GS_LUV 第三話 過去
第三話 過去
「がぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁっぁ」
自分の魂が焼き尽くされたような悲鳴に、自分で驚いて目が覚めた。
視界にはなぜか懐かしいと思える、天井。
爆発するような心臓の鼓動を落ち着けようと、セルフコントロールを急ぐ。
治まっていく鼓動が、体がいつもどうりである事を予測させた。
「がぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁっぁ」
自分の魂が焼き尽くされたような悲鳴に、自分で驚いて目が覚めた。
視界にはなぜか懐かしいと思える、天井。
爆発するような心臓の鼓動を落ち着けようと、セルフコントロールを急ぐ。
治まっていく鼓動が、体がいつもどうりである事を予測させた。
慣れ親しんだベットから体を起こし、自分の状態をゆっくりと確認する。
「慣れ親しんだ」とか「懐かしい」という感情が、ひどく違和感があった。
体にはどこも支障はない。
ここでも違和感。
支障がないはずないのにという思いが湧く。
装備は、これまたなぜか懐かしい訓練時代の制服のみ。
そういえばこれはもとの世界では学生服だったなと思う。
おかしな状況だ、そう感じた。
現状を認識してみる。
自分の名前は?
白銀武。
階級は?
国連軍の中尉。
何の任務に……、そう考えて電撃的に最後の光景が思い浮かんだ。
オリジナルハイブ侵入。
無尽蔵にわくベータ。
次々と倒れる仲間たち。
そして、フラッシュバックする旧207小隊の仲間たちの死。
ベータと一人殺しあう自分。
生身で特攻する自分。
そして、ベータの前腕で体をすりつぶされる、自分。
「ぐぅ、ぅぅ。」
その生々しい死の感触に、吐き気を覚えた。
ゴキィという頭蓋が壊れる音が、グチャという眼球が、脳が、すりつぶされる音が、ブチャという自分の体が蟻のように潰された死の音が、今もこの耳に生々しく残っている。
死んだ。
完膚なきまでに死んだ。
自分は死んだはずなのだ。
手が、足が、顔が、体が、内臓が、心臓が、脳がすべてグチャリとつぶされた感触がいまだに残っている。
「なんなんだ、なんなんだよ一体。」
自分は死んだはずなのだ、体に残る死の感触は、生きているという現実より、ひどくはっきりしている。
どうして死んでいないんだ。
その理不尽さにいらだった。
生きているという僥倖よりも、死んでいないという不自然さが気持ち悪い。
そして、末期的な衛士が陥る職業病の影が、タケルの心にも差し込んでいたのをタケルは認めないわけにはいかなかった。
いくら、その心に決意を纏おうと、いくらBETAに憎悪を燃やそうと、人の心は究極的なまでに脆い。
次々と仲間を失い、毎日のように戦場に出て、それでも生き残るような衛士は、卓絶した操縦技術を身につけ、殺し続けるという狂気にさらされる。
卓絶した技術によりエレメントを組めなくなり、狂気は自身の人間性の喪失を自覚させる。
それは孤独につながる。
そして、孤独は人の心を犯すのだ。
死ねばみなに会えるかもしれないのにという、希望にもなっていない、希望にすがりたくなる。
もう休んでしまいたい。
死ねば楽かもしれない、死んで楽になりたい。
死の幻影は、間違いなくタケルの心に射し込んでいた。
最愛の女性とは、生きている限り二度と会えず。
親しいものたちはみな死んだ。
来る日も来る日もベータを殺し続け。
それだけを目的に生きる。
生きざるをえない。
人類の状況がそれを強制する。
状況は悪くなる一方で、希望など微塵もない。
衰退する人類の黄昏、そんな地獄に生きるのは辛いのだ。
そこから抜け出すには死しかない。
それはきっとあの最終作戦に残った衛士の多くの心にはびこった呪いがごとき思いだった。
それでもかすかな希望にかけて、心の中にある呪いに精一杯抗いながら、あの作戦に望んで、皆死んでいった。
自分はどうして生きているのだろう?
その思いはどうしたって拭い去れない。
あの状況から、作戦が成功するなんてことはありえない。
人類のすべてをかけたあの作戦、それが失敗したなら、人類の明日などなおさら望むべくもなく、これからなお辛い日々が待っている。
人類の敗北、それはもう決定した。
愛する人と会う事が出来る可能性も、完全に絶たれた。
死ねればどんなに楽だっただろうか?
