記されなかった使い魔 超外伝~平賀サイトのハルケギニア大冒険~
ハルケギニアという世界がある。
そこは今だ精霊や幻想の生物が色濃く残る世界。
人が魔法の力と剣の力で土地を開拓している剣と魔法とファンタジーの世界。
平賀サイトという10歳の少年はその世界に召喚され、ブリミルという魔法使いの使い魔として(いやいやながら)ブリミルの部族を守るため戦うことになったりした。
これはそんな少年の日常を綴った物語。
そこは今だ精霊や幻想の生物が色濃く残る世界。
人が魔法の力と剣の力で土地を開拓している剣と魔法とファンタジーの世界。
平賀サイトという10歳の少年はその世界に召喚され、ブリミルという魔法使いの使い魔として(いやいやながら)ブリミルの部族を守るため戦うことになったりした。
これはそんな少年の日常を綴った物語。
記されなかった使い魔 超外伝
~平賀サイトのハルケギニア大冒険~
「いや~、あのサラマンダーの肉はうまかった」
火の山と呼ばれる火山の火口で暴れていたサラマンダーの討伐の後、焼肉にしたサラマンダーのことを思ってサイトは嘆息した。
「サイト、よだれ、よだれ」
そう言ってサーシャがサイトの口元をハンカチで拭う。
相変わらずとても美しい人だ。
後光がさすような完璧な美人である。
耳が尖っていると言うノーブルな特徴も彼女には似合いすぎている。
それでいて豊満な匂いたつような肢体を持っているのだから、この人の存在は反則であろう。
これで性格が悪ければ神は二分を与えずとなるのだが、彼女はちょっと泣き虫でいじっぱりで、でも本当はとても優しいというかわいい性格をしているのだ。
あっ、ありえん!
なにこの戦闘力、スッ、スカウターが爆発する?
まさに計れない戦闘力だ。
それを羨ましそうに馬鹿、改めご主人様であるブリミルがみていた。
ブリミルはサイトのご主人様である。
人のファーストキスを無理矢理奪った変態で、サイトを使い魔にして戦闘に駆り出す非人間である。
でもまぁブリミルにも部族を守る責任があり、子供であるサイトを戦闘に出すのは苦渋の決断だったようだから根が悪いやつではないのだ。
本当にいやならサイトもサーシャも彼の元から去っている。
あと、サーシャのことが好きらしい。
見てればわかる。
今も涎を拭いているサーシャを見てることからも一目瞭然である。
なんだ、何見てるだよ?
サーシャさんは俺のものだ!
お前には絶対に嫁にやらん!
「そうね、総じて幻想種の肉はおいしいものだけど、昨日のあれはその中でも格別だったわね」
ミョズニトニルンがその無駄に溜め込んでいる知識を披露する。
ミョズニトニルンは切れ者の才女だ。
理知的で怜悧な顔立ちをしており、この人もサーシャと負けず劣らず美しい。
ただ狡猾で気づいたら人をはめているような人だから、サイトはかなり苦手だったりする。
しかし、サーシャ以上の胸を持つそのプロポーションは目の保養になる。
あとブリミルのことを主様と呼び慕っている。
それはもう狂愛と呼んでもいいほどで、ブリミルを神のように信仰しているかのようである。
あんなのの何処がいいんだろうか?
彼女が溜め込んでいるのは胸の脂肪だけではない。
ミョズニトニルンの知識量はそのビッグな胸に負けず劣らずスゴイのだ。
おばぁちゃんの知恵袋的知識から、なぜお前がそれを知っていると激しく疑問なサイトの寝ション便の回数までなんでも知ってるミョズニトニルン。
人のプライバシーまで探るのは勘弁してください。
「僕もあんなに美味しい肉は初めて食べたよ」
「私も食べた事無いわね」
「あぁ~、やっぱり?俺が食った肉の中でも一番うまかったしな~」
ブリミルとサーシャの言に、この世界でもやっぱり最高級の肉だったのだと納得するサイトである。
そこにふふんとミョズニトニルンが小馬鹿にするように笑う。
「主様もサイトもサーシャもむなしい食生活を送っているのね……」
ミョズニトニルンがサイトたちを憐れむように見ていた。
なぜだ、なぜそんな目で俺たちを見る?
はっ、もしや?
「まさか、ミョズニトニルン?もしやあれ以上の肉を食べた事があると?」
それにミョズニトニルンは当然というように答えた。
「もちろん、あるわよ」
まさに驚愕である。
昨夜食べた肉はそりゃあもううまかった。
サイトが食べたどんな肉より柔らかく、舌の上でジュワーと溶けて、肉汁がこれでもかと溢れた。
だからといって油っぽいわけでもなく、またさっぱりしすぎているわけでもないそんな絶妙な肉だったのだ。
あれを超える肉が存在する?
