原発運転再開 安全上の課題は6月16日 15時49分
大飯原発の運転再開を巡って、政府は、ことし4月に示した新たな安全基準に基づいて「安全性を確認できた」と判断しました。
大飯原発では、大津波に備える対策が取られましたが、福島第一原発の事故を踏まえた長期間かかる原発の安全対策は先送りされているほか、住民の避難計画といった重要な防災対策はまだ道半ばです。
政府の「安全の確認」とは
政府は4月の関係閣僚会議で決定した新たな3つの安全基準で、大飯原発の安全性を確認しました。
新たな安全基準に盛り込まれたのは、地震や津波によってすべての電源が失われても、その後の事故の拡大を防ぐ対策が取られていること、その対策を「ストレステスト」の1次評価で国が確認していること、そして実施までに長期間かかる対策について、電力会社が今後の実施計画を示すこと、となっています。
新たな安全基準を大飯原発でみますと、基準の1つ目は、事故直後の去年3月から全国の原発で実施された「緊急安全対策」などによって達成されたと評価されました。また基準の2つ目は、関西電力が実施した「ストレステスト」の結果について、国の原子力安全・保安院と原子力安全委員会が、ことし3月までに確認を終えています。基準の3つ目は、関西電力が政府に、実施までに長期間かかる対策について実施計画を提出し了承されました。
これによって大飯原発では、メルトダウンのような深刻な事故が起きたあとを想定した、長期間かかる安全対策については先送りを認めることになりました。
例えば、福島第一原発の事故で対策の拠点となった、「免震重要棟」のような施設は、平成27年度までに設置されるほか、放射性物質が放出する深刻な事故に備えて、フィルターのついたベントの設備も27年度までに設置する予定になっています。
さらに津波から守る防波堤をかさ上げする工事は、来年度中になるとしています。
「2次評価」は実施されず
福島第一原発の事故を踏まえた安全対策は、ほかにも課題が残されています。
メルトダウンが起きたあとの原発の安全対策を評価する「ストレステスト」の「2次評価」については、電力会社が去年12月の期限を過ぎても結果を提出していません。
電力各社は、「作業量が多いため遅れている」などと説明していますが、国も、事実上、提出の遅れを黙認している状態です。
これに対して、国の原子力安全委員会は「1次評価だけでは原発の安全評価としては不十分だ」と批判し、早期に2次評価を実施するよう繰り返し求めていますが、大飯原発について実施の見通しは立っていません。
防災対策は道半ば
また原発の外でも、被害が広範囲に及ぶ深刻な事故を想定した住民の避難計画といった重要な防災対策はまだ道半ばです。
福島第一原発の事故を受けて、国は、原子力事故への防災対策を重点的に整備する範囲を、これまでの原発の半径およそ10キロから30キロに拡大する方針を示しています。
このため、防災対策が求められる市町村は、これまでの3倍の130余りに増えて、原子力事故への備えがなかった自治体でも地域防災計画を新たに作らなければなりません。
しかし、地域防災計画のもとになる国の原発事故の防災指針は、いまだに具体的な内容が決まっていません。
国は新たに、住民を避難させる際の判断基準や、避難を支援する国と自治体との役割分担、そして、オフサイトセンターの態勢や設置場所などを示す予定です。
このため自治体からは、国が自治体との調整を進め、早急に具体的な仕組みを作るべきだとして不満の声が上がっています。
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