記されなかった使い魔 その七
「てやんでー、バーロー。ルイズのチンチクリンの業突く張りの甲斐性なしが~~、ヒック」
サイトはルイズと二人して、宝物庫を全壊させた日の翌日、酒場でくだを巻いていた。
サイトはルイズと二人して、宝物庫を全壊させた日の翌日、酒場でくだを巻いていた。
「エクスプロージョンの何が不満だっつ~の、人が約束を守ったっていうのに、約束を破るなんてなんて奴だ~~~、ヒック」
「おい、サイト?その辺でヤメトケッテ」
「なんだ~~、デルフ?なんか文句でもアンノカ~~~?ヒック」
デルフが呆れたように声を出す。
「しかたあんめ~~、俺たち伝説よ?ブリミルは神認定よ?6000年前にそのブリミルの使い魔やってたなんて言ったら、普通かわいそうな目で見られるぞ?」
「冗談じゃないっつ~~の!そんなこと俺の知ったことかよ!俺は本当のことしか言ってないつ~~の!」
屈辱の記憶を思い出す。
あの宝物庫全壊のあと、ルイズはサイトを攻め立てた。
「この馬鹿犬~~!なんてことしてくれるのよ!宝物庫よ、宝物庫!もし弁償させられたらどうしてくれるの?」
何言ってんの、こいつ?
自分で壊したくせにどうしてくれるも何もないだろう?
むしろサイトが向きを変えていなければ寮のほうに飛んでいって、大量殺人を起こしていただろうに?
「それに何よ?あれの何処が虚無なのよ?爆発が大きくなっただけじゃない!」
馬鹿なあの大爆発を見ていなかったのか?
いや、爆発が大きくなっただけといわれれば反論はできないのだが、でも規模が違うだろ?
「あんたとその馬鹿剣の話している雰囲気に騙されたけど、よく考えたらあんたが虚無の使い魔なわけないじゃない!私が虚無の魔法使いである可能性は無きにしも非ずとして、あんたが始祖の使い魔だったなんてそんなことあるわけないじゃない!どうせどっかの始祖の生まれ変わりだとかでも騙った偽者の使い魔だったんでしょ!」
このクソ女!
自分で勝手に納得して、勝手に結論だしたくせに、何て言い様だ!
誰もサイトは信じてくれなんて言ってない!
「こんなんじゃ、約束はなしね!新しい魔法でも教えてくれない限り、おね……ごふんごふん、女の子は紹介してあげられないわ!」
馬鹿な~~、馬鹿な~~、馬・鹿・なーーーーーーーー!
なんだその横暴!
断固として抗議する!
我々は横暴なご主人の提案に断固として抗議する所存であります!
ストライキだーーー、こんちくしょーーーーー!
「はん?なんか言った?悔しかったら、新しい魔法を教えてみなさいよ!」
うぬぬぬぬ~~~~。
新しい魔法を教える事はできる、サイトが何とかスペルを覚えている魔法がもう一つある。
ブリミルが戦闘でよく使っていた魔法なのだ。
女の子を紹介して欲しいサイトはできる事なら教えてしまいたかった。
だがしかし、だがしかし……
ひどくそれを教えるのが危険な気がするのだ。
この撲殺魔少女ルイズにそれを教えてしまったら、ピルピルピーと撲殺されてしまう気がするのだ。
サイトが覚えている魔法「加速」は明らかに戦闘用の魔法であり、術者を文字通り加速させる魔法だ。
戦闘したことがないルイズが使っても、サイトの力なら一蹴できるはずなのだが……背中に流れる脂汗をサイトはとめる事ができなかった。
この嫌な予感は外れる気がしない!
むしろ必然?
運命なんて曖昧なものじゃなく、決定された未来のごとくルイズに倍速で撲殺される自分が目に浮かぶサイトだった。
「無理でしょ?所詮あんたはタダの私の使い魔なんだから、身の程をわきまえて私だけ見てればいいのよ!別にあんたを独り占めしたいわけじゃないんだからね、ただあんたは私の使い魔だからしょうがなく言ってるんだからね?」
しかしサイトはルイズの話を話半分に聞きながら、「不幸だ~~~!」と不貞寝を始めていた。
それを見てルイズの顔が真っ赤に燃える。
轟き叫べと彼女の魔法の杖が光って唸る!
