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ストックが尽きたので更新が遅れました。さらに春期講習がまた始まったので余計に遅れます。
 ではどうぞ
第13話 二人の妹
 二時間目から授業に参加していたんですけど織斑さんの様子をずっと見ていたら笑いそうになりましたよ、どんどん萎びていったんで……。
 三時間目が始まってからも基本がわかっていないのか教科書と睨み合いを続けていた。 本当に補習しないといけないようですね…。授業は担任の織斑先生ではなく副担任の山田先生がしている。織斑先生そこに立っているだけで威圧感半端ないですよ……。
「というわけで、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアーで包んでいます。また、生体機能も補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へ保ちます。これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィンなどがあげられ___」

「先生、それって大丈夫なんですか? なんか、体の中をいじられてるみたいでちょっと怖いんですけど……」
 僕は初めて展開した時にも違和感、別に感じなかったんですけどね。これって特殊なんですかね?
「神田、こう言ってるんだがどう思うか、意見してみろ」

「はい……そこまで深く考えなくてもいいと思います。んー、メガネみたいなものだと考えればいいんじゃないでしょうか。もちろん自分に合っていない物では駄目ですがきちんとしていればサポートは行いますが悪影響を及ぼすことはないですから。こんなことを言ってますが僕は乗ったことがありませんのであくまで情報を客観的にまとめただけですが……」
 まあこんな感じでいいですかね。
「山田先生の意見は?」

「私も神田くんの意見と基本的には同意見ですね」

「だ、そうだ。山田先生、授業の続きを」

「はい、それともう一つ大事なことは、ISにも意識に似たようなものがあり、お互いの対話___つまり一緒に過ごした時間で分かり合うというか、ええと、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします。なので操縦時間が多ければ多いほど実力が高くなります。ですのでISと相互的に理解することにより、より性能を引き出せることになります。ISは道具ではなく、パートナーとして認識してください」
 この話にすぐに反応して何人か挙手をした。
「先生ー、それって彼氏彼女のような感じですかー?」

「そっ、それは、その……どうでしょう。私には経験がないのでわかりませんが……」
 山田先生、顔を赤らめながらこっちを見るのはやめてください。山田先生がそんな感じになるとクラス内の雰囲気が『女子高』みたいになってしまったじゃないですか…。まあ女子高の雰囲気知りませんが……。今のクラスだけじゃなく学園中の空気が甘いんですよね、空気も雰囲気も……。
「…………」

「あのー山田先生、授業の方が止まってるんですが……」

「あっ、は、はいっ。そうですね、すみません」
 キーンコーンカーンコーン
 あ、山田先生が授業を再開させようとしたらチャイムが鳴った。タイミングが良いのやら悪いのやら……。
「あっ……、次の時間は空中におけるIS基本制動をやりますね」
 ここIS学園の授業体系は実技と特別科目以外は基本担任が受け持っている。例外は織斑先生ぐらいなもので、休み時間の15分のためにいちいち職員室まで戻らないといけない。先生たちは、いろいろとご苦労様です。
 織斑先生と山田先生が教室から退室するとすぐに織斑さんのところにクラスの半数が周りを包囲して質問攻めをしている。そんな所を脇目に僕は篠ノ之さんのところに向かった。少しは囲まれたんですけどね……、あれこのセリフ前も行ったような?
「朝はどうも、篠ノ之さん?」
 振り向きざまにまるで刺すような視線で見るのは勘弁してほしいのですが……。
「ああ、神田か。私も聞きたいことがあるのだが構わないか?」
 まあ、大方束さんとの関係でしょうが。
「ええ、別にかまいませんが」

「では、率直に聞こう。なぜ私の姉を知っている。そしてあの人は今どこにいる」

「何故知っているといわれても、僕は織斑先生に紹介されただけですから。ああ、先に言っておきますが、織斑先生に問い詰めても無駄ですよ。たまたま連絡があったようですし。いや、たまたまではなくタイミングよく連絡したのかもしれません、僕とコンタクトするために。なので織斑先生も僕も彼女の居所は知りません。知っているのは連絡先だけですが、それはあなたも知っていることでしょう?」
 束さんは僕がISを使用したのを知って織斑先生と楯無さんのスケジュールから換算してシナリオ通りになるように連絡したのだろう。
「なら、もう一つ聞こう。姉さんはなぜ貴様に興味を持ったのだ、今までほとんどの人間に興味を持たなかった姉さんが」

