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第一章
二話:英国淑女と決闘と
 ぱちっ。カーテンの隙間から入る光は未だ薄暗い中、俺は自然に目を覚ました。頭だけ左に向けると奏海はまだ気持ちよさそうに寝ている。
 
 音を立てないようにそっと上半身を起こし、ぐぐっっと体を伸ばす。簡易キッチンでコップ一杯の水を飲み干すとようやく頭も体もしっかり覚醒してきた。

 まだ朝食を食べるには早い時間だが小学校から続けてる日課を行うため、使い古した木刀袋を片手に部屋を後にした。


 朝の日課を終わらせてから、部屋に戻るとすでに奏海の姿はなかった。もう食堂に行ってしまったのだろう。とはいえ、昨日一緒に行く約束もしていなかったので待っててくれても、とは思わない。明るくて人懐っこいあいつのことだからすでに友達も出来ていることだろう。俺もぼっちにならないように気を付けなければ。

 シャワーで汗を流し制服に着替え、食堂に向かっていると一夏と箒が並んで歩いているのを見つけた。

 朝から一緒ということはこの二人が相部屋か。どうやら俺の選択は色々な意味で正解だったようだ。

「あ、三春おはよう」

「おはよう。一緒に飯食べようぜ」

「ああ、いいぜ。箒もいいよな?」

「……問題ない」

 あらら、箒さん朝からご機嫌麗しくないようで。一夏がなんかやらかしたに違いない。

「どうした箒? 朝っぱらから不機嫌な面して」

「そうなんだよ、三春。ずっと怒ったままなんだ。なんとかしてくれよ」

「……怒ってなどいない」

「どうせ一夏が、箒の風呂覗いたりしたんだろ?」

「ばっ!? そんなことしてねぇよ! ただ風呂上りに出くわしたり……」

 いや、十分それだけでもアウトだろ。

「出くわしたり、あとなんだ?」

「下着をあでぇっ!?」

 箒が一夏の二の腕をこれでもかとつねっている。こりゃ一夏がわるいよなぁ。

「なるほどよくわかった。一夏お、前が悪い。許してもらえるまで謝るのが賢明だな」

 こればっかりは俺にもどうしようもない。このラッキースケベにはしっかり反省してもらわないと。

 ぱぱっとメニューを取り終えると空いてる席へと向かう。
 ちなみに朝はバイキングで様々な種類のメニューがそろっている。俺は色々食べたいものをとっていたら、一夏の倍ぐらいの量になっていた。箒に若干引かれた気もするが、朝は腹が減っているのでしっかり食べたいのだ。夕食の時間も早いし、朝から日課をこなしたりしてるからなのだけど。

 なので二人の痴話喧嘩を眺めながら、一人パクパク食べていたら女の子が三人近づいてきた。

「お、織斑君、隣いいかなっ?」

 見ればうちのクラスの子たちじゃないか。相変わらずこいつはもてる。俺もそこまで悪くない……と思いたいが、こいつの隣りにいると自信がなくなってくる。

「ああ、別に良いけど」

 そしてこれだ。そんなだから箒の機嫌が直らないんだよ。

 辺りで悔しそうな声をあげる女子たち。どうやら一夏の部屋には大量に女の子が襲撃、もといご挨拶に向かったようだ。
 ちなみに俺のとこにも来たが、騒がしかったため隣り部屋の寮長が一括して追い払ってくれた。この点であの部屋は最高だと思う。