サイトの好奇心が膨れ上がる。
食ってみたい、その感情が抑えられなくなってくる。
「なんて肉なんだ?」
サイトはその溢れる感情とともに涎をこぼしながら聞いた。
サーシャが仕方がないなという顔をしながら、サイトの涎を拭っている。
だから見るなってブリミル。
サーシャさんは俺の嫁だっつーの。
「その名も……ボン太クンよ!」
ボン太くんだって!っと無駄に驚いてみる。
ってなんだそりゃ?
聞いたこともないような生物の名前である。
それもやはり幻想の生き物なのだろうか?
ミョズニトニルンが話を続ける。
「ハルケギニアにおいて50年に一度しか見られないという幻の生物とされるボン太くん、その肉はこの世のすべてをそこに詰め込んだとされるほどの至高の味わいをしているのよ、あぁ~、あの味わい、一度食べたら忘れる事などできないわ。思い出すだけで食べたくて震えが走るわ!」
自らの体を抱きしめながら身もだえするミョズニトニルン。
抱きしめたせいで胸が強調されて、恍惚とした顔が色っぽい。
思わず釘付けになっていたら、サイトはサーシャに拳骨を落とされた。
「痛い!」
「だめよ、サイト!サーシャはエッチなのはいけないと思います!」
サーシャ、怒ってますとばかりにサーシャはサイトを叱る。
ブリミルも釘付けになっていたというのに不公平である。
ずっこいぞと目でブリミルに抗議したら、ブリミルは咳払いをした後、話をそらした。
「君がそんなに言うんなら一度食べてみたいね」
サーシャがそれに付け加える。
「私も食べてみたいけど、でも50年に一度しか見られない幻の生物なんでしょ?今の私たちじゃ手に入れるのは難しいんじゃないかしら?」
ヴァリヤーグの襲撃や付近で危険な幻獣の討伐に忙しいサイトたちであるから、ただうまい肉を探すために行動するなんてことはなかなかできない。
サイトはブリミル、サーシャの三人で残念だとため息をついた。
その様子にミョズニトニルンはニヤリと笑って付け加える。
「実はそうでもないのよ?皆、ヴィンダールブが飼っている豚のような生き物を見たことがある?」
ヴィンダールブが飼っている豚?
ヴィンダールブといえばどんな獣も飼いならしてしまうポケモントレイナーのような男である。
いつもニコニコしていて何考えているか全く顔に出さない男だが、ほとんど腹黒いことをいつも思っているような奴である。
そのヴィンダールブが飼っている豚?
奴は竜とかケルベロスとかピカチューとかいろんな不思議生物を飼っているから、豚みたいな生き物なんて記憶に残らない。
しかし、そういえば奴は寝るとき確かに豚のような生き物を抱いているような気がした。
「っていうかあれ豚じゃないのか?」
サイトの疑問にミョズニトニルンは答えた。
「いいえ、あれこそが豚のような生き物ボン太くんよ!彼らは豚に擬態しているの」
豚に擬態する意味はなんなのか?
激しく疑問である。
けれどヴィンダールブが飼っているんじゃ、正直食べるのは無理そうだ。
どんな仕返しをされるかわかったものじゃない。
「ヴィンダールブが飼っているんじゃ、無理そうだね。残念だ……」
そうブリミルが残念そうにこぼすと、サイトもサーシャも残念だと笑った。
その光景をミョズニトニルンだけがキラリと光る瞳で見ていたりした。
その数日後、サイトはミョズニトニルンと二人で夕食の用意をさせられていた。
本来それはブリミルの部族の女性の役目なのだが、どうしてもサイトでなければならない事情があるった。
目の前にはつぶらな目をした豚が一匹。
サイトの目を無垢な様子で見返している。
そして、サイトは手に刃物をもち、かわいそうな目で豚を見ている。
これからなにをするのかは一目瞭然だ。
サイトはこのかわいい豚をさばかなければならないのだ。
これも弱肉強食のならい、生きるうえで必要なことだった。
ミョズニトニルンはサイトの監視役である。
「なぁ、本当にやらなければだめか?」
豚さんは不思議そうにサイトを見ている。
この豚さんに刃物を振り下ろさなければならないのだろうか?
「だめよ、あんたが普段食べてる肉がどんな風にして食卓に上がるか理解しなさい」
そういいながらミョズニトニルンはサイトに手に紫のリボンをくくりつける。
なんだこれ?
