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◇第七話さぁ、一夏特訓の時間だよ
 「休み時間は終わりださっさと席につけ」
 次の日の二時限目の休み時間も終わり今から三時間目の授業だ。教師はまぁ、千冬さんだ。
 パアンッ!
 「痛いです織斑先生」
 「今お前、頭の中で名前で呼んだろ」
 な、なぜ読まれているんだ。
 「そ、そんな事ありません」
 「ふっ、まぁいい」
 いいのかよ。叩かれ損じゃないか。
 「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」
 「へ?」
 「なに」
 「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」
 「???」
 一夏がちんぷんかんぷんしていると、教室がざわめいた。
 「せ、専用機!? 一年の、この時期に!?」
 「つまりそれって政府からの支援が出るってことで…」
 「あぁ~、いいなぁ……。私も専用機欲しいなぁ」
 まったく意味が分からないとういう一夏の顔を見て千冬さんが溜息混じりにつぶやく。
 「雄太、説明してやれ」
 「一夏、ISを作ったのが篠ノ之博士というのは知っているよな」
 「あ、あぁ」
 俺はそれを確認してから話を続ける。
 「で、いまでもそのISのコアを作れるのが篠ノ之博士しかいなくて、467機を最後に忽然と姿を消したから各国家に分配されたものを企業や組織に更に分けてISの研究・開発を行ってるんだ」
 「つまりそういう事だ。本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間にしか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意されることになった。理解できたか?」
 「な、なんとなく……」
 一夏が頭の中で整理をしている間に千冬さんに聞いてみた。
 「織斑先生、俺には専用機ないんですか」
 「とりあえずは、一夏だけだそうだ。ISの数にも限りがあるからお前に専用機が来るかは正直分からん」
 確かに俺よりは千冬さんの弟である一夏の方がいいデータが取れるだろうとの打算なのだろう。
 「ありがとうございます」
 「あの、先生。篠ノ之さんってもしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか?」
 ……まあ、篠ノ之なんて名字、めったにいないしいつかバレるよな。
 「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ」
 おい、教師が生徒の個人情報バラしていのかよ。
 「ええええーっ! す、すごい! このクラス有名人の身内が二人もいる!」
 「ねえねえっ、篠ノ之博士ってどんな人!? やっぱり天才なの!?」
 「篠ノ之さんも天才だったりする!? 今度ISの操縦教えてよっ」
 授業中だというのに、箒の元にわらわらと女子が集まる。それに箒は少し困った顔をしている。仕方ない、助けてやるか。
 「はいはい、授業中なんだから席に戻ろうぜ。それに有名人の身内ってのはいいことばかりじゃないぜ」
 俺がそう言うと予想通りブーイングが飛んでくる。
 「いいじゃない、ちょっとくらい」
 「そうよ、授業を少し聞かなくたって大丈夫よ」
 「悪い事なんて何があるの」
 いやいや、これだから無知は困る。
 「そりゃ「おい」」
 俺が口を開こうとしたら途中で遮られてしまった。
 「今、授業を聞かなくていいと言った奴前に出ろ。私直々に授業が何たるかをその身に叩き込んでやる」
 その後、教室は阿鼻叫喚の地獄絵図になった。

