記されなかった使い魔 その五
ロウソクの炎の中、ぼんやりと浮かび上がる美しい裸体。
シーツに隠されながらもその丘陵を主張する胸元。
薄暗い部屋のはずなのに、その色を微塵とくすめない健康的な肌の色。
身じろきする度に絹づれの音がする。
誘うように手が招かれる。
彼女の瞳が濡れたように潤み、サイトを誘っていた。
サイトが見る、その少女は美しかった。
シーツに隠されながらもその丘陵を主張する胸元。
薄暗い部屋のはずなのに、その色を微塵とくすめない健康的な肌の色。
身じろきする度に絹づれの音がする。
誘うように手が招かれる。
彼女の瞳が濡れたように潤み、サイトを誘っていた。
サイトが見る、その少女は美しかった。
キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー 、「微熱」を名乗った彼女に対する男は皆一様に熱に浮かされたように彼女を求めるのだろう。
それほどに閨で男を誘う彼女は官能的で、男を誘う娼婦のように淫らだった。
これはもう獣になって襲い掛かるしかないだろう?
サイトの股間の息子さんはいつになくいきり立ち、準備OKだと奮い立っている。
さぁ、いまこそサクランボを捨てるとき、各々方気合を入れて戦に望みましょうぞ!と息子と二人確認しあい、いざルパンダイブと飛び込んだサイトは、部屋になだれ込んできたご主人様に爆破され気絶した。
記されなかった使い魔 その五
あのギーシュたちとの決闘の後、サイトはルイズの部屋で正座してコメツキバッタのように頭を下げていた。
貴族の決闘はこの学院では禁止らしかったが、メイジでもないサイトとの決闘は相手がそれなりの怪我をしたとはいえ、水の秘薬や魔法で十分治療可能だったために両者への厳重注意という形で落ち着いていた。
ではなぜサイトがルイズに対して頭を下げているかといえば、ルイズに肩代わりしてもらった借金のためだった。
あの時、サイトは何も考えず教壇を投げてしまったが、あの教壇は考えるまでもなくサイトのものではなく学院のものである。
重厚な木材で作られたそれは職人の技術を凝らした細工と彫り物がされた高級品であり、曲がりなりにも貴族の子弟が通う学院にふさわしいものであった。
それは今、サイトが投げつけたせいで木っ端微塵、原型を留めていない。
加えてかなりの重量の教壇が高いところから落ちてきて、食堂の床が無事なわけもなくその修繕費や割れた皿、曲がったナイフやフォーク、真っ二つになった長机などの修繕費と新しい教壇の代金が、当然それをなしたサイトに要求された。
これには顔を青くしたサイトである。
なんせ聞けば平民がまじめに働いても返済するのに何十年もかかりそうな額だったのだから当然だ。
無一文のサイトに払えるわけもなく、このままでは首をくくるしかない。
そう思ったサイトだったが、以外や以外、その顔を青くしたサイトの横に佇んでいたルイズが何も言わずサイトの借金を肩代わりしてくれたのだ。
この時ばかりはいくら貧乳とはいえ、ルイズが女神のように美しい慈悲深い存在に見えたサイトである。
しかし、それは間違いだった。
借金を支払ってくれた事に感謝し、礼を述べるサイトを傲然と見下ろして(ルイズはチビなのでサイトを見下ろすことは出来ないが、気持ち的にはサイトを見下ろして)言い放った。
「ふふん、さて現実的な話し合いを始めようかしら、ホラ犬、そこに正座しなさい!」
ルイズが指し示したのは床の上、座布団も何もない場所である。
それでもサイトは従った、今のルイズはサイトの恩人である、例え性根が腐っていようとも。
「聞き分けがいいわね、そうよ、聞き分けがいい犬は大好きよ!」
ルイズの瞳がサディスティックに燃えている気がして怖気が走るサイトだった。
チロリと舌で唇を舐める仕草が貧乳の癖に妖艶に見える。
というより何故息が荒いのか?