率直に聞いてみる。
「初めて豚をさばく人間はこんな風に紫の布を腕に巻くのよ、まぁハルケギニアの伝統ね(真っ赤な嘘だけどね)、適当な布がなかったから私が使っているリボンで代用したわ」
そう言ってニコリと微笑んだ。
ミョズニトニルンのこういう笑顔はかなり貴重である。
いつも冷笑かニヤリ笑いだから、サイトはいいもの見たと感じた。
「へーー、そうなんだ」
初めて聞いた伝統だ、ところ変われば品変わるというが全くそのとおりだ。
しかも、ミョズニトニルンが使っているリボンを使わせてくれるなんて光栄である。
「さっ、用意も整ったわ、サイト始めなさい!」
ミョズニトニルンのはじめの合図がかかる。
サイトも今日の肉になってくれる目の前の豚に真剣な目を注ぐ。
これは生き物のあり方を学ぶ勉強の機会である、目の前の彼(彼女?)に敬意をそうして真剣に挑まねばならない。
刃物を持って近づくサイトにブタは何の警戒もせずに「ふもっふ?」と鳴いた。
「ふもっふ?」
過分ながらサイトはふもっふと鳴く豚にお目にかかったことがなかった。
豚はブーと鳴くのではなかったか?
「なぁ、これ本当に豚なのか?」
「豚よ」
サイトの疑問にミョズニトニルンは間髪要れずに答えた。
反論は許さないと言うかのようであった。
「ハルケギニアには時折、ふもっふと鳴く豚が現れるのよ。あなたは異世界人だから知らないかもしれないけど……」
へーっと感心するサイトである、さすがミョズニトニルン知識量が半端ではない。
まさか豚がブーと鳴かずにふもっふと鳴くことがあろうとは、まさに異世界、ヤックデカルチャー!
それならばこの豚は珍しい豚だということだ。
そんな豚に勉強させてもらえるなんてサイトは運がいい。
サイトはゆっくりと豚に近づいた。
豚はサイトをつぶらな目で見ている。
サイトは豚を捕まえ、刃物を振り上げる。
豚はつぶらな目でサイトを見ている。
目と目が合う。
サイトは勉強になりますと腕を振り下ろした。
「ふもっ?ふも!ふもっ、ふもも?ふもーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
あたりにふも、ふもというよくわからない叫びが響き渡った。
その日の夕食は鍋だった。
サイトも自分がさばいた肉が出るため、非常に楽しみだった。
腕に紫のリボンをつけたままである、今日一日はつけたままにしなければならないらしい。
この紫のリボンを見るとサイトはやり遂げたのだと感慨深げだった。
サーシャがお椀にサイトの分をすくってくれる。
とてもうまそうである。
においからしていつもと違うような気がする。
ただの豚の煮込みのはずなのにどうしてこんなにいいにおいがするのか?
ミョズニトニルンがブリミルとヴィンダールブに椀を手渡しながら言う。
「主様、今日の豚はサイトが見つけてさばいたんですよ」
「へ~~、そうなんだ?初めての体験はどうだった、サイト?」
ブリミルの言葉にサイトはテレながら答えた。
「なんていうの?いつも俺たちは生きてる生き物を殺して、日々の糧にしてるんだと教えられたよ。毎日の食に感謝して生きなきゃならいんだなって思った」
サイトの言葉にヴィンダールブが答える。
「へ~、サイトはいい体験をしたね。」
「そうね、大事なことね」
「うんうん、そうだね。じゃぁ、今日の糧に感謝しながらいただこうじゃないか!サイト、君の故郷のあれを頼むよ!」
ブリミルの言にサイトは恥ずかしそうに立ち上がって、椀を前に突き出しながら「いただきます」と唱えた。
それに皆も「いただきます」と唱和する。
そして食事が始まった。
というか皆、箸をつけるや否や、無言で箸を進めだした。
うまいのだ。
これは本当にただの豚の煮込みなのかと信じられないほどにうまいのだ。
サイトが前に食べたサラマンダーの肉なんて足元に及ばないぐらいうまいのである。
まさに天上の味とはこのことだろう。
例えようもない美味さに箸がすすむ。
この美味さを皆と分かち合いたいというのに箸をとめることができない。
それに目の前の鍋の分しか食事はないのだから皆、黙って箸を進めようと思うだろう。
その後の食事は取り合いになりながら、鍋の中の汁一滴さえ飲みつくすほどだった。
ただブリミル、ミョズニトニルン、サーシャでさえそんな有様ななか、ヴィンダールブだけ数度箸をつけた時点で下を向いて固まっていた。
その箸がなにやらプレートのようなものを掴んでいたのがサイトの目に映った。
食事の後、サイトはヴィンダールブに呼び出された。
ニコニコと笑う彼にサイトはついていく。
その途中でサイトは今日の料理についてヴィンダールブに語った。
「今日の煮込みうまかったよなーーーー!」
「そうかい?」
反応の鈍いヴィンダールブにマジか? とサイトは勢い込んで言う。
