社説:日露首脳会談 「始め」の声はかかったが
毎日新聞 2012年06月20日 02時32分
つまり交渉再活性化という野田・プーチン合意は、かつてのプーチン時代の焼き直しにすぎない。プーチン氏の大統領復帰で領土問題が好転するのでは、という楽観論に立てない理由もそこにある。
だからといって、過度に悲観的になるべきでもないだろう。経済的軍事的に台頭する中国への対抗などもあって、ロシアは日本との関係強化に高い関心を示している。シベリア極東開発で日本の市場や技術に大きな期待を寄せていることは、今回の首脳会談でのプーチン発言からもうかがえた。ここ数年で日本やロシアを取り巻く戦略環境は大きく変化している。それを踏まえ安全保障や経済で日露関係を深化させていく中から、領土問題を前進させる柔軟なアプローチを見いだせるかもしれない。
そのためには、与野党を超えたオールジャパンの知恵を結集することがあってもいい。野田首相がプーチン氏と太いパイプを持つ森喜朗元首相を特使として派遣することを検討していると伝えられたが、官邸主導で明確な戦略に基づくものなら実行に移してみてはどうか。ただし、先のイラン訪問で二元外交を展開した鳩山元首相のような振る舞いを北方領土問題で許してはならないのは言うまでもない。