「この馬鹿犬~~~!」
サイトはまたもや星になった。
そして翌日、早朝から走ってトリスタニアに見つけていた酒場に赴き、主の悪口を言いながら深夜まで酒を飲んでいるサイトである。
記されなかった使い魔 その七
カウンターで浴びるように酒を飲んでいたサイトは、カウンターの奥のほうでサイトと同じように浴びるように酒を飲んでいる女性を見つけた。
例え酔っていようとその機能を失う事はないサイトのスカウターが対象の戦闘能力をはじき出す。
理知的な風貌と、それを彩るメガネ。
メガネ萌え!
鋭い視線、なにやら危険な香りがする女。
でもそこがいい!
胸も結構大きい!
おっぱい、おっぱい!
なんと戦闘力1万5千だと、圧倒的じゃないか!ルイズなんか戦闘力100程度だというのに!
これは是非ともお近づきにならねばなるまい。
サイトはルイズに対して憤っていたことを忘れて女性に近づいた。
それがどうしてこんなことになっているのだろう?
朝ベットから起きたサイトの隣で全裸で眠る美しい女性。
正直見覚えがありすぎる。
確認するとサイトもパンツはいてない。
う~~ん、何だこれ?
ドッキリ?カメラどこ?スタッフは?
いつまでたってもそんなものがでてくる雰囲気がない。
落ち着いて考えてみる。
自分がどんな状況にあるのかはおぼろげながら理解できる。
気だるげな行為後の感触を感じながら、コーヒーを飲むかタバコでもすうべき場面である。
二人して貴族への不満や雇い主への不満をぶちまけながら浴びるように飲んでいたのは思い出せる。
セクハラじじぃーーーー!とか、
貧乳高慢ちき女!とか、
アルビオン王家クソやろーーとか、
変態ブリミルのウ●コやろーーーとか叫んだ覚えがある。
だが……いくら思い返しても肝心の行為の記憶が欠片とない。
重要なのはそこでしょ?
そこの記憶がなかったら、もったいないというか、あんまりすぎるでしょ?
泣くぞこんちくしょーーーーー!
結局サイトの記憶は戻らなかった。
血の涙を流して壁に頭を叩きつけるサイトである。
こんな初体験は悲しすぎる。
なら今の意識がはっきりしているうちに、女性を押し倒そうとしたが、そのときには女性は目を覚ましてしまっていた。
女性はシーツで胸元を隠しながらサイトに言った。
「まいったね、コリャ。こんな若造に身の上話をした上、手を出しちまうなんて、マチルダさまともあろうものが耄碌しちまったかね?」
その仕草止めてください!
扇情的過ぎて鼻血が出ます。
そのままシーツを巻いたまま立ち上がり、鏡台の方へと歩いていく、そして鏡を見ながら手早くマチルダさんは髪を纏め上げた。
そんな様子も妖艶すぎてサイトには言葉もなかった。
あの体を昨夜自分は好きにしたというのか?
なんか体全体にそれらしきしことをした感じがおぼろげに残っているような気がするのに、肝心の記憶はさっぱりだ。
もどかしい、もどかし過ぎる。
なんであんなに酒を飲んだんだ、こんちくしょ~~!
記憶がなくなるまで飲むなんて、なんてことを~~~~!
思い出せ、思い出すんだ、よ~~く思い出せば必ず思い出せるはず!
そんなサイトが思い出せたのは目の前の女性が今流行の怪盗「土くれのフーケ」であり、なぜか宝物庫の爆破の犯人にされたという事だった。
あとは元はアルビオンの貴族だったが、王様に逆らったため貴族の権利を剥奪された事。
貴族が嫌いで高慢ちきで偉そうな貴族が、彼女に大事なものを盗まれたときの慌てふためく様が大好きなこと。
妹のように思っている子がいて、宝物を売って出来たお金はほとんど仕送りに使っているという事。
ほとんど彼女の秘密、全部だった。
酒の力は恐ろしい。
彼女がこんな風にサイトにしゃべってしまったのは、サイトが貴族を貴族とも思ってないようなところが彼女と似ていた事もあったのかもしれないが、やはり酒のせいだろう。
昨日は二人してちょっと飲みすぎた。
そのせいで記憶がない。
酒なんて、酒なんて、嫌いだーーーーーー、馬鹿やろーーーー!
「あ~あ、私も年貢の納め時か……あんたみたいのに逆らって勝てるわけもないし。ほら捕まえるならなら早くしな!」
そう言ってマチルダさんは、なにもかもあきらめた顔をする。
はて、彼女は何を言っているのだろう?
なぜサイトが彼女を捕まえなければならないのか?
それにサイトに逆らって勝てるわけがないとはどういう意味か?
サイトとマチルダさんは昨夜が初対面だったはずだと思うのだが?