「おいおい、あんな美味い肉ありえないだろ?やっぱ俺がさばいたおかげだな、この俺の包丁捌きがあの味を引き出したんだぜ、きっと」
サイトが誇らしげに言うのにヴィンダールブがピクリと反応した。
「君がさばいたんだ?」
「おう!まぁ、かわいい豚ちゃんだったけどそこは仕方がないよな。あいつらも俺たちに食べられてきっと満足してるよ」
サイトの言葉にまたもやピクリとヴィンダールブが反応する。
「へー、仕方がないんだ?それにみんな満足したんだ?」
「そりゃ、そうだろ?あんなにうまかったんだぜ?あの豚ちゃんもふもっふ、ふもっふって鳴いていたけどあれだけ美味しく食べられば満足さ、もちろん俺も大満足だった」
キラリと歯を光らせるサイトをヴィンダールブは見もしない。
「そうかい、そうかい」と言いながら森の奥へと歩いていく。
それにサイトはあの豚ちゃんがどれだけ美味しかったか長々と語りながら続いた。
そしてだいぶ歩いた後、少し開けた広場へとでた。
ヴィンダールブはその中央に生えてあった木に向かいながら、サイトに話しかける。
「サイト覚えているかい?僕が豚に似た生き物を飼っていたことを?」
「あぁ、あのボン太くんていう生き物だろ?」
「へ~~、やっぱり知ってるんだね?彼女はね、僕の小さいころからの友達なんだよ?」
「ふぅ~ん」
「悲しいとき、寂しいとき、うれしいとき、怒っているとき、いつも彼女は僕の傍にいてくれたんだ。」
「へ~~」
「僕は毎日その彼女を抱いて寝たものさ!」
「そうなんだ~~?なぁ、なんか寒くないか?早く用事を済ませてくれよ」
突然背中に寒気が走った。
サイトはブルブルと震えながらヴィンダールブに聞いた。
「早く?そうかい、そうかい、そんなに早くして欲しいのかい?うん、うん、もちろんすぐに……してあげるよ」
「???」
ヴィンダールブはゆっくりと木へと向かう。
「ね~、サイト?君がしている紫のリボンどうしたんだい?」
「うん、あぁこれか?知ってるだろ、俺がやり遂げた証さ!」
サイトは誇らしげに掲げてみせる。
それには豚の返り血が付着していた。
「それはね~、僕のキャサリンがしていたリボンなんだよ?」
「は~?」
キャサリンって誰だよ?
これはミョズニトニルンのリボンだぞ。
ヴィンダールブが困惑気味のサイトに向かって何かを投げる。
それは月明かりの中、きらりと光りながらサイトの足元に転がった。
それは銀のプレートでキャサリンと記されていた。
「そして、それはキャサリンがしていたプレート」
なにやら雲行きが怪しくなった気がしてきた。
「かわいそうな僕のキャサリン、さぞ怖かったろうに……」
何だ?何なんだ?
「そのキャサリンを殺した挙句、僕に食べさせるなんて、サイト君、君には本当に驚かされるよ」
そうして木に隠れるようにヴィンダールブの姿が回り込まれる。
反対側の木からでてきたヴィンダールブの目は赤く染まっていた。
広場を囲む木々の中からも赤い光が漏れる。
いつの間にやらこの場は多くの生き物に囲まれていた。
サイトの体中にダラダラと冷や汗が流れる。
サイトもここに来てようやく理解していた、あの豚はヴィンダールブのボン太クンだったのだ。
サイトはミョズニトニルンにはめられたのである。
「まって「「キャサリンの敵を討たなければならない……」」」
サイトの言葉はかき消される。
周りからも獣のうなり声や遠吠えが響いている。
そしてヴィンダールブの手元からギュインギュインと機械音がしだした。
なぜお前がそれをもっている?
この世界にあるはずのないものがそこにあった。
チェエンソーである。
その刃を高速に回転させながら、ギュインギュインと音を立てる。
赤い瞳の光が恐怖だった。
フフフウフフフフウフフフとかなり怖い笑い声をヴヴィンダールブは上げる。
サイトはブルブルとこれでもかと震えている。
辺りでは獣の声がうるさいぐらいに響いている。
サイトはもうかわいそうなぐらい震えている。
そして唐突に笑い声と叫び声がやんだ。
静寂の中ただヴィンダールブの声だけが響いた。
「キル ヒム オール」
その声が聞こえるや否や、圧倒的な質量と暴力による殺戮の宴が始まった。
「ギィ、ギィヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
サイトはその暴虐に容易く飲み込まれ、耳にギュインギュインという恐怖の音を聞きながら死への旅路に出たのである。
生き返るのでマジで手加減のない、集団リンチだった。
そのときミョズニトニルンは食後の紅茶を飲みながら一人呟いた。
「ふっ、君はいい駒だったよ、サイト」
ミョズニトニルンが見上げた空に、一つ流れ星が流れた。
今回のサイト君の教訓。
人のペットは食べてはいけない!