そう感じるタケルがいた。
しばらく放心していたタケルだったが、いつまでもこうしていても仕方がないと思い直した。
いまはまだ警報はなっていないが、すぐにでもまたBETAが攻めてくるはずだ。
五体満足であるのなら、迎撃に出なければならない。
たとえそれが無駄な足掻きであろうと、衛士は生ある限り死力を尽くして戦わなければならない。
そんな衛士のあり方を教えてくれたのは誰だっただろうか?
それはタケルの中に、いつからか刻まれた衛士としてのあり方だった。
-死力を尽くして任務に当たれ-
-生ある限り最善を尽くせ-
-決して犬死にするな-
その生き方に従うのなら、この地獄でもうしばらく生き足掻かなければならないのだろう。
それに例えこの身が死を望む呪いに犯されようと、その呪いを焼き尽くすそうとする、地獄の業火のごときBETAへの憎悪はいまだタケルの中に燃え盛っている。
そう思い直せばタケルの復活は早かった。
あの状況でどうやって救出されたのか知らないが、自分は生きている。
おまけにつぶされたはずの体は五体満足だ。
これならいかようにも戦うことは出来る。
すぐにでも戦術機を駆って戦場に飛び出さねばなるまい。
自分に使わせてもらえる戦術機はあるかななどと考え、周りを見回して愕然とした。
「何だここは?」
目の前には勉強机らしき机。
それもまた見覚えがあった。
いつか自分はその机で、ぶつくさいいながら勉強していたのではなかったか?
目を落とせば、雑誌がぶちまけられた床。
少年○ャンプというそれはタケルが愛読していたものではなかったか?
テレビの前にはゲーム機がつなげられており、扉には見覚えがあるポスターが貼られている。
「バルジャーノン。」
尊と対戦は勝ち越していただろうか?
懐かしいと思いが溢れかえった。
不意に視界が曇り、あわてて手をやると、なぜかぬれている。
いつの間にかタケルは涙をこぼしていた。
「帰ってきた?」
呆然と言葉が漏れる。
そこは懐かしい自分の部屋だった。
長い間考えることもなくなっていた郷愁の思いがこみ上げる。
まだ白銀タケルが戦いなど知らなかった頃に住んでいた、本来のタケルがいるべき場所。
そこに帰ってきたのか?
喜ぶべきことなのだろうか?
タケルは自分の感情をもてあましていた。
帰ってきたと言ったが、本当のところはどうなのだろう?
実際は夢を見ていただけなのかもしれない。
タケルの知る歴史とは違う道筋を歩んだ日本。
唐突に出現した異種生命体の地球侵略。
衰退する人類。
地球という母なる星から逃げ出す人類。
そして破滅する地球。
ゲームのような世界観。
夢だった、妄想だったといわれたほうが納得できる。
だが、それは唐突に恐怖をタケルにもたらした。
あのすべてがなかったことだと?
こんなに今も胸が痛いのに。
あんなに絶望を感じたのに。
こんなに今も冥夜を愛しているのに。
それがすべて夢だった?
夢であったほうがいい、あんな絶望的な終わりの世界は夢であったほうがいい。
けれど今のタケルの世界はあの世界だった。
仲間と出会い。
戦うすべを得て。
愛する人ができ。
その愛する人や仲間たちを守るために戦った。
結果は無残だったが、タケルにとっての人生はあの世界に確かにあったのだ。
タケルは闇雲な感情に突き動かされて、部屋を飛び出した。
「くそ、クソ、クソ、ふざけんな。」
階段を飛ぶようにして飛び降りる。
遠い記憶にあるように玄関のドアをぶつかるようにして、抉じ開けた。
そして、広がった景色に唖然とした。
広がる荒涼とした荒地。
瓦礫の山とむき出しのコンクリート。
そして、スミカの家に突っ込む戦術機。
タケルの家が無事だったのが奇跡のようなその光景。
それはベータがいる世界の光景と酷似していた。
しかし、それはありえない光景でもあった。
「ウソだろ?」
思わずそうこぼしていた。
横浜基地の至近にあるこのタケルの家の付近はベータにより、すでに占領され更地になっているはずの場所だった。
それがまだ残っている。
そのことから答えを導き出そうとして、タケルは馬鹿みたいなおそらくは事実であろうことに思い当たった。
「過去なのか?」
再びタケルは戻ってきたのだ。
NEXT TURN GS side タマモ
「慣れ親しんだ」とか「懐かしい」という感情が、ひどく違和感があった。
体にはどこも支障はない。
ここでも違和感。
支障がないはずないのにという思いが湧く。
装備は、これまたなぜか懐かしい訓練時代の制服のみ。
そういえばこれはもとの世界では学生服だったなと思う。
おかしな状況だ、そう感じた。
現状を認識してみる。
自分の名前は?