そう率直にサイトが言うとマチルダさんは呆れたような顔で答えてくれた。
マチルダさんは学園の宝物庫を爆破した犯人にされたせいで、以前よりかなり多くの賞金をかけられ指名手配にされたらしい。
幸い顔が割れてないので今はまだ安全なのだが、サイトにばれてしまったのでもう捕まるのも時間の問題らしい。
これでサイトがただの平民だったり、ただの貴族なら殺して埋めてしまえばそれで話は終わったのだが、幸か不幸か彼女はサイトのことを知っていた。
ベロンベロンに酔っていた昨夜は気づかなかったらしいが、今朝になって気づいたらしい。
驚くべき事に彼女はロングビルという偽名で魔法学院で学園長の秘書をしているらしい。
そこでサイトと学生四人の決闘を見ており、手加減しながら簡単に四人を圧倒したのを見て、マチルダさんでは到底かなわないと思ったそうだ。
そんなサイトに正体を知られたからには、もう年貢の納め時、そういうことらしい。
ではサイトが黙っておけば問題ないというわけだ。
そうサイトが言うとマチルダさんはいぶかしげに問うて来た。
「なんだってそんなことするんだい?あんたは私を突き出せば大金を手に入れられるんだよ?」
だが、サイトにその気は欠片も無い。
こんな美人を死刑にするなんてもったいなさ過ぎるし、何より……
「初体験の相手にそんなことできませんよ!」
例えその記憶がなくても、無いとしてもーーーーー!初めての相手には違いない。
思いもよらぬ答えだったのだろう、マチルダさんはパチクリと目を瞬かせたあと、大声で笑った。
「そんな馬鹿な理由かい?あはははっはは、まぁ変に難しい理由じゃなくて面白いじゃないか。そっちのほうがよっぽど信用できるってもんだよ!しかし、昨夜はあんなに獣のようだったくせに初体験だったのかい?」
マチルダさんの素朴な疑問が痛かった。
獣のようだったのか!
野獣のようだったのか!
狼だったのかーーーーー!
マチルダさんには記憶はあるのに、なぜ自分にはない?
そんなに激しかったのなら覚えていても不思議じゃないはず!
これは神(作者或いは読者)の嫌がらせなのか?
そう思うサイトを見ていたマチルダさんが困惑気味に告げた。
「なぜ泣く?」
「世間(作者或いは読者)の風当たりが目に沁みて……」
うぅっと神ならぬサイトはこの世の理不尽に涙した。
「おい、サイト?その辺でヤメトケッテ」
「なんだ~~、デルフ?なんか文句でもアンノカ~~~?ヒック」
デルフが呆れたように声を出す。
「しかたあんめ~~、俺たち伝説よ?ブリミルは神認定よ?6000年前にそのブリミルの使い魔やってたなんて言ったら、普通かわいそうな目で見られるぞ?」
「冗談じゃないっつ~~の!そんなこと俺の知ったことかよ!俺は本当のことしか言ってないつ~~の!」
屈辱の記憶を思い出す。
あの宝物庫全壊のあと、ルイズはサイトを攻め立てた。
「この馬鹿犬~~!なんてことしてくれるのよ!宝物庫よ、宝物庫!もし弁償させられたらどうしてくれるの?」
何言ってんの、こいつ?
自分で壊したくせにどうしてくれるも何もないだろう?
むしろサイトが向きを変えていなければ寮のほうに飛んでいって、大量殺人を起こしていただろうに?
「それに何よ?あれの何処が虚無なのよ?爆発が大きくなっただけじゃない!」
馬鹿なあの大爆発を見ていなかったのか?
いや、爆発が大きくなっただけといわれれば反論はできないのだが、でも規模が違うだろ?
「あんたとその馬鹿剣の話している雰囲気に騙されたけど、よく考えたらあんたが虚無の使い魔なわけないじゃない!私が虚無の魔法使いである可能性は無きにしも非ずとして、あんたが始祖の使い魔だったなんてそんなことあるわけないじゃない!どうせどっかの始祖の生まれ変わりだとかでも騙った偽者の使い魔だったんでしょ!」
このクソ女!
自分で勝手に納得して、勝手に結論だしたくせに、何て言い様だ!
誰もサイトは信じてくれなんて言ってない!
「こんなんじゃ、約束はなしね!新しい魔法でも教えてくれない限り、おね……ごふんごふん、女の子は紹介してあげられないわ!」
馬鹿な~~、馬鹿な~~、馬・鹿・なーーーーーーーー!