ミョズニトニルンの言葉を簡単に信じたら、死んでしまうので要注意!←最重要
~平賀サイトのハルケギニア大冒険~
「いや~、あのサラマンダーの肉はうまかった」
火の山と呼ばれる火山の火口で暴れていたサラマンダーの討伐の後、焼肉にしたサラマンダーのことを思ってサイトは嘆息した。
「サイト、よだれ、よだれ」
そう言ってサーシャがサイトの口元をハンカチで拭う。
相変わらずとても美しい人だ。
後光がさすような完璧な美人である。
耳が尖っていると言うノーブルな特徴も彼女には似合いすぎている。
それでいて豊満な匂いたつような肢体を持っているのだから、この人の存在は反則であろう。
これで性格が悪ければ神は二分を与えずとなるのだが、彼女はちょっと泣き虫でいじっぱりで、でも本当はとても優しいというかわいい性格をしているのだ。
あっ、ありえん!
なにこの戦闘力、スッ、スカウターが爆発する?
まさに計れない戦闘力だ。
それを羨ましそうに馬鹿、改めご主人様であるブリミルがみていた。
ブリミルはサイトのご主人様である。
人のファーストキスを無理矢理奪った変態で、サイトを使い魔にして戦闘に駆り出す非人間である。
でもまぁブリミルにも部族を守る責任があり、子供であるサイトを戦闘に出すのは苦渋の決断だったようだから根が悪いやつではないのだ。
本当にいやならサイトもサーシャも彼の元から去っている。
あと、サーシャのことが好きらしい。
見てればわかる。
今も涎を拭いているサーシャを見てることからも一目瞭然である。
なんだ、何見てるだよ?
サーシャさんは俺のものだ!
お前には絶対に嫁にやらん!
「そうね、総じて幻想種の肉はおいしいものだけど、昨日のあれはその中でも格別だったわね」
ミョズニトニルンがその無駄に溜め込んでいる知識を披露する。
ミョズニトニルンは切れ者の才女だ。
理知的で怜悧な顔立ちをしており、この人もサーシャと負けず劣らず美しい。
ただ狡猾で気づいたら人をはめているような人だから、サイトはかなり苦手だったりする。
しかし、サーシャ以上の胸を持つそのプロポーションは目の保養になる。
あとブリミルのことを主様と呼び慕っている。
それはもう狂愛と呼んでもいいほどで、ブリミルを神のように信仰しているかのようである。
あんなのの何処がいいんだろうか?
彼女が溜め込んでいるのは胸の脂肪だけではない。
ミョズニトニルンの知識量はそのビッグな胸に負けず劣らずスゴイのだ。
おばぁちゃんの知恵袋的知識から、なぜお前がそれを知っていると激しく疑問なサイトの寝ション便の回数までなんでも知ってるミョズニトニルン。
人のプライバシーまで探るのは勘弁してください。
「僕もあんなに美味しい肉は初めて食べたよ」
「私も食べた事無いわね」
「あぁ~、やっぱり?俺が食った肉の中でも一番うまかったしな~」
ブリミルとサーシャの言に、この世界でもやっぱり最高級の肉だったのだと納得するサイトである。
そこにふふんとミョズニトニルンが小馬鹿にするように笑う。
「主様もサイトもサーシャもむなしい食生活を送っているのね……」
ミョズニトニルンがサイトたちを憐れむように見ていた。
なぜだ、なぜそんな目で俺たちを見る?
はっ、もしや?
「まさか、ミョズニトニルン?もしやあれ以上の肉を食べた事があると?」
それにミョズニトニルンは当然というように答えた。
「もちろん、あるわよ」
まさに驚愕である。
昨夜食べた肉はそりゃあもううまかった。
サイトが食べたどんな肉より柔らかく、舌の上でジュワーと溶けて、肉汁がこれでもかと溢れた。
だからといって油っぽいわけでもなく、またさっぱりしすぎているわけでもないそんな絶妙な肉だったのだ。
あれを超える肉が存在する?
サイトの好奇心が膨れ上がる。
食ってみたい、その感情が抑えられなくなってくる。
「なんて肉なんだ?」
サイトはその溢れる感情とともに涎をこぼしながら聞いた。
サーシャが仕方がないなという顔をしながら、サイトの涎を拭っている。
だから見るなってブリミル。
サーシャさんは俺の嫁だっつーの。
「その名も……ボン太クンよ!」
ボン太くんだって!っと無駄に驚いてみる。
ってなんだそりゃ?