明らかに性的な興奮を覚えているようなルイズにドン引きするサイトだった。
なんと言う女王様気質、背後にボンテージで鞭をもった幻影のSMの女王様のスタンドを幻視するサイトである。
「ねぇ、サイト?あなたは私の何かしら?友達?違うわよね?家族?違うわよね?恋人?違うわよね?じゃぁ、赤の他人?これも違うわよね?だって赤の他人の借金を私が肩代わりしてあげる、理由がないもの、ねぇ、サイト?」
猫撫で声で言うルイズが心底恐ろしいサイトだった。
これが本当にあのルイズなのだろうか?もはや別の生き物にしか見えない。
「ほら、サイト?私があなたの何なのかあなたの口から聞かせてちょうだい。急がなくていいのよ、あなたは絶対に私に逆らえないんだから?何故かはわかるわよね、サ~~~イト?」
そう言ってピラピラと借用書を振る、ルイズはまるでメフィストフェレスのように笑っていた。
借金を踏みにじり、このまま逃亡するのも手だったがサイトにはそれが出来ない理由があった。
逃亡したとして、この世界で頼れるのはブリミルやサーシャたちな訳だが、サーシャに借金のことがばれるとどんなお仕置きを受けるか考えたくもない。
サイトを甘やかしているようでそういうことはきっちりしているサーシャである。
ましてこの学院にはキュルケやシエスタ(あの決闘の後、頬を染めながらサイトに自己紹介してくれた)のような巨乳でかつ美人でサイトに惚れてくれそうな少女たちがいて、このままおさらばするのはもったいなすぎる。
何より自分でこしらえた借金を踏み倒すというような不義理をするのが我慢ならなかった、これでサイトは結構一本気なところがあるのだ。
「ぐ、ぎぃ、ぎ、ぎ、ぎぃ」
それでもそれをサイトの口から言うのはかなりの努力がいった。
なぜなら相手は貧乳でサイトにとって女未満で、決してそんな少女の使い魔にはならないと不断の誓いをしたはずなのだから。
だが、借金のかたを持ってくれているのは目の前の少女で……
そう葛藤するサイトをルイズはとても楽しいものを見るように笑っている。
「うふふっふふふふうふふふふ」
お前、本当にルイズなのかよ?というぐらいの豹変振りだった。
サーシャかぁさんの言うとおりであった。
女はいくつの女でも魔物なのだ。
そして遂にサイトは借金の方に売られた娘のようにか細い声で奴隷契約にサインした。
「おつ、俺は、ルゥ、ルイズの、つっ、使い魔です」
それを見やっていたルイズの顔は赤らみ火照っていた。
そうして、その夜ルイズは悪代官のような狂笑をあげたのである。
というわけで翌日である。
ご主人様のおかげでよく眠れたサイトだったが、その顔は凶悪に歪んでいた。
借金かたに使い魔にされた挙句、せっかくチェリーさんを捨てる事が出来るところだったのに、目の前のチンチクリンのせいでそれもおじゃんである。
あれは本当に惜しかった、この恨み晴らさずにはいられない。
借金を返し終わったら覚えてろよ、ルイズ。
ルイズの初体験の時には絶対に同じように乱入して恥をかかせてやると誓うサイトだった。
大体先祖伝来のライバルだがなんだが知らないが、それとサイトに何の関係があるというのか?
いくら使い魔になったとはいえ、人の恋愛事情まで介入してもらいたくはない。
そのサイトの不機嫌な様子にルイズが反応した。
「もう、相手がツェルプストーじゃなければ私も何も言わないわよ!あの女はサイトばかりじゃなくて他の男にも絶対に手を出してるんだから、枕事の最中に男に乱入されたいわけじゃないでしょ?」
「え?そうなの?」
さすがにそれは勘弁願いたいサイトだった。
さっさと童貞は捨てたいが、どうせなら最初は一対一がいい。
そこに見知らぬ男が混ざるなど怖気が走る。
男は不倶戴天のサイトの敵である。
そうか、そういう理由でならルイズには感謝しなければならないのかもしれない。
それにしたってキュルケに肢体はもったいな過ぎたが……
葛藤するサイトを見てルイズはなおも言う。
「あんたも私の使い魔になったのだから、少しはご主人様のいうことを信頼しなさい!あの女の家系はね、人の男を寝取るような最悪の血筋なんだから!」
そう言ってルイズが語ったのはヴァリエール家とツェルプストー家の永きに渡る不毛な恋愛闘争についてだった。
正直なんだそりゃってもんである。
聞いてみればヴァリエール家が恋愛に対して、ツェルプストー家に後塵を拝してきたというだけの話のわけだが、それを語るルイズの顔は怨念に歪んでいた。
根が深い話のようである、深入りするのはアホがやることであろう。
ここは華麗にスルーして、話を変えるべきだろう。
「それよりルイズ?授業のほうはいいのか?そろそろだろ?」
そう言ったサイトにルイズはあきれたように返した。
「あんたね……今日は虚無の日でしょうが!今日は授業も休みなのは当然でしょ!」
虚無の日?
それは日曜日のようなものだろうか?