「うわ、織斑君って朝すっごい食べるんだー」
「おっ、男の子だねっ」

 たしかに、一夏は朝食はしっかり食べるほうだと思う。なんか健康がどうたらこうたらとか。こいつ十代のくせして妙にじじ臭いとこあるからなぁ。

 ちなみに俺は黙々と食べてたためかスルーです。すでにほとんど食べ終わっているしな。

「てゆうか、女子って朝それだけしか食べなくて平気なのか?」

「わ、私たちは、ねぇ?」

「う、うん。平気かな?」

「お菓子も食べるしねー」

 こいつは平気でこういうことを聞くからなー。なのになんでモテるんだ。

「一夏はもうちょっとデリカシーを持つべきだと思う」

 一夏はよくわからないように、うん?と唸っている。こりゃ駄目だな。

「……織斑、私は先に行くぞ」

「じゃあ俺も先言ってるわー」

 箒の機嫌は、どうやら最低辺まで落ちたようだ。その証拠に一夏を織斑と呼んだし。

 とりあえずこのまま箒の機嫌が悪いのも何なので、歩きながら箒を軽く宥めてみる。

「箒ー、そろそろ許してやれば? 一夏も悪気はないだろうし」

 悪気がないからこそ性質が悪いんだけどな。

「……ふんっ」

「そんなんだと、一夏が誰かに取られるぞー」

「三春っ! 私はっ――」

 パァンッ!

「食堂で騒ぐな馬鹿者」

 おっとここで、泣く子も黙る極悪鬼寮長、織斑千冬の登場だぁ!

 パァンッ!

「いつまで食べている! 食事は迅速に効率よく取れ! 遅刻したらグラウンド十周させるぞ!」

 あれ? 何故叩かれた? てか叩いたのにスルーですか? そうなんですか? そうですか。

 急かされた生徒たちは、慌てたように食事に戻る。そりゃ、遅刻で五十キロ――一周五キロなので――走れと言われればそれも当然である。

 ここに突っ立ていると、さらに叩かれる気がしたので俺たちもささっと食堂を後にするのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 今日も今日とて、ISの基本知識の授業だが一夏一人だけは必至の様子だ。山田先生の説明を聞きつつ、昨日の内に作っておいた一夏用テキストと教科書を先ほどから何度も往復している。たまにそれでも分からないとこがあれば、小さなメモをこっちによこしてくるので、それに答えて返してやる。こんなやり取りしてて大丈夫か、と思うだろうがどうやら千冬さんも授業の邪魔にならない程度なら見逃してくれるらしい。あの千冬さんがデレた! というか一夏の現状がさすがにまずいと思ったのだろう。このブラコンめ。

 パァンッ!

「授業に集中しろ、柏樹」

 はい、すいませんでした。でも先生も読心しないでください。
 そんなやり取りもありつつ、山田先生が説明を続けている。

「――また、生体機能も補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィンなどがあげられ――」

「先生、それって大丈夫なんですか? なんか、体の中をいじられてるみたいでちょっと怖いんですけど……」

 クラスメイトの一人がこんなことを尋ねた。あぁ、確かにあのISとの一体感は慣れないと変な感じするかも。

「そんなに難しく考える必要はありませんよ。そうですね、例えば皆さんはブラジャーをしていますよね。あれはサポートこそすれ、それで人体に悪影響が出ると言うことはないわけです。もちろん、自分に合ったサイズを選ばないと、型崩れしてしましますが――」

 ふと、山田先生が俺たちと目が合い、数秒して顔を赤くした。

「え、えっと、いや、その、お、織斑君と柏樹君はしていませんよね。わ、わからないですね、このたとえ。あは、あはははは……」

 変な空気がクラスを覆った! ……山田先生、なんでそのままスルーしてくれなかったんですか。

「……そうですね。俺たちはスポーツ用のインナーウェアのようなものだと思っておきます」

 適当に思いついたことを述べておいてやり過ごす。さぁ、早く授業を再開してくれ!

「あ、あぁ、そ、そうですね。柏樹君の言ってくれたものでもいいと思いますよ」

「んんっ! 山田先生、授業の続きを」

「は、はいっ」

 ここで千冬さんから援護射撃の来た。正直助かったー、一夏もなんだかほっとしてるし。

「そ、それともう一つ大事なことは、ISにも意識に似たようなものがあって、お互いの対話――つ、つまり一緒に過ごした時間でわかりあうというか、ええと、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします」

 さっきまではすらすら説明してたのに、大分詰まりだした山田先生。動揺したのはこっちだよ!