聞いたこともないような生物の名前である。
それもやはり幻想の生き物なのだろうか?
ミョズニトニルンが話を続ける。
「ハルケギニアにおいて50年に一度しか見られないという幻の生物とされるボン太くん、その肉はこの世のすべてをそこに詰め込んだとされるほどの至高の味わいをしているのよ、あぁ~、あの味わい、一度食べたら忘れる事などできないわ。思い出すだけで食べたくて震えが走るわ!」
自らの体を抱きしめながら身もだえするミョズニトニルン。
抱きしめたせいで胸が強調されて、恍惚とした顔が色っぽい。
思わず釘付けになっていたら、サイトはサーシャに拳骨を落とされた。
「痛い!」
「だめよ、サイト!サーシャはエッチなのはいけないと思います!」
サーシャ、怒ってますとばかりにサーシャはサイトを叱る。
ブリミルも釘付けになっていたというのに不公平である。
ずっこいぞと目でブリミルに抗議したら、ブリミルは咳払いをした後、話をそらした。
「君がそんなに言うんなら一度食べてみたいね」
サーシャがそれに付け加える。
「私も食べてみたいけど、でも50年に一度しか見られない幻の生物なんでしょ?今の私たちじゃ手に入れるのは難しいんじゃないかしら?」
ヴァリヤーグの襲撃や付近で危険な幻獣の討伐に忙しいサイトたちであるから、ただうまい肉を探すために行動するなんてことはなかなかできない。
サイトはブリミル、サーシャの三人で残念だとため息をついた。
その様子にミョズニトニルンはニヤリと笑って付け加える。
「実はそうでもないのよ?皆、ヴィンダールブが飼っている豚のような生き物を見たことがある?」
ヴィンダールブが飼っている豚?
ヴィンダールブといえばどんな獣も飼いならしてしまうポケモントレイナーのような男である。
いつもニコニコしていて何考えているか全く顔に出さない男だが、ほとんど腹黒いことをいつも思っているような奴である。
そのヴィンダールブが飼っている豚?
奴は竜とかケルベロスとかピカチューとかいろんな不思議生物を飼っているから、豚みたいな生き物なんて記憶に残らない。
しかし、そういえば奴は寝るとき確かに豚のような生き物を抱いているような気がした。
「っていうかあれ豚じゃないのか?」
サイトの疑問にミョズニトニルンは答えた。
「いいえ、あれこそが豚のような生き物ボン太くんよ!彼らは豚に擬態しているの」
豚に擬態する意味はなんなのか?
激しく疑問である。
けれどヴィンダールブが飼っているんじゃ、正直食べるのは無理そうだ。
どんな仕返しをされるかわかったものじゃない。
「ヴィンダールブが飼っているんじゃ、無理そうだね。残念だ……」
そうブリミルが残念そうにこぼすと、サイトもサーシャも残念だと笑った。
その光景をミョズニトニルンだけがキラリと光る瞳で見ていたりした。
その数日後、サイトはミョズニトニルンと二人で夕食の用意をさせられていた。
本来それはブリミルの部族の女性の役目なのだが、どうしてもサイトでなければならない事情があるった。
目の前にはつぶらな目をした豚が一匹。
サイトの目を無垢な様子で見返している。
そして、サイトは手に刃物をもち、かわいそうな目で豚を見ている。
これからなにをするのかは一目瞭然だ。
サイトはこのかわいい豚をさばかなければならないのだ。
これも弱肉強食のならい、生きるうえで必要なことだった。
ミョズニトニルンはサイトの監視役である。
「なぁ、本当にやらなければだめか?」
豚さんは不思議そうにサイトを見ている。
この豚さんに刃物を振り下ろさなければならないのだろうか?
「だめよ、あんたが普段食べてる肉がどんな風にして食卓に上がるか理解しなさい」
そういいながらミョズニトニルンはサイトに手に紫のリボンをくくりつける。
なんだこれ?
率直に聞いてみる。
「初めて豚をさばく人間はこんな風に紫の布を腕に巻くのよ、まぁハルケギニアの伝統ね(真っ赤な嘘だけどね)、適当な布がなかったから私が使っているリボンで代用したわ」
そう言ってニコリと微笑んだ。
ミョズニトニルンのこういう笑顔はかなり貴重である。
いつも冷笑かニヤリ笑いだから、サイトはいいもの見たと感じた。
「へーー、そうなんだ」
初めて聞いた伝統だ、ところ変われば品変わるというが全くそのとおりだ。
しかも、ミョズニトニルンが使っているリボンを使わせてくれるなんて光栄である。
「さっ、用意も整ったわ、サイト始めなさい!」
ミョズニトニルンのはじめの合図がかかる。
サイトも今日の肉になってくれる目の前の豚に真剣な目を注ぐ。
これは生き物のあり方を学ぶ勉強の機会である、目の前の彼(彼女?)に敬意をそうして真剣に挑まねばならない。
刃物を持って近づくサイトにブタは何の警戒もせずに「ふもっふ?」と鳴いた。
「ふもっふ?」
過分ながらサイトはふもっふと鳴く豚にお目にかかったことがなかった。
豚はブーと鳴くのではなかったか?