「日曜日みたいなものか?俺も休んでいいんか?ならシエスタをデートに誘ってくる!」
そう言って部屋を出ていこうとするサイトをルイズがムンズと捕まえた。
「って、何だよ?今日は休みなんだろ?」
「そうだけど……そうだ!今日は王都にあんたの武器を買いに行くわよ!いくらあんたが強いとはいえ、無手じゃ私が安心できないわ!」
「むっ」
自身の強さを過小評価されたのは気に入らないが、ルイズの言っていることも一理ある。
無手でいるより剣でも持っていたほうが、相手に対して牽制になるのは確かなのだ。
それにいつだって最大戦力を整えておくのは不測の事態を切る抜けるためには重要な事だ。
使い魔になったからにはその責務を果たす事にやぶさかではないサイトだった。
まぁ、金の切れ目が縁の切れ目なわけだが……
それに王都というのも気にかかる。
王都というのだからこの国で一番大きな都なのだろう。
ブリミルたちといたときは小さな村々を回っても都という規模のものに言ったことはない。
中世的な雰囲気なこの世界の王都というぐらいだからディズニーランドにあるような城があったりするに違いない。
サイト持ち前の好奇心がムクムクと沸きあがってくる。
「いく!そうと決まったら、早く行こうぜ!」
今から待ちきれないサイトの様子に、ルイズはフゥーと安堵したように息を吐き出した。
トリステイン王国、王都トリスタニア。
白い町並みが美しく、聳え立つ王城の白さとあいまってまさに白亜の都と称されるのにふさわしいトリスティンが誇る王都であった。
サイトたちがいた魔法学院からは通常馬を使っても二時間ほどの場所なのだが、はしゃいだサイトのせいで一時間半ほどで到着していた。
「ゼー、ハー、ゼー、ハー、なんであんたそんなに馬に乗るのがうまいのよ!」
「そうか?こんなもんだろ?」
ブリミルたちといたころは結構、馬を使っての移動もこなしたサイトである。
ましてヴィンダールブ直々の指導、そりゃうまくもなるってものだ。
馬を預けたサイトたちは街一番の大通りといわれるブルドンネ街を歩いていた。
キョロキョロとあたりを見渡すサイトをルイズが注意する。
「止めなさいよ、何処の田舎ものかと思われるじゃない!」
「すごいな!まるっきり中世の町並みだぜ!道は狭いけど活気があるじゃないか!」
「道が狭い?ここは大通りよ?狭いわけないじゃない!」
「そうなんか?そうか~、やっぱ現代の道路は発達してるんだな~」
ルイズにとってはわけがわからないことをのたまうサイトをルイズは変な目で見ている。
それを感じ取りながらもサイトは当たりに気を配っていた。
そのルイズに男がぶつかりそうになる。
その寸前でサイトが男を蹴倒した。
「何しやがる!」
息をまく男が懐に手を入れる。
そして、何かを探す仕草をする男はサイトを見やって驚愕した。
サイトはいつの間にやら一本の杖を手でもてあそんでいた。
男がそれに気づいたのを知るとニヤリと笑ってヒョイっと男の足元に投げつける。
その杖が地面に末尾までめり込むのを見て、男は顔を青くして逃げ出した。
ルイズはそれを見て目を白黒させている。
「な、な、一体なんなのよ?」
「スリだろ?メイジだったみたいだけど……ああいうのも貴族なんか?」
それにルイズが激昂した。
「馬鹿言わないでよ、あんな奴貴族の風上にも置けないわ!魔法を盗みの道具にするなんて、なんてこと!あんな奴が魔法を使えるなんて!」
そう言って歯噛みするルイズは本当に悔しそうだった。
「もう、サイト!他にはあんな奴がいないでしょうね?今度見つけたらタダじゃおかないわ!」
ルイズがタダじゃおかないって、エクスプロージョンを使う気だろうか?
それこそタダではすまないだろう。
意識的に使えばあれは十分強力な魔法なのだ。
「まぁ、俺たちを監視する目はあるけどな」
そういうサイトにルイズは目を丸くした。
「私たちを監視?一体どういうこと?」
どういうことといわれても、学園を出て少ししてぐらいからサイトたちは監視されていた。
知り合いのものだし、害はないからほっておいただけだ。
「そんなもの、知らんがな」
「埒が明かないわね、そいつらを私の前に連れてきなさい!私がじきじきに理由を詰問するわ!」
そんな大した事でもなかろうに?