  ★

 「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」
 休み時間、早速俺たちの席にやってきたセシリア。あの千冬さんの地獄の説教に堪えた様子を見せないあたりさすがは代表候補生といったところか。
 「今、わたくしのこと少し馬鹿にしましたでしょう雄太さん」
 「ソレハキノセイダ」
 「言葉が片言になっていますがまあ、いいでしょう。良かったですわね、これでフェアな勝負ができますわね」
 「? なんで?」
 「あら、ご存じないのね。いいですわ、庶民のあなた方に教えて差し上げましょう。このわたくし、セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生……つまり、現時点で専用機を持っていますの」
 「へー」
 「イギリスって事はBTか」
 「っ!?」
 「BTって何?」
 俺の一言にセシリアは驚きの、一夏は不思議そうな表情をする。
 「なんであなたが、わたくしの専用機を知っていらっしゃるんですか」
 驚きの表情も束の間、すぐにセシリアは俺に喰ってかかる。
 「そりゃ、BTの基礎理論作ったの俺だぞ。まさか代表候補生が自分の専用機の製作に関わった奴を知らないなんてないよな」
 俺の言葉に信じられないという顔をするがセシリアは直ぐに顔を引き締めて反論してくる。
 「それは本当ですの? わたくしの知っている限り製作に関わった人の中に日本人の名前は有りませんでしたわよ、ほら」
 そう言って見せてきた携帯端末の表示には製作に関わった人と思しき名前が並んでいるが確かに日本人の名前はどこにも乗っていなかった。
 「じゃあ、これを見てもそう言える」
 そう言って俺も携帯端末を取り出しセシリアに見せる。
 「こ、これは!?」
 「これで信じてくれるかい」
 「え、ええ確かに、後で本国に問い合わせてみますわ」
 ちなみに俺が見せたのはBTの基礎理論とその設計図、これで信用されなかったら相手は余程の馬鹿だろう。
 「で、結局BTって何?」
 「簡単に言えばセシリアのISについてなんだが、お前には何も教えないからな。お前だけ相手の情報があったら不公平だからな」
 「おう、卑怯な事はしたくないからな」
 「さすが一夏、よく言った。セシリアもそれでいいよな」
 「まあ、いいでしょう。どちらにしてもこのクラスで代表にふさわしいのはわたくし、セシリア・オルコットであるということをお忘れなく」
 かっこよくポーズを決めてそのまま立ち去っていった。
 「雄太、飯食いに行こうぜ」
 「いいぜ。だけどその前にちょっといいか」
 「いいよ」
 一夏の許可を貰い俺は窓際にいるだろう人物に声をかける。
 「箒も飯いこうぜ」
 さっきの授業から束さんの名前が出たせいか妙にぴりぴりしていて箒が浮いている。一夏もそれが気になっているようで今俺に声をかけた時にちらりと箒の方を見ていた。
 「他に誰か一緒に行かない?」
 適当に話を振ってみる。
 「はいはいはいっ!」
 「いくよー。ちょっと待って!」
 「お弁当作ってきてるけど行きます!」
 俺と一夏がいるからだろうがなかなか入れ食いだな。まあ、それでもいいか。
 「……私は、いい」
 「そう言わずにさ。ほら、行こうぜ」
 「お、おいっ。私は行かないと……う、腕を組むなっ!」
 箒は少し頑固なところがあるから強引な位がちょうどいいだろう。
 「は、離せ!」
 「学食についたらな」
 「い、今離せ! ええいっ」
 箒の腕に絡ませていた腕を捻りながら箒が俺を投げる。
 「なんの!」
 俺は捻られた腕に合わせて体を捻り半回転して箒の前に立つ。
 「箒、腕あげたな」
 「こんなものは剣術のおまけだ。雄太こそ鍛錬は怠っていないようだな」
 「おかげさまで」
 古武術をおまけで習得している女子は日本でお前だけだよ。それに今のやり取りで集まった女子が逃げたじゃないか。
 「一夏、右を」
 「おう」
 俺の言葉に一夏は箒の右腕を俺は左腕を掴む。
 「お、おい! 離せ」
 両側からのホールド状態で抵抗できずに箒が叫んでいる。
 「一夏、学食何にする」
 「俺は日替わりかな。雄太は?」
 「日替わりもいいけど今はチキン南蛮かな」
 「私の話を聞けー」
 そのまま俺たちは箒の叫びをBGMに学食に行った。

