3) K先生が行おうとした整復−成功しなかった理由
K先生は、手狭な高等学校の教官室で、しかもA君を椅坐位のままで整復を行おうとしました。
整復ができなかった理由には、いくつかの要素が折り重なったことが考えられそうです。
1つは、A君を椅子に座らせたまま整復を行おうとしたことでしょうか。
椅坐位でも整復を行うことは可能ですが、そうするためには患肢の固定(対向牽引)が十分でなければなりません。
患肢の固定を行ったのは、A君の同級生です。
ですから、対向牽引はもとより、患肢の固定も不十分であったことが考えられます。
その上、A君が腰かけた椅子は、キャスターつきでした。
これでは、患肢の固定はさらに難しくなりそうです。
ですから、A君の整復を行おうとするのであれば、机の上であれ、床の上であれ、とにかく背臥位をとらせるのが良かったかも知れません。
教官室で背臥位を取るのが無理ならば、A君をいったん教官室から出して、屋外であっても広い場所を確保するのが良かったかも知れません。
背臥位なら、キャスターつきの椅子のように、K先生の牽引と一緒に動いてくることもないでしょう。
また、A君の同級生にしても、患肢の固定を行いやすかったかも知れません。
整復に際して、前腕骨近位端部を上腕長軸末梢方向に、前腕骨遠位端部を前腕長軸末梢方向に牽引したのは間違いではありません。
前腕両骨後方脱臼では、受傷時のほか、整復操作においてさえ、注意しなければ尺骨鉤状突起の骨折を合併することがあります。
整復時の鉤状突起骨折の合併を予防するためにも、弾発性固定されている肢位のまま、前腕を末梢方向に牽引するのは危険です。
前腕長軸末梢方向に牽引する前に、前腕骨近位端部を上腕長軸末梢方向に牽引することが必要です。
A君の脱臼は、受傷時において尺骨鉤状突起骨折を合併していたようです。
この骨折を合併したものの全てが、徒手整復を難しくするわけではありません。
とはいえ、この骨折を合併した場合は、前腕骨近位端部の上腕長軸方向への末梢牽引が不足していたり、整復操作によっては骨片が関節腔内に嵌入してくる可能性があります。
それだけに、前腕両骨後方脱臼(肘関節脱臼)の整復は、肩関節脱臼や顎関節脱臼などの整復に比較すると、ずいぶんと知識や技術が要求されるといっても過言ではないでしょう。
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1つは、A君を椅子に座らせたまま整復を行おうとしたことでしょうか。
椅坐位でも整復を行うことは可能ですが、そうするためには患肢の固定(対向牽引)が十分でなければなりません。
患肢の固定を行ったのは、A君の同級生です。
ですから、対向牽引はもとより、患肢の固定も不十分であったことが考えられます。
その上、A君が腰かけた椅子は、キャスターつきでした。
これでは、患肢の固定はさらに難しくなりそうです。
ですから、A君の整復を行おうとするのであれば、机の上であれ、床の上であれ、とにかく背臥位をとらせるのが良かったかも知れません。
教官室で背臥位を取るのが無理ならば、A君をいったん教官室から出して、屋外であっても広い場所を確保するのが良かったかも知れません。
背臥位なら、キャスターつきの椅子のように、K先生の牽引と一緒に動いてくることもないでしょう。
また、A君の同級生にしても、患肢の固定を行いやすかったかも知れません。
整復に際して、前腕骨近位端部を上腕長軸末梢方向に、前腕骨遠位端部を前腕長軸末梢方向に牽引したのは間違いではありません。
前腕両骨後方脱臼では、受傷時のほか、整復操作においてさえ、注意しなければ尺骨鉤状突起の骨折を合併することがあります。
整復時の鉤状突起骨折の合併を予防するためにも、弾発性固定されている肢位のまま、前腕を末梢方向に牽引するのは危険です。
前腕長軸末梢方向に牽引する前に、前腕骨近位端部を上腕長軸末梢方向に牽引することが必要です。
A君の脱臼は、受傷時において尺骨鉤状突起骨折を合併していたようです。
この骨折を合併したものの全てが、徒手整復を難しくするわけではありません。
とはいえ、この骨折を合併した場合は、前腕骨近位端部の上腕長軸方向への末梢牽引が不足していたり、整復操作によっては骨片が関節腔内に嵌入してくる可能性があります。
それだけに、前腕両骨後方脱臼(肘関節脱臼)の整復は、肩関節脱臼や顎関節脱臼などの整復に比較すると、ずいぶんと知識や技術が要求されるといっても過言ではないでしょう。
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