「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになるわけです。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」

 すかさず、女子が質問する。

「先生ー、それって彼氏彼女のような感じですかー?」

「そ、それはその……どうでしょう。私には経験がないので分かりませんが……」

 そこから顔を赤くする山田先生と、きゃいきゃい雑談するクラスメイト。まさに女子高ってこんな感じなのかなって雰囲気。なにこれもうやだ。

 今度は千冬さんに助けてを求めてもスルーされた。こんちくショー!

「な、なんですか? 山田先生」

 山田先生にじろじろ見られてた一夏がたずねる。ここはスルースキルの検定試験場なんだ、察しろ一夏。

「あっ、い、いえっ。何でもないですよ」

 首と両手をぶんぶん振って否定しても説得力のかけらもないんですけど。

 ここでようやく、チャイムが鳴り授業が終わった。なんとも精神的ダメージが大きかった授業だった。疲れたので机にだらーっとする。

「ねえねえ、織斑君さー」
「柏樹君質問なんだけどー」
「今日お昼ヒマ? 放課後ヒマ? 夜ヒマ?」

 わらわらと群がってきたクラスメイト達とどこかの女子。どうやら、様子見の時間は過ぎてしまったらしい。仕方ないので一夏に押しつける。

「皆、そう言うのは一夏に任せてるから。一夏に訊いてみて」

 すると俺のとこにいた女子ががばっと一夏の方に行った。なにやら一夏が言っているが聞こえない。あー、茶がうめぇ。

 すでに整理券をくばってるやつもいるし。なにこの学園こわい。

「千冬様って自宅ではどんな感じなの!?」

「え。案外だらしな――」

 あ、それ禁句。


 パァンッ!

「休み時間は終わりだ。散れ」

 おおう。まさに見計らっていたようなタイミングで来たな。たぶんホントに見てたな。

「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」

「へ?」

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 一夏はわけがわからないと言った顔をしている。昨日すでに授業でやったぞ一夏。
 クラスメイトが騒いでいる理由が分からないのかますます混乱しているようだ。

 千冬さんが呆れたように嘆息した。先生すいません。今日からきっちり教育しますんで。

「教科書六ページ。音読しろ」

 そう言われて音読しだす一夏。なんかやってることが小学生と同じだな。

 その内容は簡単にいえば、今ISのコアには限りがあるので、特別な人間にしか専用機はもてませんってことだ。
 まぁ一夏の状況を考えれば当然と言えば当然なのだが。

「つまり、そういうことだ。本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意されることになった。理解できたか」

「な、なんとなく……。それじゃあ、三春はどうなんだ?」

「俺か? 俺のも用意されるはずだ。たぶん一夏より簡単に手筈が整ったんじゃないか?」

「なんでだ? 俺の方が一月も先に分かったのに」

「たぶん一夏が見つかったころは政府の人間も混乱してたんだろ。それに俺の兄貴の勤め先のことも関係しててな」

「あー、そう言えば三春の兄ちゃんってIS関連のとこのお偉いさんだっけ。確か天笠精工だったか?」

「そういうこと。俺は急遽企業所属になったわけ」
 
 一夏の言った通り、俺の兄貴はISの開発企業である天笠精工でIS開発部門の責任者の一人だったりする。俺がISに関する知識について男なのに詳しいのもここら辺が関係しているが今は置いておく。実は奏海と知り合ったのもこれ関連だったりする。

 なんにせよ俺も専用ISが貰えるのは正直うれしい。だって男の子だもの。
 もちろん俺が専用機を持つ理由や意味、所持することで発生する多大なリスクを考えなければだけど……