  ★

 その週の日曜日俺と一夏と箒の三人は第二アリーナに来ていた。
 前の学食の時に箒に頼んで放課後に一夏を鍛え直してもらった。箒に頼んだ理由はその間に俺は夜の勉強の為に教科書から必要最低限、必要な場所を厳選して勉強の準備をしていた。特訓のの描写がないのは一夏が苛められてるだけを描写しても面白くないじゃん。(一夏がどんな目にあっていたかわ読者の想像にお任せ)
「で、雄太。なぜ一夏の専用機が無いのに私達は剣道場でなくてアリーナにいるんだ」
剣道の防具を着た箒がふてくされながら言った。
セシリアとの対決を明日に控えているがまだ一夏の専用機は準備できていない。だが、一度もISでの訓練をせずにセシリアと戦うのは無謀すぎるので千冬さんに許可をもらいこのアリーナと訓練機を一機借りている。千冬さんからは「思いっきりしごいてやれ」とのお言葉を貰っている。
 「一夏、準備はいいか」
「おう、いつでもいいぜ」
ラファール・リヴァイブを装着した一夏が来た。それから今日やることを確認する。
 「今日は午前中は回避行動、午後は技能を一つ習得して貰う。いいな織斑一等兵」
 「はっ、沖浦教官。所で教官」
 「何だ一等兵」
 「何で射撃の訓練はしないんですか?」
 一夏のの疑問はもっともだがこれには理由がある。
 「攻撃は剣による近接戦闘だけでして貰う。理由は無意味になる可能性があるのと時間が足りないからだ」
 一夏の頭の上にハテナが舞っているが気にせず俺は続ける。
 「時間が足りないのはISの射撃における軌道計算や風などの環境における弾頭への影響等数え挙げればきりがないがこれをお前は短期間で実践レベルまで持ってこれるか」
 「いえ、無理です」
 即答する一夏。
 うん、素直なのは良いことだ。
 「無意味になるのはお前の専用機がまだないからだ。お前の専用機の初期武装に射撃武器がなければそれだけ時間の無駄だ。逆に射撃武器だけでも最悪殴ってでも攻撃できるしそのために毎日放課後に箒に特訓つけて貰ったんだよ、解ったか一夏」
 「お、おう」
 「で、IS一機で何をするんだ」
 一夏と少し遊んだら箒に睨まれてしまった。
 「俺にはこれがあるからな。セット」
 そう言って俺は左腕にPISを出現させる。
 その形状は前に出したのとは異なり二門の砲門がついている。
 「これはこの前の奴の射撃仕様でビームが撃てる。百聞は一見に如かずってね」
俺はPISの砲身を一夏の足元に向ける。
「バースト」
砲身からピンク色の光が一夏の足元に飛んで行く。
「うわっ」
一夏はそれを上に飛んで回避する。
「中々いい回避だぞ一夏。じゃあ、ばんばん行ってみよう。バースト、バースト、バーストっ!!」
 「くっ!? おい、最初に動きの確認とかするだろ普通」
 必死にビームを避けながら一夏が訴えている。
 「時間が少ないから避けながら覚えろ。それに筋は悪くないぞ」
 「ほんとか」
 「はい、隙あり」
 俺の言葉に一夏が動きを止める。
 そこにビームが当たる。
 「はい、動きを止めない。さっきも言ったが時間が少ないからびしばしいくぞ。はい箒もこれ付けて」
 俺は箒にPISのコアクリスタルを渡す。
「セットって言えば装着出来るから箒も撃って一夏の訓練手伝ってくれ。あ、後バーストは言わなくてもビームを撃ち出すイメージをすれば撃てるから」
「わ、分かった。こうだなセット」
箒の右腕に光の粒子が集まりPISの形を形成する。
「それでいいよ箒。じゃあ一夏、しっかりハイパーセンサーと自分の目で確認しながら回避しろよ」
 「ちょ、俺死ぬぅー」
 それからお昼まで回避の訓練をした後、休憩を挟んで技能の取得を行ったが俺の予想より早く二時間で一夏は技能を自分の物にしたのでそれから日が沈むまで技能の応用と回避訓練をして一夏グロッキーになったところで明日に備えて休んだ。


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