あの二人をルイズの元に連れてくるよりよっぽど……
「お前を運んだほうが楽だよな……」
そう言ってサイトはルイズを抱えて空へと舞い上がった。
50メートルは離れて監視していたキュルケと青髪の子の背後に着地する。
ルイズはあまりの事に自分に何が起こったかさっぱりわかっていなかった。
キュルケにしても青髪の子にしても突然監視対象が消えて困惑したろうが、青髪の子は素早く後ろに振り向いていた。
やはりこの青髪の子はなかなかに戦闘経験が豊富そうだ。
サイトが視界から消えるや否や、自身の周りに風の結界を張り巡らせサイトが動いた際の風の動きからサイトの位置を割り出していた。
その凍てついた瞳がサイトに姿を捉える。
そして、キュルケの気を引くように彼女はキュルケの服を引っ張った。
キュルケが振り向く。
それにサイトは「よぉ!」と手をあげて挨拶した。
そしてキュルケが「ダ~~リン、私を置いていくなんてひどいじゃない!」とサイトに抱きつき、それに対して鼻の下を伸ばすサイトにルイズが爆発し、今はキュルケとルイズが喧々諤々のケンカをしながら歩いているその後ろをサイトは青髪の子と並んで歩いていた。
キュルケの紹介によるとこの子はタバサというらしい。
寡黙な子である。
この子とキュルケは不断などんな会話をしてるのだろうか?
想像が付かなかった。
「あのよう?えぇ~と、タバサって呼んで良いか?」
「いい」
これはまた簡潔なお答えで……
ここまではっきりとやられるとこれも個性なのかと思えるから不思議だ。
「う~~ん、ルイズに聞いたんだけどキュルケが18でルイズが16だって言ってたんだけど、あの学校に通ってる生徒はみんな歳はバラバラなのか?」
「そう、私は15。まだ成長途中」
今ちょっと自己主張したよな?
そうか胸が小さい事を気にしてたのか。
ならばあのコントラクト・サーヴァントのときや、決闘のときの彼女の行動にも納得がいく。
しかし、15か?もっと小さく見えるが一応、まだ将来の目はあるのかもしれん。
あれでルイズもこれから巨乳へと成長する可能性もほんのちょっとだけでもあるのかもしれない。
というよりそう思わないとルイズの使い魔なんてやってられない。
「そうか、育つといいな!」
「いい」
そう言ってタバサはうなづいた。
そうだ、彼女にはまだルイズと比べ一年の時間が残されているのだ。
今後の彼女の成長に期待しよう!
まぁ、正直ルイズにしろタバサにしろ期待は薄いのだが。
大きく育てよ、そう思いタバサの胸をみるが、かなりに平原だった。
これがキュルケ並みになるものか?
絶望的だろう?そう思うサイトはハァ~とため息をついた。
そのサイトの頭にゴンと何かがぶつかる。
なんだとみるとタバサの杖がサイトの頭にぶつかったようだった。
タバサはサイトではないほうを見ており、たまたまサイトの頭にぶつかったのかもしれない。
タバサはそちらをみるのに夢中なようでサイトに杖があったのを気づいていない。
まぁ、仕方がないかと思うサイトだった。
その武器屋は裏通りの奥まった場所にあった。
剣のマークの看板に、おぉRPGみたいだという感想を抱くサイトである。
店内には所狭しと剣や槍が並んでいる。
カウンターの奥には太った親父がサイトたちを卑屈な笑みで出迎えていた。
「これは、これは貴族のお嬢様方!うちに何の用で?家は真っ当な商売をしてまさあ。 お上に目をつけられるような真似はこれっぽっちもしてませんぜ!」
何の用って武器屋で武器を買わないで何をするというのか?
それに何も聞く前からそういうのは何かやましい事がある証拠ではなかろうか?
そう思うサイトだったが、そんなことは関係ないとばかりにルイズが前に出た。
「客よ!剣を見せてちょうだい!」
ルイズと親父がなにやら話を始めた。
親父は貴族が剣を買うのに驚き、貴族に人気の剣だなどと細ッこい剣をルイズに勧める。
それをルイズはもっと大きい剣がいいなどといいつき返し。
それに親父が苦い顔をして奥に入っていく。
そして新しい剣を持ってきてその剣の説明を始めた。
そしてその剣がキュルケの出身地ゲルマニアのものだと知るとキュルケもいい剣ねと言い出し、その剣を買おうする。
それをルイズが私がサイトに買うのよと言い。
それにキュルケが私がダーリンにプレゼントするのよと言い返す。
その二人の間で火花が散るようだった。
それをタバサが無表情で眺めている。
とうよりお前ら当人をほったらかして、勝手に決めるっていうのはどうなのよ?
別にガンダールブの力ならどんな武器だってそれなりに扱えるのだが、どうせならサイトも自分が納得するものが欲しかった。
それにルイズは買ってくれるというが、今の借金をしている状態でそんな高いものを買ってもらうのも気が引ける。
ゆえにサイトは自分で武器を選ぼうとキュルケとルイズがつかみ合いの喧嘩を始めそうなのを無視して店内を物色していた。
そのサイトの目に一本の剣が映った。
みづぼらしい、錆び錆びの大剣である。
しかし、その剣の何かがサイトの記憶を刺激した。
思わず手にとって掲げてみる。
その剣から声がした。
「おでれ~~~た、おめ、使い手か?」
驚いたのはサイトのほうである。
その声は忘れもしない。
サイトの友人であり、サイトの母親であるサーシャの相棒の声だったのだから!