「それを僕に聞かれても困りますが……、見てみたかったんじゃないでしょうか?僕が生きてきた人生を、人外のようなスペックを持つ人間を観察対象として」
 まあ、戯言なんですけどね。ISを動かすことが出来なかったら束さんは僕なんかには一片の興味を持たなかっただろう。
「まあ、そういうことにしておこう。それよりも朝のあのうさみm「パンッ!!」何をしたんだ一夏は?」
 へえ、人には名字で呼べとか言いながら織斑さんのことは名前で呼ぶんですね、素直じゃないな……。篠ノ之さん、睨むのやめてくれませんか、というか人の心を勝手に読まないでくれませんか?
「休み時間は終わりだ。散れ」
 織斑先生、まだ休み時間、数分残ってますがそんなに脅すとみんな逃げてk……いかずに喜ぶんでしたね、ここの生徒は。まあ、『お姉さま』ですし……、だから織斑先生もこっちを睨まないでくださいよ。みんな人の心を読み過ぎですよ、まったく……。
「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」

「へ?」

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

「???」
 ああー、束さん作成の白式ですか。あの近接オンリーな機体はあまり好きじゃないですね。近接戦闘、僕は織斑さんと違って苦手ですから。いや、正確には織斑さんには近接戦闘しかできない、の間違いでしたね。一般人なら普通ですが……。
それより織斑さん、言ってることを理解できていないのはさすがに無知だと思うのですが……。
「専用機!?一年のこの時期に!?」

「つまりそれって政府からの支援が出てるってことで……」

「ああ~。いいなぁ……。私も早く専用機欲しいなぁ」
 うん、これが普通の反応ですよね。このクラスの専用気持ちならこのクラスに2人いるんですがね、オルコットさんドンマイ。
 ていうか、織斑さんまだわかっていなかったんですか?織斑先生もあきれたように溜息をついている。
「織斑さん、さっきの授業でやりましたよ」

「え、マジで?どこどこ?」

「はあ、教科書の六ページにありますよ。『現在、幅広く国家・企業に技術提供が行われているISですが、その中心たるコアを作る技術は一切公開されていません。現在世界中にあるIS467機、そのすべてのコアは篠の博士が作成したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士以外はコアを製造することが出来ない状況にあります。しかし博士はコアを一定数以上作ることを拒絶しており、各国家・企業・機関では、それぞれ割り振られたコアを使用して研究・開発・訓練を行っています。またコアを取引することはアラスカ条約第七項に抵触し、すべての状況下で禁止されています』でしたっけ。織斑さんの場合は前例がない状況なので、データ収集を目的として専用機が与えられることになったんじゃないでしょうか?」
 正確にはコアの数は468個なんですけど……。それにしてもこれを覚えたのは、更識家での地獄の座学講座のおかげで。朝から晩までの地獄講座は、ISを所有しているのに何も知らない僕の為にみんなが時間を割いてくれた。まあ、覚えたら基本的に忘れないんですけどね…。
「あの、先生。篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか……?」

「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ」
 織斑先生、そう簡単に個人情報を流さないでください。束さんは今全世界で指名手配中なのでいろいろ問題が起きるかもしれないじゃないですか。篠ノ之さんを誘拐して束さんをおびき寄せるとか……まあ、できる人はあんまりいないでしょうけど。束さんから護衛の任務を受けていますしね。
「えええええーっ!す、すごい!このクラス、有名人の身内が二人もいる!」

