千歩劣るのが真実だろう?」
「それは極論だよ!君にはわからないのか?ふくらみかけという言葉に宿るロマンが!手にちょうど収まるぐらいの乳が持つフィット感が!」
「それは錯覚だ!そんなものは巨乳という現実の前にはたやすく押し流されてしまう、その程度のものだ!だいたいふくらみかけだと?貴様もしやロリーな非国民ではあるまいな?」
「ふふん、僕は否定しないさ!大きな乳から小さな乳まで愛することができるナイスガイが、この僕、ギーシュ・ド・グラモンさ!」
「そんな節操なしは矯正してやる!」
サイトがギーシュを殴ってやろうと馬を寄せるとそこに高速で飛来する物体を感知した。
直上から振りかぶって投げられたそれはナイスコントロールでサイトとギーシュにぶち当たって、馬から引きづり落とした。
「いつまでくだらないこと話してるのよ、あんたたち!私たちは先を急いでるの!あと、馬鹿犬、巨乳、巨乳てうるさいのよ!」
ルイズがグリフォンの上から顔を真っ赤にして怒り狂っている。
サイトがギーシュのほうを見るとギーシュの顔には見事なまでに靴型ができていて、おまけに彼は目をまわして気絶していた。
靴を蹴り飛ばしたのか、投げ飛ばしたのか知らないが、よくあんな高い場所からサイトたちに命中させることができたものである。
なにか変な呪いでもかけられているのではないだろうか?
たとえばルイズがサイトに放った攻撃は必ずサイトに命中するといったような……
厭な想像にサイトは身震いした。
なぜか身に覚えがあるような気がしてしまうのでなおさらだった。
「使い魔クン、ラ・ロシェールまではまだ遠い、それに月の配置からして急がなければ船に乗り遅れてしまう、もう少し頑張ってくれないか?」
ワルドがそう言うが、すでにギーシュは気絶してしまっている。
馬にくくりつけてしまえばいいが、どちらにせよグリフォンと違って馬で移動する自分たちはこれ以上はスピードを上げられないのだ。
そしてこれが一番大きな理由なのだが、いいかげんサイトは馬旅に飽きていた。
「う~~ん、これ以上はちょっと無理かもです。さすがに船に乗り遅れるのはまずいでしょうし、先に行っててもらえませんか?」
サイトがそう適当なこと言うとルイズが何やら憤慨して何か言おうとしたが、ワルドがそれを遮り言った。
「わかった、ならばラ・ロシェールで待っているよ!」
そう高らかに言ってグリフォンは空を駆けていく。
ルイズが振り返ってこちらを睨めつけていたような気がしたが気のせいだと思う。
そうして傍らで目をまわしているギーシュを肩に背負った。
「さて、行きますか……」
初めからこうしとけばよかったな~とサイトは嘆息して、全力で走りだした。
テーマ : 自作小説(二次創作)
ジャンル : 小説・文学