白銀武。
階級は?
国連軍の中尉。
何の任務に……、そう考えて電撃的に最後の光景が思い浮かんだ。
オリジナルハイブ侵入。
無尽蔵にわくベータ。
次々と倒れる仲間たち。
そして、フラッシュバックする旧207小隊の仲間たちの死。
ベータと一人殺しあう自分。
生身で特攻する自分。
そして、ベータの前腕で体をすりつぶされる、自分。
「ぐぅ、ぅぅ。」
その生々しい死の感触に、吐き気を覚えた。
ゴキィという頭蓋が壊れる音が、グチャという眼球が、脳が、すりつぶされる音が、ブチャという自分の体が蟻のように潰された死の音が、今もこの耳に生々しく残っている。
死んだ。
完膚なきまでに死んだ。
自分は死んだはずなのだ。
手が、足が、顔が、体が、内臓が、心臓が、脳がすべてグチャリとつぶされた感触がいまだに残っている。
「なんなんだ、なんなんだよ一体。」
自分は死んだはずなのだ、体に残る死の感触は、生きているという現実より、ひどくはっきりしている。
どうして死んでいないんだ。
その理不尽さにいらだった。
生きているという僥倖よりも、死んでいないという不自然さが気持ち悪い。
そして、末期的な衛士が陥る職業病の影が、タケルの心にも差し込んでいたのをタケルは認めないわけにはいかなかった。
いくら、その心に決意を纏おうと、いくらBETAに憎悪を燃やそうと、人の心は究極的なまでに脆い。
次々と仲間を失い、毎日のように戦場に出て、それでも生き残るような衛士は、卓絶した操縦技術を身につけ、殺し続けるという狂気にさらされる。
卓絶した技術によりエレメントを組めなくなり、狂気は自身の人間性の喪失を自覚させる。
それは孤独につながる。
そして、孤独は人の心を犯すのだ。
死ねばみなに会えるかもしれないのにという、希望にもなっていない、希望にすがりたくなる。
もう休んでしまいたい。
死ねば楽かもしれない、死んで楽になりたい。
死の幻影は、間違いなくタケルの心に射し込んでいた。
最愛の女性とは、生きている限り二度と会えず。
親しいものたちはみな死んだ。
来る日も来る日もベータを殺し続け。
それだけを目的に生きる。
生きざるをえない。
人類の状況がそれを強制する。
状況は悪くなる一方で、希望など微塵もない。
衰退する人類の黄昏、そんな地獄に生きるのは辛いのだ。
そこから抜け出すには死しかない。
それはきっとあの最終作戦に残った衛士の多くの心にはびこった呪いがごとき思いだった。
それでもかすかな希望にかけて、心の中にある呪いに精一杯抗いながら、あの作戦に望んで、皆死んでいった。
自分はどうして生きているのだろう?
その思いはどうしたって拭い去れない。
あの状況から、作戦が成功するなんてことはありえない。
人類のすべてをかけたあの作戦、それが失敗したなら、人類の明日などなおさら望むべくもなく、これからなお辛い日々が待っている。
人類の敗北、それはもう決定した。
愛する人と会う事が出来る可能性も、完全に絶たれた。
死ねればどんなに楽だっただろうか?
そう感じるタケルがいた。
しばらく放心していたタケルだったが、いつまでもこうしていても仕方がないと思い直した。
いまはまだ警報はなっていないが、すぐにでもまたBETAが攻めてくるはずだ。
五体満足であるのなら、迎撃に出なければならない。
たとえそれが無駄な足掻きであろうと、衛士は生ある限り死力を尽くして戦わなければならない。
そんな衛士のあり方を教えてくれたのは誰だっただろうか?