「ねえねえっ、篠ノ之博士ってどんな人!?やっぱり天才なの?」
 いや、世界最強の変人ですよ。天災でもありますし。織斑先生が苦い顔になるほどの、ね……。
「篠ノ之さんも天才だったりする!?今度ISの操縦教えてよっ」
 さっき授業開始の鐘が鳴ったのだが、そんなことはお構いなしにわらわらと篠ノ之さんのところに集まっていく。僕ですか?鐘が鳴ったので織斑さんに説明しながら定位置に戻ってます。
「あの人は関係ない!!」
 突然、大声を上げた篠ノ之さん。簪の時と同じパターンなのだろう。天災の姉と比べられる妹。比べられる苦しさは経験した者しかわからない。
 そんなことに気づかずに近づいていた人達は、何が起きたのかわかっていない状況だった。
「……大声を出して済まない。だが、私はあの人じゃない。教えられるようなことは何もない」
 それだけを言うと、篠ノ之さんは窓の外に顔を向けてしまった。
 そう言われた当人たちは、それぞれ困惑や不快な顔をしながら自分席に戻っていった。まったく比較されることがどんなに嫌なのか、このクラスの人達はわからないのかな?ここにいたら嫌でもその気分を味わうことになるのに……。
「さて、授業を始めるぞ。山田先生、号令」

「は、はい!」
 まあ、それでも変わらない人間はここにはいないだろうが……。



 あっという間に授業は終わりみんなにとっての安息の時間である、昼休みに突入した。
「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」
 いや、ここに一人いた。相変わらず織斑さんを侮蔑しているオルコットさん。昨日、あれだけ言ったのに、まだ懲りてないのかな?
「まあ、一応賞美は見えていますけど?さすがにフェアではありませんものね」

「?なんで?」

「あら、ご存じないのね。いいですわ、庶民のあなたに教えて差し上げましょうか。わたくし、セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生……つまり、現時点で専用機を持っていますの」

「へー」

「……馬鹿にしていますの?」
 ええ、僕もそう思いましたよ、今の発言には。
「いや、すげーなと思っただけだけど。どうすげーなのかはわからないが」

「それを一般的に馬鹿にしていると言うのでしょう!?」
 ババンッ!!
 織斑先生の出席簿には劣るけれども、オルコットさんが机をたたいたためにそれなりの音を立てた。教科書も落ちるほどの……。
「……こほん。さっき神田さんが言っていたでしょう。世界でISは467機。つまり、その中でも専用機を持つ者は全人類六十億超の中でもエリート中のエリートなのですわ」
 まあ、専用機を持っていなくても優秀な人は多いですが……。
「そ、そうなのか……」

「そうですわ」

「人類って今六十億超えていたのか……」

「そこは重要なとこではないでしょう!?」
 ババンッ!
 また、机をたたいた。でもオルコットさんの気持ちはわかりますよ。これはさすがに織斑さんが悪い。
「あなた!本当に馬鹿にしていますの!?」

「いやそんなことはない」

「だったらなぜ、棒読みなのかしら……?」
 いや、首を傾けながらこっちを見られても困るんですが……。
「なんでだろうな、箒」
 いや、そっちに対象を変えたら駄目だと思いますが……。朝、名前で呼ぶなと言われてたのにもう戻ってますし、まあ篠ノ之さんも別に何もないというのなら関係ないが……。
「そういえばあなた、篠ノ之博士の妹なんですってね」
 オルコットさんもそっちに変えたらいけないんですって。
「妹というだけだ」
 ほら、睨まれただけですごむほどなんだから。ちなみにあの程度の殺気など、特に何も感じない。
「ま、まあ。どちらにしてもこのクラスで代表にふさわしいのはわたくし、セシリア・オルコットであることをお忘れなく」
 言いたいことだけ言うとオルコットさんは教室を出て行った。
「箒」

「…………」

「篠ノ之さん、飯食いに行こうぜ」
 織斑さんが、篠ノ之さんを食事に誘った。まあ、さっきの一件で浮いていますからね。
「ほかにだれか一緒に行かない?」

「はいはいはいはいっ!」

「行くよー。ちょっと待って!」

「お弁当作ってきてるけど行きます!」
 やっぱり織斑さん効果は半端ない。本人はまったく気づいていないだろうけど……。
「……私は、いい」

「まあそう言うな。ほら、立て立て。行くぞ」

「お、おいっ。私は行かないと_____ウ、腕を組むなっ!」
 だから、無意識にそういうことをしてるから、ハーレムつくるんですよ。ほら周りの空気もそういう雰囲気にならないで、こっちが対処できないから。
「なんだよ歩きたくないのか?おんぶしてやろうか?」
 よし、ちょっと話そうか、さすがにここまで行くとむかつきますよ。
「なっ……!」
 ほら、篠ノ之さんの顔が真っ赤になってるじゃないですか。
「は、離せっ!」