 女子の一人が、一夏の呼んだ教科書の内容で気付いたことがあったのか手をあげた。

「あの先生、篠ノ之さんってもしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか……?」

「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ」

 うん、君。気になるのも分かるがそういうのは本人に聞こうよ。千冬さんも答えちゃだめでしょ。少し調べれば分かることとはいえ、仮にも個人情報なんだから。それに箒はあの人のことの話題は……

「えええええーっ! す、すごい! このクラス有名人の身内が二人もいる!」
「天笠精工……大企業……お金持ち……じゅるり」
「ねえねえっ、篠ノ之博士ってどんな人っ!? やっぱ天才なの!?」
「篠ノ之さんも天才だったりするの!? 今度ISの操縦教えてよ!」

 なんか途中危険なワードも聞こえた気がするが気にしたら負けなんだろう。ただ、言ったやつの顔はしっかり覚えておこう。

 女子たちが授業中なのに箒の席にわらわらと群がって騒いでいるが、そろそろやばい。止めないと、と思って立ち上がろうとしたが遅かった。

「あのひとは関係ない!」

 突然の箒の大声に教室がシーンと静まり返った。

「……大声を出してすまない。だが、私はあの人じゃない。教えられるようなことは何もない」

 そう言って顔を窓の外に向けてしまった。クラスのみんなも困惑や不快の顔を浮かべて席へもどって行った。

 箒の替わりといっては何だが、千冬さんに抗議の眼差しを送る。こうなることは想像できたはずなのに、と。だが、千冬さんは僅かに肩をすくめるだけだった。

「さて、授業を始めるぞ。山田先生、号令」

「は、はいっ」

 この話はこれで終わりと言わんとばかりに授業を開始する千冬さん。これ以上は俺が言っても仕方ない。誰にもばれないように小さくため息を吐き、俺は教科書を開いた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 昼休み早々、オルコットがやってきた。

「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」

 別に俺はラファール・リヴァイブで装備整えたら十分勝負できる気がするが。てか、そんなことわざわざ言いにきたのか。
 相変わらずの偉そうな態度で、一々相手するのも面倒になってきた。やっぱ決闘終わっても謝るのやめようかな。

「まぁ? 一応勝負は見えていますけど? さすがにフェアではありませんものね」

「なんで?」

「一夏、この間言っただろう? こいつは代表候補生でもう専用機も持ってるって」

「あー、そっか」

「……馬鹿にしてますの」

「いや、すげーなと思って。どうすごいかはよくわからないが」

「それを一般的に馬鹿にしているというのでしょう!?」

 一般論を一夏に説くなんて、馬の耳に念仏と追加で聖書説くようなもんだぞー、と心の中で呟く。

 ババン!とオルコットが一夏の机を叩く。あ、ノートが落ちた。

「……こほん、さっきの授業でも言っていたでしょう。ISは数限られたものでこの学園にも全生徒の半分ほどしかございませんのよ? つまり、その中でも専用機を持つものは全人類六十億超の中でもエリート中のエリートなのですわ」

「そ、そうなのか……」

「そうですわ」

「人類って今六十億越えてたのか……」

「いや、もう七十億近いぞ?」

「そこは重要ではありませんわ!?」

 ババン! 今度は教科書が落ちた。

「あなた! 本当に馬鹿にしていますの!?」

「いやそんなことはない」

「オルコットさんまじエリート」

「……ふ、ふんっ。まあ。どちらにしてもこのクラスで代表にふさわしいのはわたくし、セシリア・オルコットであるということをお忘れなく」

 いちいちポーズを決めて立ち去っていくオルコット。いちいち様になってはいるが、あれはネタでやっているのか、本気でやってるのか。……本気ならちょっと痛い子なのかもしれない。