なんだその横暴!
断固として抗議する!
我々は横暴なご主人の提案に断固として抗議する所存であります!
ストライキだーーー、こんちくしょーーーーー!
「はん?なんか言った?悔しかったら、新しい魔法を教えてみなさいよ!」
うぬぬぬぬ~~~~。
新しい魔法を教える事はできる、サイトが何とかスペルを覚えている魔法がもう一つある。
ブリミルが戦闘でよく使っていた魔法なのだ。
女の子を紹介して欲しいサイトはできる事なら教えてしまいたかった。
だがしかし、だがしかし……
ひどくそれを教えるのが危険な気がするのだ。
この撲殺魔少女ルイズにそれを教えてしまったら、ピルピルピーと撲殺されてしまう気がするのだ。
サイトが覚えている魔法「加速」は明らかに戦闘用の魔法であり、術者を文字通り加速させる魔法だ。
戦闘したことがないルイズが使っても、サイトの力なら一蹴できるはずなのだが……背中に流れる脂汗をサイトはとめる事ができなかった。
この嫌な予感は外れる気がしない!
むしろ必然?
運命なんて曖昧なものじゃなく、決定された未来のごとくルイズに倍速で撲殺される自分が目に浮かぶサイトだった。
「無理でしょ?所詮あんたはタダの私の使い魔なんだから、身の程をわきまえて私だけ見てればいいのよ!別にあんたを独り占めしたいわけじゃないんだからね、ただあんたは私の使い魔だからしょうがなく言ってるんだからね?」
しかしサイトはルイズの話を話半分に聞きながら、「不幸だ~~~!」と不貞寝を始めていた。
それを見てルイズの顔が真っ赤に燃える。
轟き叫べと彼女の魔法の杖が光って唸る!
「この馬鹿犬~~~!」
サイトはまたもや星になった。
そして翌日、早朝から走ってトリスタニアに見つけていた酒場に赴き、主の悪口を言いながら深夜まで酒を飲んでいるサイトである。
記されなかった使い魔 その七
カウンターで浴びるように酒を飲んでいたサイトは、カウンターの奥のほうでサイトと同じように浴びるように酒を飲んでいる女性を見つけた。
例え酔っていようとその機能を失う事はないサイトのスカウターが対象の戦闘能力をはじき出す。
理知的な風貌と、それを彩るメガネ。
メガネ萌え!
鋭い視線、なにやら危険な香りがする女。
でもそこがいい!
胸も結構大きい!
おっぱい、おっぱい!
なんと戦闘力1万5千だと、圧倒的じゃないか!ルイズなんか戦闘力100程度だというのに!
これは是非ともお近づきにならねばなるまい。
サイトはルイズに対して憤っていたことを忘れて女性に近づいた。
それがどうしてこんなことになっているのだろう?
朝ベットから起きたサイトの隣で全裸で眠る美しい女性。
正直見覚えがありすぎる。
確認するとサイトもパンツはいてない。
う~~ん、何だこれ?
ドッキリ?カメラどこ?スタッフは?
いつまでたってもそんなものがでてくる雰囲気がない。
落ち着いて考えてみる。
自分がどんな状況にあるのかはおぼろげながら理解できる。
気だるげな行為後の感触を感じながら、コーヒーを飲むかタバコでもすうべき場面である。
二人して貴族への不満や雇い主への不満をぶちまけながら浴びるように飲んでいたのは思い出せる。
セクハラじじぃーーーー!とか、
貧乳高慢ちき女!とか、
アルビオン王家クソやろーーとか、
変態ブリミルのウ●コやろーーーとか叫んだ覚えがある。
だが……いくら思い返しても肝心の行為の記憶が欠片とない。
重要なのはそこでしょ?
そこの記憶がなかったら、もったいないというか、あんまりすぎるでしょ?
泣くぞこんちくしょーーーーー!
結局サイトの記憶は戻らなかった。
血の涙を流して壁に頭を叩きつけるサイトである。
こんな初体験は悲しすぎる。
なら今の意識がはっきりしているうちに、女性を押し倒そうとしたが、そのときには女性は目を覚ましてしまっていた。
女性はシーツで胸元を隠しながらサイトに言った。
「まいったね、コリャ。こんな若造に身の上話をした上、手を出しちまうなんて、マチルダさまともあろうものが耄碌しちまったかね?」
その仕草止めてください!
扇情的過ぎて鼻血が出ます。
そのままシーツを巻いたまま立ち上がり、鏡台の方へと歩いていく、そして鏡を見ながら手早くマチルダさんは髪を纏め上げた。
そんな様子も妖艶すぎてサイトには言葉もなかった。
あの体を昨夜自分は好きにしたというのか?