「もしかして、デルフか?」
サイトの誰何する声に剣は沈黙して応えた。
「どうして俺の名前を知ってる?それに何か聞き覚えがある声だな……誰だ?おめ?」
こうしてサイトは懐かしき喧嘩友達と再会したのである。
それほどに閨で男を誘う彼女は官能的で、男を誘う娼婦のように淫らだった。
これはもう獣になって襲い掛かるしかないだろう?
サイトの股間の息子さんはいつになくいきり立ち、準備OKだと奮い立っている。
さぁ、いまこそサクランボを捨てるとき、各々方気合を入れて戦に望みましょうぞ!と息子と二人確認しあい、いざルパンダイブと飛び込んだサイトは、部屋になだれ込んできたご主人様に爆破され気絶した。
記されなかった使い魔 その五
あのギーシュたちとの決闘の後、サイトはルイズの部屋で正座してコメツキバッタのように頭を下げていた。
貴族の決闘はこの学院では禁止らしかったが、メイジでもないサイトとの決闘は相手がそれなりの怪我をしたとはいえ、水の秘薬や魔法で十分治療可能だったために両者への厳重注意という形で落ち着いていた。
ではなぜサイトがルイズに対して頭を下げているかといえば、ルイズに肩代わりしてもらった借金のためだった。
あの時、サイトは何も考えず教壇を投げてしまったが、あの教壇は考えるまでもなくサイトのものではなく学院のものである。
重厚な木材で作られたそれは職人の技術を凝らした細工と彫り物がされた高級品であり、曲がりなりにも貴族の子弟が通う学院にふさわしいものであった。
それは今、サイトが投げつけたせいで木っ端微塵、原型を留めていない。
加えてかなりの重量の教壇が高いところから落ちてきて、食堂の床が無事なわけもなくその修繕費や割れた皿、曲がったナイフやフォーク、真っ二つになった長机などの修繕費と新しい教壇の代金が、当然それをなしたサイトに要求された。
これには顔を青くしたサイトである。
なんせ聞けば平民がまじめに働いても返済するのに何十年もかかりそうな額だったのだから当然だ。
無一文のサイトに払えるわけもなく、このままでは首をくくるしかない。
そう思ったサイトだったが、以外や以外、その顔を青くしたサイトの横に佇んでいたルイズが何も言わずサイトの借金を肩代わりしてくれたのだ。
この時ばかりはいくら貧乳とはいえ、ルイズが女神のように美しい慈悲深い存在に見えたサイトである。
しかし、それは間違いだった。
借金を支払ってくれた事に感謝し、礼を述べるサイトを傲然と見下ろして(ルイズはチビなのでサイトを見下ろすことは出来ないが、気持ち的にはサイトを見下ろして)言い放った。
「ふふん、さて現実的な話し合いを始めようかしら、ホラ犬、そこに正座しなさい!」
ルイズが指し示したのは床の上、座布団も何もない場所である。
それでもサイトは従った、今のルイズはサイトの恩人である、例え性根が腐っていようとも。
「聞き分けがいいわね、そうよ、聞き分けがいい犬は大好きよ!」
ルイズの瞳がサディスティックに燃えている気がして怖気が走るサイトだった。
チロリと舌で唇を舐める仕草が貧乳の癖に妖艶に見える。
というより何故息が荒いのか?