「なぁ、これ本当に豚なのか?」
「豚よ」
サイトの疑問にミョズニトニルンは間髪要れずに答えた。
反論は許さないと言うかのようであった。
「ハルケギニアには時折、ふもっふと鳴く豚が現れるのよ。あなたは異世界人だから知らないかもしれないけど……」
へーっと感心するサイトである、さすがミョズニトニルン知識量が半端ではない。
まさか豚がブーと鳴かずにふもっふと鳴くことがあろうとは、まさに異世界、ヤックデカルチャー!
それならばこの豚は珍しい豚だということだ。
そんな豚に勉強させてもらえるなんてサイトは運がいい。
サイトはゆっくりと豚に近づいた。
豚はサイトをつぶらな目で見ている。
サイトは豚を捕まえ、刃物を振り上げる。
豚はつぶらな目でサイトを見ている。
目と目が合う。
サイトは勉強になりますと腕を振り下ろした。
「ふもっ?ふも!ふもっ、ふもも?ふもーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
あたりにふも、ふもというよくわからない叫びが響き渡った。
その日の夕食は鍋だった。
サイトも自分がさばいた肉が出るため、非常に楽しみだった。
腕に紫のリボンをつけたままである、今日一日はつけたままにしなければならないらしい。
この紫のリボンを見るとサイトはやり遂げたのだと感慨深げだった。
サーシャがお椀にサイトの分をすくってくれる。
とてもうまそうである。
においからしていつもと違うような気がする。
ただの豚の煮込みのはずなのにどうしてこんなにいいにおいがするのか?
ミョズニトニルンがブリミルとヴィンダールブに椀を手渡しながら言う。
「主様、今日の豚はサイトが見つけてさばいたんですよ」
「へ~~、そうなんだ?初めての体験はどうだった、サイト?」
ブリミルの言葉にサイトはテレながら答えた。
「なんていうの?いつも俺たちは生きてる生き物を殺して、日々の糧にしてるんだと教えられたよ。毎日の食に感謝して生きなきゃならいんだなって思った」
サイトの言葉にヴィンダールブが答える。
「へ~、サイトはいい体験をしたね。」
「そうね、大事なことね」
「うんうん、そうだね。じゃぁ、今日の糧に感謝しながらいただこうじゃないか!サイト、君の故郷のあれを頼むよ!」
ブリミルの言にサイトは恥ずかしそうに立ち上がって、椀を前に突き出しながら「いただきます」と唱えた。
それに皆も「いただきます」と唱和する。
そして食事が始まった。
というか皆、箸をつけるや否や、無言で箸を進めだした。
うまいのだ。
これは本当にただの豚の煮込みなのかと信じられないほどにうまいのだ。
サイトが前に食べたサラマンダーの肉なんて足元に及ばないぐらいうまいのである。
まさに天上の味とはこのことだろう。
例えようもない美味さに箸がすすむ。
この美味さを皆と分かち合いたいというのに箸をとめることができない。
それに目の前の鍋の分しか食事はないのだから皆、黙って箸を進めようと思うだろう。
その後の食事は取り合いになりながら、鍋の中の汁一滴さえ飲みつくすほどだった。
ただブリミル、ミョズニトニルン、サーシャでさえそんな有様ななか、ヴィンダールブだけ数度箸をつけた時点で下を向いて固まっていた。
その箸がなにやらプレートのようなものを掴んでいたのがサイトの目に映った。
食事の後、サイトはヴィンダールブに呼び出された。
ニコニコと笑う彼にサイトはついていく。
その途中でサイトは今日の料理についてヴィンダールブに語った。
「今日の煮込みうまかったよなーーーー!」
「そうかい?」
反応の鈍いヴィンダールブにマジか? とサイトは勢い込んで言う。
「おいおい、あんな美味い肉ありえないだろ?やっぱ俺がさばいたおかげだな、この俺の包丁捌きがあの味を引き出したんだぜ、きっと」
サイトが誇らしげに言うのにヴィンダールブがピクリと反応した。
「君がさばいたんだ?」
「おう!まぁ、かわいい豚ちゃんだったけどそこは仕方がないよな。あいつらも俺たちに食べられてきっと満足してるよ」
サイトの言葉にまたもやピクリとヴィンダールブが反応する。
「へー、仕方がないんだ?それにみんな満足したんだ?」
「そりゃ、そうだろ?あんなにうまかったんだぜ?あの豚ちゃんもふもっふ、ふもっふって鳴いていたけどあれだけ美味しく食べられば満足さ、もちろん俺も大満足だった」