なんか体全体にそれらしきしことをした感じがおぼろげに残っているような気がするのに、肝心の記憶はさっぱりだ。
もどかしい、もどかし過ぎる。
なんであんなに酒を飲んだんだ、こんちくしょ~~!
記憶がなくなるまで飲むなんて、なんてことを~~~~!
思い出せ、思い出すんだ、よ~~く思い出せば必ず思い出せるはず!
そんなサイトが思い出せたのは目の前の女性が今流行の怪盗「土くれのフーケ」であり、なぜか宝物庫の爆破の犯人にされたという事だった。
あとは元はアルビオンの貴族だったが、王様に逆らったため貴族の権利を剥奪された事。
貴族が嫌いで高慢ちきで偉そうな貴族が、彼女に大事なものを盗まれたときの慌てふためく様が大好きなこと。
妹のように思っている子がいて、宝物を売って出来たお金はほとんど仕送りに使っているという事。
ほとんど彼女の秘密、全部だった。
酒の力は恐ろしい。
彼女がこんな風にサイトにしゃべってしまったのは、サイトが貴族を貴族とも思ってないようなところが彼女と似ていた事もあったのかもしれないが、やはり酒のせいだろう。
昨日は二人してちょっと飲みすぎた。
そのせいで記憶がない。
酒なんて、酒なんて、嫌いだーーーーーー、馬鹿やろーーーー!
「あ~あ、私も年貢の納め時か……あんたみたいのに逆らって勝てるわけもないし。ほら捕まえるならなら早くしな!」
そう言ってマチルダさんは、なにもかもあきらめた顔をする。
はて、彼女は何を言っているのだろう?
なぜサイトが彼女を捕まえなければならないのか?
それにサイトに逆らって勝てるわけがないとはどういう意味か?
サイトとマチルダさんは昨夜が初対面だったはずだと思うのだが?
そう率直にサイトが言うとマチルダさんは呆れたような顔で答えてくれた。
マチルダさんは学園の宝物庫を爆破した犯人にされたせいで、以前よりかなり多くの賞金をかけられ指名手配にされたらしい。
幸い顔が割れてないので今はまだ安全なのだが、サイトにばれてしまったのでもう捕まるのも時間の問題らしい。
これでサイトがただの平民だったり、ただの貴族なら殺して埋めてしまえばそれで話は終わったのだが、幸か不幸か彼女はサイトのことを知っていた。
ベロンベロンに酔っていた昨夜は気づかなかったらしいが、今朝になって気づいたらしい。
驚くべき事に彼女はロングビルという偽名で魔法学院で学園長の秘書をしているらしい。
そこでサイトと学生四人の決闘を見ており、手加減しながら簡単に四人を圧倒したのを見て、マチルダさんでは到底かなわないと思ったそうだ。
そんなサイトに正体を知られたからには、もう年貢の納め時、そういうことらしい。
ではサイトが黙っておけば問題ないというわけだ。
そうサイトが言うとマチルダさんはいぶかしげに問うて来た。
「なんだってそんなことするんだい?あんたは私を突き出せば大金を手に入れられるんだよ?」
だが、サイトにその気は欠片も無い。
こんな美人を死刑にするなんてもったいなさ過ぎるし、何より……
「初体験の相手にそんなことできませんよ!」
例えその記憶がなくても、無いとしてもーーーーー!初めての相手には違いない。
思いもよらぬ答えだったのだろう、マチルダさんはパチクリと目を瞬かせたあと、大声で笑った。
「そんな馬鹿な理由かい?あはははっはは、まぁ変に難しい理由じゃなくて面白いじゃないか。そっちのほうがよっぽど信用できるってもんだよ!しかし、昨夜はあんなに獣のようだったくせに初体験だったのかい?」
マチルダさんの素朴な疑問が痛かった。
獣のようだったのか!
野獣のようだったのか!
狼だったのかーーーーー!
マチルダさんには記憶はあるのに、なぜ自分にはない?
そんなに激しかったのなら覚えていても不思議じゃないはず!
これは神(作者或いは読者)の嫌がらせなのか?
そう思うサイトを見ていたマチルダさんが困惑気味に告げた。
「なぜ泣く?」
「世間(作者或いは読者)の風当たりが目に沁みて……」
うぅっと神ならぬサイトはこの世の理不尽に涙した。
テーマ : 自作小説(二次創作)
ジャンル : 小説・文学