明らかに性的な興奮を覚えているようなルイズにドン引きするサイトだった。
なんと言う女王様気質、背後にボンテージで鞭をもった幻影のSMの女王様のスタンドを幻視するサイトである。
「ねぇ、サイト?あなたは私の何かしら?友達?違うわよね?家族?違うわよね?恋人?違うわよね?じゃぁ、赤の他人?これも違うわよね?だって赤の他人の借金を私が肩代わりしてあげる、理由がないもの、ねぇ、サイト?」
猫撫で声で言うルイズが心底恐ろしいサイトだった。
これが本当にあのルイズなのだろうか?もはや別の生き物にしか見えない。
「ほら、サイト?私があなたの何なのかあなたの口から聞かせてちょうだい。急がなくていいのよ、あなたは絶対に私に逆らえないんだから?何故かはわかるわよね、サ~~~イト?」
そう言ってピラピラと借用書を振る、ルイズはまるでメフィストフェレスのように笑っていた。
借金を踏みにじり、このまま逃亡するのも手だったがサイトにはそれが出来ない理由があった。
逃亡したとして、この世界で頼れるのはブリミルやサーシャたちな訳だが、サーシャに借金のことがばれるとどんなお仕置きを受けるか考えたくもない。
サイトを甘やかしているようでそういうことはきっちりしているサーシャである。
ましてこの学院にはキュルケやシエスタ(あの決闘の後、頬を染めながらサイトに自己紹介してくれた)のような巨乳でかつ美人でサイトに惚れてくれそうな少女たちがいて、このままおさらばするのはもったいなすぎる。
何より自分でこしらえた借金を踏み倒すというような不義理をするのが我慢ならなかった、これでサイトは結構一本気なところがあるのだ。
「ぐ、ぎぃ、ぎ、ぎ、ぎぃ」
それでもそれをサイトの口から言うのはかなりの努力がいった。
なぜなら相手は貧乳でサイトにとって女未満で、決してそんな少女の使い魔にはならないと不断の誓いをしたはずなのだから。
だが、借金のかたを持ってくれているのは目の前の少女で……
そう葛藤するサイトをルイズはとても楽しいものを見るように笑っている。
「うふふっふふふふうふふふふ」
お前、本当にルイズなのかよ?というぐらいの豹変振りだった。
サーシャかぁさんの言うとおりであった。
女はいくつの女でも魔物なのだ。
そして遂にサイトは借金の方に売られた娘のようにか細い声で奴隷契約にサインした。
「おつ、俺は、ルゥ、ルイズの、つっ、使い魔です」
それを見やっていたルイズの顔は赤らみ火照っていた。
そうして、その夜ルイズは悪代官のような狂笑をあげたのである。
というわけで翌日である。
ご主人様のおかげでよく眠れたサイトだったが、その顔は凶悪に歪んでいた。
借金かたに使い魔にされた挙句、せっかくチェリーさんを捨てる事が出来るところだったのに、目の前のチンチクリンのせいでそれもおじゃんである。
あれは本当に惜しかった、この恨み晴らさずにはいられない。
借金を返し終わったら覚えてろよ、ルイズ。
ルイズの初体験の時には絶対に同じように乱入して恥をかかせてやると誓うサイトだった。
大体先祖伝来のライバルだがなんだが知らないが、それとサイトに何の関係があるというのか?
いくら使い魔になったとはいえ、人の恋愛事情まで介入してもらいたくはない。
そのサイトの不機嫌な様子にルイズが反応した。
「もう、相手がツェルプストーじゃなければ私も何も言わないわよ!あの女はサイトばかりじゃなくて他の男にも絶対に手を出してるんだから、枕事の最中に男に乱入されたいわけじゃないでしょ?」
「え?そうなの?」
さすがにそれは勘弁願いたいサイトだった。
さっさと童貞は捨てたいが、どうせなら最初は一対一がいい。
そこに見知らぬ男が混ざるなど怖気が走る。
男は不倶戴天のサイトの敵である。
そうか、そういう理由でならルイズには感謝しなければならないのかもしれない。
それにしたってキュルケに肢体はもったいな過ぎたが……
葛藤するサイトを見てルイズはなおも言う。
「あんたも私の使い魔になったのだから、少しはご主人様のいうことを信頼しなさい!あの女の家系はね、人の男を寝取るような最悪の血筋なんだから!」
そう言ってルイズが語ったのはヴァリエール家とツェルプストー家の永きに渡る不毛な恋愛闘争についてだった。
正直なんだそりゃってもんである。
聞いてみればヴァリエール家が恋愛に対して、ツェルプストー家に後塵を拝してきたというだけの話のわけだが、それを語るルイズの顔は怨念に歪んでいた。
根が深い話のようである、深入りするのはアホがやることであろう。
ここは華麗にスルーして、話を変えるべきだろう。
「それよりルイズ?授業のほうはいいのか?そろそろだろ?」
そう言ったサイトにルイズはあきれたように返した。
「あんたね……今日は虚無の日でしょうが!今日は授業も休みなのは当然でしょ!」
虚無の日?
それは日曜日のようなものだろうか?
