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「自然交響楽団」 塚田猛さん2011年12月12日
越前市の農業団体「自然交響楽団」が福島県内で、福島第一原発からの放射線が降り注ぐ農地の土壌改良に挑む。「汚染された田畑を土着菌を使って減らすことはできないか」。事務局長の塚田猛さん(60)のアイデアが活動の柱になっている。 茨城県下妻市の畜産農家に生まれ、18歳で農協に就職。メーカー勤務やリサイクル業を経て1988年、有機野菜の宅配会社「らでぃっしゅぼーや」の設立に参加した。 事業は共働きの家庭などに支持され、首都圏を中心に会員を増やした。だが、運営を巡る対立から会社を去った。その後、農業塾を主宰したり、環境関連の財団に勤めたりした。 昨年春に鯖江市に移り住んだ。その年は地元の農家とともに、土の中から採取した細菌を培養して作る発酵肥料を30トン用意した。 「田は沼に学べ。畑は森に学べ」と、畜産農家だった祖父から何度も聞かされてきた。沼にはアシが自生し育つ。枯れたアシは沼の肥やしとなる。自然は巡り巡る。森もそうだ――。この年になって祖父の言葉の意味が分かってきた。 「循環こそ農の基本」と強く感じ、今年は肥料を500トンに増やし、100ヘクタールの農地で循環農業に取り組む予定だった。しかし、3月11日の東日本大震災が心境を一変させた。福島で汚染された農地の復元に挑戦しようと考え、11月末までに土着菌を増殖させた土を散布し、放射線低減の試験を始めている。 放射性物質を別の場所に移すことで線量を減らすことは可能だが、物質そのものを消滅させることは科学的に不可能とされる。「無理と分かっていても、土の力を信じたい」。来年1月からは福島県二本松市に移住し、本格的に土壌改良に取り組む。(足立耕作)
マイタウン福井
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