それはタケルの中に、いつからか刻まれた衛士としてのあり方だった。
-死力を尽くして任務に当たれ-
-生ある限り最善を尽くせ-
-決して犬死にするな-
その生き方に従うのなら、この地獄でもうしばらく生き足掻かなければならないのだろう。
それに例えこの身が死を望む呪いに犯されようと、その呪いを焼き尽くすそうとする、地獄の業火のごときBETAへの憎悪はいまだタケルの中に燃え盛っている。
そう思い直せばタケルの復活は早かった。
あの状況でどうやって救出されたのか知らないが、自分は生きている。
おまけにつぶされたはずの体は五体満足だ。
これならいかようにも戦うことは出来る。
すぐにでも戦術機を駆って戦場に飛び出さねばなるまい。
自分に使わせてもらえる戦術機はあるかななどと考え、周りを見回して愕然とした。
「何だここは?」
目の前には勉強机らしき机。
それもまた見覚えがあった。
いつか自分はその机で、ぶつくさいいながら勉強していたのではなかったか?
目を落とせば、雑誌がぶちまけられた床。
少年○ャンプというそれはタケルが愛読していたものではなかったか?
テレビの前にはゲーム機がつなげられており、扉には見覚えがあるポスターが貼られている。
「バルジャーノン。」
尊と対戦は勝ち越していただろうか?
懐かしいと思いが溢れかえった。
不意に視界が曇り、あわてて手をやると、なぜかぬれている。
いつの間にかタケルは涙をこぼしていた。
「帰ってきた?」
呆然と言葉が漏れる。
そこは懐かしい自分の部屋だった。
長い間考えることもなくなっていた郷愁の思いがこみ上げる。
まだ白銀タケルが戦いなど知らなかった頃に住んでいた、本来のタケルがいるべき場所。
そこに帰ってきたのか?
喜ぶべきことなのだろうか?
タケルは自分の感情をもてあましていた。
帰ってきたと言ったが、本当のところはどうなのだろう?
実際は夢を見ていただけなのかもしれない。
タケルの知る歴史とは違う道筋を歩んだ日本。
唐突に出現した異種生命体の地球侵略。
衰退する人類。
地球という母なる星から逃げ出す人類。
そして破滅する地球。
ゲームのような世界観。
夢だった、妄想だったといわれたほうが納得できる。
だが、それは唐突に恐怖をタケルにもたらした。
あのすべてがなかったことだと?
こんなに今も胸が痛いのに。
あんなに絶望を感じたのに。
こんなに今も冥夜を愛しているのに。
それがすべて夢だった?
夢であったほうがいい、あんな絶望的な終わりの世界は夢であったほうがいい。
けれど今のタケルの世界はあの世界だった。
仲間と出会い。
戦うすべを得て。
愛する人ができ。
その愛する人や仲間たちを守るために戦った。
結果は無残だったが、タケルにとっての人生はあの世界に確かにあったのだ。
タケルは闇雲な感情に突き動かされて、部屋を飛び出した。
「くそ、クソ、クソ、ふざけんな。」
階段を飛ぶようにして飛び降りる。
遠い記憶にあるように玄関のドアをぶつかるようにして、抉じ開けた。
そして、広がった景色に唖然とした。
広がる荒涼とした荒地。
瓦礫の山とむき出しのコンクリート。
そして、スミカの家に突っ込む戦術機。
タケルの家が無事だったのが奇跡のようなその光景。
それはベータがいる世界の光景と酷似していた。
しかし、それはありえない光景でもあった。
「ウソだろ?」
思わずそうこぼしていた。
横浜基地の至近にあるこのタケルの家の付近はベータにより、すでに占領され更地になっているはずの場所だった。
それがまだ残っている。
そのことから答えを導き出そうとして、タケルは馬鹿みたいなおそらくは事実であろうことに思い当たった。
「過去なのか?」
再びタケルは戻ってきたのだ。
NEXT TURN GS side タマモ
テーマ : 自作小説(二次創作)
ジャンル : 小説・文学