「日曜日みたいなものか?俺も休んでいいんか?ならシエスタをデートに誘ってくる!」
そう言って部屋を出ていこうとするサイトをルイズがムンズと捕まえた。
「って、何だよ?今日は休みなんだろ?」
「そうだけど……そうだ!今日は王都にあんたの武器を買いに行くわよ!いくらあんたが強いとはいえ、無手じゃ私が安心できないわ!」
「むっ」
自身の強さを過小評価されたのは気に入らないが、ルイズの言っていることも一理ある。
無手でいるより剣でも持っていたほうが、相手に対して牽制になるのは確かなのだ。
それにいつだって最大戦力を整えておくのは不測の事態を切る抜けるためには重要な事だ。
使い魔になったからにはその責務を果たす事にやぶさかではないサイトだった。
まぁ、金の切れ目が縁の切れ目なわけだが……
それに王都というのも気にかかる。
王都というのだからこの国で一番大きな都なのだろう。
ブリミルたちといたときは小さな村々を回っても都という規模のものに言ったことはない。
中世的な雰囲気なこの世界の王都というぐらいだからディズニーランドにあるような城があったりするに違いない。
サイト持ち前の好奇心がムクムクと沸きあがってくる。
「いく!そうと決まったら、早く行こうぜ!」
今から待ちきれないサイトの様子に、ルイズはフゥーと安堵したように息を吐き出した。
トリステイン王国、王都トリスタニア。
白い町並みが美しく、聳え立つ王城の白さとあいまってまさに白亜の都と称されるのにふさわしいトリスティンが誇る王都であった。
サイトたちがいた魔法学院からは通常馬を使っても二時間ほどの場所なのだが、はしゃいだサイトのせいで一時間半ほどで到着していた。
「ゼー、ハー、ゼー、ハー、なんであんたそんなに馬に乗るのがうまいのよ!」
「そうか?こんなもんだろ?」
ブリミルたちといたころは結構、馬を使っての移動もこなしたサイトである。
ましてヴィンダールブ直々の指導、そりゃうまくもなるってものだ。
馬を預けたサイトたちは街一番の大通りといわれるブルドンネ街を歩いていた。
キョロキョロとあたりを見渡すサイトをルイズが注意する。
「止めなさいよ、何処の田舎ものかと思われるじゃない!」
「すごいな!まるっきり中世の町並みだぜ!道は狭いけど活気があるじゃないか!」
「道が狭い?ここは大通りよ?狭いわけないじゃない!」
「そうなんか?そうか~、やっぱ現代の道路は発達してるんだな~」
ルイズにとってはわけがわからないことをのたまうサイトをルイズは変な目で見ている。
それを感じ取りながらもサイトは当たりに気を配っていた。
そのルイズに男がぶつかりそうになる。
その寸前でサイトが男を蹴倒した。
「何しやがる!」
息をまく男が懐に手を入れる。
そして、何かを探す仕草をする男はサイトを見やって驚愕した。
サイトはいつの間にやら一本の杖を手でもてあそんでいた。
男がそれに気づいたのを知るとニヤリと笑ってヒョイっと男の足元に投げつける。
その杖が地面に末尾までめり込むのを見て、男は顔を青くして逃げ出した。
ルイズはそれを見て目を白黒させている。
「な、な、一体なんなのよ?」
「スリだろ?メイジだったみたいだけど……ああいうのも貴族なんか?」
それにルイズが激昂した。
「馬鹿言わないでよ、あんな奴貴族の風上にも置けないわ!魔法を盗みの道具にするなんて、なんてこと!あんな奴が魔法を使えるなんて!」
そう言って歯噛みするルイズは本当に悔しそうだった。
「もう、サイト!他にはあんな奴がいないでしょうね?今度見つけたらタダじゃおかないわ!」
ルイズがタダじゃおかないって、エクスプロージョンを使う気だろうか?
それこそタダではすまないだろう。
意識的に使えばあれは十分強力な魔法なのだ。
「まぁ、俺たちを監視する目はあるけどな」
そういうサイトにルイズは目を丸くした。
「私たちを監視?一体どういうこと?」
どういうことといわれても、学園を出て少ししてぐらいからサイトたちは監視されていた。
知り合いのものだし、害はないからほっておいただけだ。
「そんなもの、知らんがな」
「埒が明かないわね、そいつらを私の前に連れてきなさい!私がじきじきに理由を詰問するわ!」
そんな大した事でもなかろうに?
あの二人をルイズの元に連れてくるよりよっぽど……
「お前を運んだほうが楽だよな……」
そう言ってサイトはルイズを抱えて空へと舞い上がった。
50メートルは離れて監視していたキュルケと青髪の子の背後に着地する。
ルイズはあまりの事に自分に何が起こったかさっぱりわかっていなかった。
キュルケにしても青髪の子にしても突然監視対象が消えて困惑したろうが、青髪の子は素早く後ろに振り向いていた。
やはりこの青髪の子はなかなかに戦闘経験が豊富そうだ。
サイトが視界から消えるや否や、自身の周りに風の結界を張り巡らせサイトが動いた際の風の動きからサイトの位置を割り出していた。
その凍てついた瞳がサイトに姿を捉える。
そして、キュルケの気を引くように彼女はキュルケの服を引っ張った。
キュルケが振り向く。
それにサイトは「よぉ!」と手をあげて挨拶した。
そしてキュルケが「ダ~~リン、私を置いていくなんてひどいじゃない!」とサイトに抱きつき、それに対して鼻の下を伸ばすサイトにルイズが爆発し、今はキュルケとルイズが喧々諤々のケンカをしながら歩いているその後ろをサイトは青髪の子と並んで歩いていた。
キュルケの紹介によるとこの子はタバサというらしい。
寡黙な子である。
この子とキュルケは不断などんな会話をしてるのだろうか?