キラリと歯を光らせるサイトをヴィンダールブは見もしない。
「そうかい、そうかい」と言いながら森の奥へと歩いていく。
それにサイトはあの豚ちゃんがどれだけ美味しかったか長々と語りながら続いた。
そしてだいぶ歩いた後、少し開けた広場へとでた。
ヴィンダールブはその中央に生えてあった木に向かいながら、サイトに話しかける。
「サイト覚えているかい?僕が豚に似た生き物を飼っていたことを?」
「あぁ、あのボン太くんていう生き物だろ?」
「へ~~、やっぱり知ってるんだね?彼女はね、僕の小さいころからの友達なんだよ?」
「ふぅ~ん」
「悲しいとき、寂しいとき、うれしいとき、怒っているとき、いつも彼女は僕の傍にいてくれたんだ。」
「へ~~」
「僕は毎日その彼女を抱いて寝たものさ!」
「そうなんだ~~?なぁ、なんか寒くないか?早く用事を済ませてくれよ」
突然背中に寒気が走った。
サイトはブルブルと震えながらヴィンダールブに聞いた。
「早く?そうかい、そうかい、そんなに早くして欲しいのかい?うん、うん、もちろんすぐに……してあげるよ」
「???」
ヴィンダールブはゆっくりと木へと向かう。
「ね~、サイト?君がしている紫のリボンどうしたんだい?」
「うん、あぁこれか?知ってるだろ、俺がやり遂げた証さ!」
サイトは誇らしげに掲げてみせる。
それには豚の返り血が付着していた。
「それはね~、僕のキャサリンがしていたリボンなんだよ?」
「は~?」
キャサリンって誰だよ?
これはミョズニトニルンのリボンだぞ。
ヴィンダールブが困惑気味のサイトに向かって何かを投げる。
それは月明かりの中、きらりと光りながらサイトの足元に転がった。
それは銀のプレートでキャサリンと記されていた。
「そして、それはキャサリンがしていたプレート」
なにやら雲行きが怪しくなった気がしてきた。
「かわいそうな僕のキャサリン、さぞ怖かったろうに……」
何だ?何なんだ?
「そのキャサリンを殺した挙句、僕に食べさせるなんて、サイト君、君には本当に驚かされるよ」
そうして木に隠れるようにヴィンダールブの姿が回り込まれる。
反対側の木からでてきたヴィンダールブの目は赤く染まっていた。
広場を囲む木々の中からも赤い光が漏れる。
いつの間にやらこの場は多くの生き物に囲まれていた。
サイトの体中にダラダラと冷や汗が流れる。
サイトもここに来てようやく理解していた、あの豚はヴィンダールブのボン太クンだったのだ。
サイトはミョズニトニルンにはめられたのである。
「まって「「キャサリンの敵を討たなければならない……」」」
サイトの言葉はかき消される。
周りからも獣のうなり声や遠吠えが響いている。
そしてヴィンダールブの手元からギュインギュインと機械音がしだした。
なぜお前がそれをもっている?
この世界にあるはずのないものがそこにあった。
チェエンソーである。
その刃を高速に回転させながら、ギュインギュインと音を立てる。
赤い瞳の光が恐怖だった。
フフフウフフフフウフフフとかなり怖い笑い声をヴヴィンダールブは上げる。
サイトはブルブルとこれでもかと震えている。
辺りでは獣の声がうるさいぐらいに響いている。
サイトはもうかわいそうなぐらい震えている。
そして唐突に笑い声と叫び声がやんだ。
静寂の中ただヴィンダールブの声だけが響いた。
「キル ヒム オール」
その声が聞こえるや否や、圧倒的な質量と暴力による殺戮の宴が始まった。
「ギィ、ギィヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
サイトはその暴虐に容易く飲み込まれ、耳にギュインギュインという恐怖の音を聞きながら死への旅路に出たのである。
生き返るのでマジで手加減のない、集団リンチだった。
そのときミョズニトニルンは食後の紅茶を飲みながら一人呟いた。
「ふっ、君はいい駒だったよ、サイト」
ミョズニトニルンが見上げた空に、一つ流れ星が流れた。
今回のサイト君の教訓。
人のペットは食べてはいけない!
ミョズニトニルンの言葉を簡単に信じたら、死んでしまうので要注意!←最重要
テーマ : 自作小説(二次創作)
ジャンル : 小説・文学