「学食についたらな」

「い、今離せ!ええいっ___」
 おお、見事に織斑さんが投げられた。護身術も習得してるんですかね?
「いてて、腕上げたなぁ」

「ふ、ふん。お前が弱くなったのではないか?こんなものは剣術のおまけだ」
 いや、おまけでする人ってなかなかいないような……。
「え、えーと・・・・・」

「私たちやっぱり……」

「え、遠慮しておくね……」
 みんな、今の一件で怯えたのは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
「あーあ、志明。お前は行くか?」

「すみません、僕も行かないといけない場所があるのでご遠慮させてもらいますね」

「箒」

「な、名前で呼ぶなど___」

「飯食いに行くぞ」

「お、おいっ。いい加減に___」

「黙ってついてこい」

「む……」
 織斑さんと篠ノ之さんは食堂に向かっていった。僕は朝作った弁当を持って4組に向かった。






 4組に向かってみるとなんだか騒がしいのが外からもわかった。
「あのー、すみません。更識さんいますか?」

「あ・・・志明。助け「「「あー、神田君だ!!!」」」」
 教室に入ってみたら、簪の周りで人の円が出来ていた。
「マスター、助けて下さい」
 正確には簪の間に座っているセイバーの周りに円が出来ていた。
「ああ、皆さん。簪が困ってますから、セイバーを解放してあげてくれませんか?」

「えっと、もしかしなくても神田君って更識さんと知り合い?」

「ええ、ここしばらく居候させてもらっていたので」

「既に同棲済み!!神田君狙ってたのに……」

「ははは、別にそういう間柄ではないですよ、まだ…ね」
 あ、なんか調子乗っていったら今度はみんな僕たち二人の周りに円になるように一歩引いていった。セイバーは連れて行かれたが……。
「あ・・・セイバー。もう、志明ったら」
 簪に怒られながら僕は神崎の席の近くにあった椅子を借りた。
「ごめん、ごめん。まあ、いいんじゃないか」

「それで・・・何しに来たの?」

「いや、大方昼休み中も弐式の調整をして昼を疎かにしてると思ってな、朝に弁当作ったから届けに来たんだ」
 そういうと、朝作った弁当を手渡す。
「ありがと・・・。志明のは?」

「あ…、一人分しか作ってなかった」
 すっかり忘れてた。簪が何か持ってると無意識に思ってたんだろう。
「簪、何か持ってない?」

「ううん・・・昼休みに買いに行こうと思ったんだけど、混んでると思って・・・少しセイバーとお話ししてたらこうなったから」

「今から行っても……もう遅いだろうし、食べちゃっていいよ」

「それはダメ。志明が作ったんだから・・・志明が食べるべき」

「なら、半分こにしない?」

「それなら・・・いい」
 あ、でも箸が一つしかない。どうしよう?……しょうがないか、恥ずかしいが。
「はい、あーん」

「え・・・ありがとう」
 これは、恥ずかしいな。人前でやるもんじゃなかったな。
「どう、味は?」

「おいしいよ、とっても」
 なんだか周りが騒がしいようだが気にしてはいけないと思った。

 この後僕と簪は昼休みが終わるまで仲睦まじく過ごした。セイバー、ほっといてごめんなさい。
 昼休みが終わり、教室に戻って、オルコットさんに少し説教をしてなんだか疲れきった顔をした織斑さんに話を聞いたら、篠ノ之さんにISについて教えてもらうことになったのだけれども、放課後に剣道場に来いと一方的に言われたらしい。面白そうだったので、ついていくことを了承してもらい僕は次の授業の用意にはいった。
雨すごいですね。 
感想やオリジナルISをお願いします。


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