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『月刊マクロビオティック』4月号おすすめ記事

■桜沢如一の食養

 昨冬はインフルエンザが大流行した。国立感染症研究所に行ったとき、所員も8割方インフルエンザにかかったと聞き、全員ワクチンを打ったのでは? と尋ねると……インフルエンザB型が流行るとのことでB型ワクチンを打ったが、A型が流行ってしまった、ということで笑い話となった。


 私は一昨年の冬、ホテルで悪寒戦慄し、腰や関節も痛く、典型的なインフルエンザ症状であったが、一晩39度6分の熱を出
したら翌日は平熱に戻り、インフルエンザ症状も消え去っていた。
 今年も同じような体験をした。きっと発熱は漢方でいうように、病因を発散させる、西洋医学的にいえば、ウイルスの繁殖に対抗してインターフェロンが作られ、それが発熱を起こしてウイルスを退治した、ということだろう。自然に与えられている抵抗力が如何に大きなものであるか実感したのである。


 同じ石塚左玄の食養から出発していても、桜沢如一の食養と二木謙三の日本綜合医学会系の食養の大きく異なる点に食塩摂取の多寡がある。桜沢如一は塩をあらゆる機会に摂ることを勧めているが、二木の方はむしろ少なく、と言っている。桜沢がなぜ塩摂取を積極的に勧めることにしたか、という疑問は第2の魔法のメガネ「バイキンの国探検」を読んで氷解した。


 この本は、昭和18年無双原理研究所発行のA5版で、戦前の書物であるため、紙も茶色く変色している。日本CI協会会長の勝又靖彦氏が家に冊あったから……と先日お持ちいただいた本で、「万病絶対免疫法・英米ユダヤ細菌学批判」という副題がついている。登場人物であるお父さん(桜沢如一)とレオン、フジ子、忠一の3人の子どもが、無双原理魔法のメガネの真言で孫悟空一行のように微小になって細菌の世界を探検するという筋立てであるが、戦前のギムザ染色が考案されて細菌学がやっと確立してきた時期なのに、非常によく勉強して書かれていることに驚嘆する。中でも、細菌の病原性と宿主の抵抗性に関する洞察はきわめて正鵠を射ていて現在にも通じる。


 社会医学の登場という章では、細菌を次々に殺菌していけば感染症のない健康な社会ができるという西洋人の発想に対し、健康は買うことができるものであろうか? と疑問を呈している。むしろ「らい病の王様と乞食娘」の章で紹介しているインドの王様のように、どのような名医にかかっても治らなかったらい病が1カ月の断食と坐禅で治ったという話を紹介し、人間の自然治癒力を高める方が合理的と断言しているのである。


 人間は100兆箇を超す腸内細菌と共生している。その中には病原性を持つものもいるが、細菌同志で適当に棲み分けて共生している。皮膚にも常在菌がいて健康な皮膚環境を作っているし、膣や口内にも相当数の細菌が住みついているのである。これらを一掃すれば健康体になれる、という発想自体が妄想であることは明らかだ。私たちは細菌をも含めて「共生」というこ
とを考えねばならない。その上で危険な細菌感染を避けるという発想が大事と思う。

■いのちの根本

 私は子宮頸がんワクチンを女子中学生全員にするという政策にも賛成できない。このワクチンは子宮頸がんを起こすとみなされるヒトパピローマ感染を予防するというワクチンだが、日本人でヒトパピローマ感染を抑えたらそれが子宮がんを低下させる、という疫学的証拠がない。米国では若いときからフリーセックスで感染機会が増えるために効果がでたかも知れないが、日本のようにまだそこまでは行っていない国では不要ではないか。不特定多数との不純性交が日常化していない国では感染リスクは低い。また、発がんウイルスは西日本に多く、全国均一に子宮頸がんが起きている訳ではない。それなのに、沖縄から北海道まで女子学生に一律に8万円もかかるワクチンを打とうというのはワクチン業界・婦人科医が結託した医療村の陰謀ではないだろうか。

 最後の章で述べられる万病の絶対免疫法は宇宙の森羅万象の秩序に従って生きること、つまり無双原理の世界観をもって生きることだ! と言いきっている。食生活は「いのち」の第一根本原理であるから、これを侵すとあらゆる生命現象―健康、力、美、強弱思想、行動、事業、盛衰などあらゆる生理的現象と心理的現象に秩序が失われ、無秩序な状態が現れ、それが病気になる元なのだ。食生活の秩序とは、まず正しい食物を選ぶこと、第二に正しい調理、第三が頂き方(よく噛むこと)としている。この3つは先端的機能栄養学、統合医療学の立場からみても正しいことが証明されてきている。


 私は目下「統合医療大学院大学」設立に向けて努力しているが、統合医療を包み込むものに「統合食養学」が必要と実感している。桜沢が塩を勧めたのは細菌感染症を意識した食生活であり、二木が低塩食を勧めたのは自分が腎臓を患っていたからであろう。石塚左玄も腎不全であったために、塩は勧めていない。やはり病態にあわせての食事法が実行されねばかえって害をなすことになる。


 統合医療大学院大学では体験を重視しようと思っている。夏に計画する2週間のスクーリングは、スクーリングというよりはむしろ体育会の合宿で、朝6時から夜の9時までぎっしりとスケジュールが詰まっている。

 アーユルヴェーダ、ヨーガ、鍼灸、操体、気功、マクロビオテイックなど実際に気の流れが体内にあり、食がそれを支えている、ということを実感してもらうところからスタートしないと、本当の統合医療に取り組めないと思うからである。私たちはアーユルヴェーダにはあまり馴染みがないが、色々研究すると、心を正しい形に治すのに有効かもしれない、と思い始めた。夏の合宿には断食療法を取り入れる予定であるが、アーユルヴェーダのインド式断食と日本式の断食のどちらが日本人に適しているのかと思い、両方体験してみることにした。
(次号につづく)
 

渡辺昌/わたなべ・しょう
慶應義塾大学医学部卒業。大学院で病理学を専攻し、米国
国立癌研究所、国立がんセンター研究所を経て、1985年より同研究所疫学部長。がんの疫学研究、分子疫学の新分野を開く。96年より東京農業大学にて「環境・食糧・健康」を一体化させた
新しい研究に取り組む。 2005年より(独)国立健康・栄養研究所理事長。最近の著書に『食事でがんは予防できる』光文社、『糖尿病は薬なしで治せる』角川書店、『薬なし、食事と運動で糖尿病を治す』講談社、『病気予防百科』医療企画など。


※この記事は「月刊マクロビオティック」で連載しています。

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