想像が付かなかった。
「あのよう?えぇ~と、タバサって呼んで良いか?」
「いい」
これはまた簡潔なお答えで……
ここまではっきりとやられるとこれも個性なのかと思えるから不思議だ。
「う~~ん、ルイズに聞いたんだけどキュルケが18でルイズが16だって言ってたんだけど、あの学校に通ってる生徒はみんな歳はバラバラなのか?」
「そう、私は15。まだ成長途中」
今ちょっと自己主張したよな?
そうか胸が小さい事を気にしてたのか。
ならばあのコントラクト・サーヴァントのときや、決闘のときの彼女の行動にも納得がいく。
しかし、15か?もっと小さく見えるが一応、まだ将来の目はあるのかもしれん。
あれでルイズもこれから巨乳へと成長する可能性もほんのちょっとだけでもあるのかもしれない。
というよりそう思わないとルイズの使い魔なんてやってられない。
「そうか、育つといいな!」
「いい」
そう言ってタバサはうなづいた。
そうだ、彼女にはまだルイズと比べ一年の時間が残されているのだ。
今後の彼女の成長に期待しよう!
まぁ、正直ルイズにしろタバサにしろ期待は薄いのだが。
大きく育てよ、そう思いタバサの胸をみるが、かなりに平原だった。
これがキュルケ並みになるものか?
絶望的だろう?そう思うサイトはハァ~とため息をついた。
そのサイトの頭にゴンと何かがぶつかる。
なんだとみるとタバサの杖がサイトの頭にぶつかったようだった。
タバサはサイトではないほうを見ており、たまたまサイトの頭にぶつかったのかもしれない。
タバサはそちらをみるのに夢中なようでサイトに杖があったのを気づいていない。
まぁ、仕方がないかと思うサイトだった。
その武器屋は裏通りの奥まった場所にあった。
剣のマークの看板に、おぉRPGみたいだという感想を抱くサイトである。
店内には所狭しと剣や槍が並んでいる。
カウンターの奥には太った親父がサイトたちを卑屈な笑みで出迎えていた。
「これは、これは貴族のお嬢様方!うちに何の用で?家は真っ当な商売をしてまさあ。 お上に目をつけられるような真似はこれっぽっちもしてませんぜ!」
何の用って武器屋で武器を買わないで何をするというのか?
それに何も聞く前からそういうのは何かやましい事がある証拠ではなかろうか?
そう思うサイトだったが、そんなことは関係ないとばかりにルイズが前に出た。
「客よ!剣を見せてちょうだい!」
ルイズと親父がなにやら話を始めた。
親父は貴族が剣を買うのに驚き、貴族に人気の剣だなどと細ッこい剣をルイズに勧める。
それをルイズはもっと大きい剣がいいなどといいつき返し。
それに親父が苦い顔をして奥に入っていく。
そして新しい剣を持ってきてその剣の説明を始めた。
そしてその剣がキュルケの出身地ゲルマニアのものだと知るとキュルケもいい剣ねと言い出し、その剣を買おうする。
それをルイズが私がサイトに買うのよと言い。
それにキュルケが私がダーリンにプレゼントするのよと言い返す。
その二人の間で火花が散るようだった。
それをタバサが無表情で眺めている。
とうよりお前ら当人をほったらかして、勝手に決めるっていうのはどうなのよ?
別にガンダールブの力ならどんな武器だってそれなりに扱えるのだが、どうせならサイトも自分が納得するものが欲しかった。
それにルイズは買ってくれるというが、今の借金をしている状態でそんな高いものを買ってもらうのも気が引ける。
ゆえにサイトは自分で武器を選ぼうとキュルケとルイズがつかみ合いの喧嘩を始めそうなのを無視して店内を物色していた。
そのサイトの目に一本の剣が映った。
みづぼらしい、錆び錆びの大剣である。
しかし、その剣の何かがサイトの記憶を刺激した。
思わず手にとって掲げてみる。
その剣から声がした。
「おでれ~~~た、おめ、使い手か?」
驚いたのはサイトのほうである。
その声は忘れもしない。
サイトの友人であり、サイトの母親であるサーシャの相棒の声だったのだから!
「もしかして、デルフか?」
サイトの誰何する声に剣は沈黙して応えた。
「どうして俺の名前を知ってる?それに何か聞き覚えがある声だな……誰だ?おめ?」
こうしてサイトは懐かしき喧嘩友達と再会したのである。
テーマ : 自作小説(二次創作)
ジャンル : 小説・文学