「一夏、早く食堂行こうぜ」

「そうだな。箒も行こうぜ」

「……」

 あらら、ご立腹のご様子で。でも、一夏にあたってもしかたないぞ。たぶん、一夏はさっきのことに気を使ってくれてるんだから。

「篠ノ之さん、飯食いに行こうぜ」

「箒ー、早くしないと食べれなくなるぞ」

「他に誰か一緒に行かないか?」

 一夏ー、それは不正解だぜー。

「はいはいはいっ!」
「行くよー、ちょっと待って―」
「お弁当作ってきたけど行きます!」

「……私は、いい」

 ほら、言わんこっちゃない。お前が何とかしろと一夏とアイコンタクト送信、相手の受信を確認。

「まぁそう言うな。ほら、立て立て。行くぞ」

 一夏が箒を強引に腕を組んで立ち上がらせる。が、それでも抵抗する箒。これは意地になってるだけか。そんな押し問答をしていたら、とうとう箒が一夏を古武術を使って倒してしまった。それをひょいっとよける。周りの女子はポカーン状態だ。

「いたた……腕上げたなぁ」

「ふ、ふん。お前が弱くなったのではないか? こんなものは剣術のおまけだ」

「え、えーと……」
「私たちやっぱり……」
「え、遠慮しとくね……」

 あちゃ、これはあの子たちに悪いことしたな。

「じゃあ、また明日でも食べようなー」

 さりげなくフォローを入れといて今日のところは諦めてもらおう。彼女らも気まずいだろうし。

「箒」

「な、名前で呼ぶなと――」

「飯食いに行くぞ。黙ってついてこい」

「む……」

 今度は強引に連れてっても、されるがままについていく。こういう、優しくてちょっと強引な男らしい部分が一夏にはあるのだが、それが特定個人に発生するのではないのがたらしの所以だろうな。


 さて、学食に着いたわけだがさすがに出遅れたわけで、大分込んでいる。ただまぁ、三人なら座れないことはないだろうけど。

「箒、何でもいいよな。何でも食うよなお前」

「ひ、人を犬猫のように言うな。私にも好みがある」

「ふーん。あ、日替わり二枚買ったからこれでいいよな。鯖の塩焼き定食だってよ」

「嫌ならこれにしようぜ! 学園一激辛で有名な麻婆豆腐定食。もちろん大盛りで!」

「なっ、なんでチョイスがそれなんだっ!? 私は日替わり定食でいい!」

「そうか。じゃあ一夏、はい」

「なんで俺に渡そうとするんだよ!? 自分で食べろよ」

「そうか、仕方ない。噂では千冬さんのお気に入りらしいんだけどな」

 ちなみにその噂は食堂にくる時に女子たちが話してたのを小耳にはさんだもので、真偽のほどは定かではない。

「なん……だと……?」

「まぁ、いいや。俺がじっくり堪能させてもらうわ。千冬さんの(お気に入り)を」

「言い回しが悪すぎるだろぉぉ!」

「何考えてんだよ一夏。あ、あそこ空いてんじゃん。箒行こうぜ」

「あ、あぁ」

「スルーか!? スルーなのか!?」

 こら、食堂で騒ぐなと千冬さんも言ってただろう。ほら、食堂のおばちゃんに怒られたじゃないか。一夏が。


「あー、涙が出そうなほど辛いのに後からくる、このなんとも言えない深いコク。まじうめー」

「なぁ、ちょっとくらいくれよ」

「学食十日分で頼まれよう」

「それなら明日自分で頼むから……」

「別に食べてもいいけど、ホントに辛いぞ?」

「大丈夫だって。俺辛いの好きだし、三春もそんなに辛そうにしてないし」

「ほんじゃあどうぞ」

 いただきっ、とか言って麻婆を一口食べる一夏。あーあー、ホントに辛いって言ったのに。
 なんか訳わからん音を口から発して悶えてる一夏はほっといて、箒にある提案を持ちかける。

「そうだ、箒。今日から一夏を剣道でぎったんぎったんにぼこって……じゃなくて、鍛えてくれないか?」

「む。……何故私に? それに何のためにだ?」

「おい三春、なんか不穏な言葉が聞こえた気がするが」

 コップ三倍分の水を飲み干してようやく一夏が復活したようだ。顔は真っ赤で滝のように汗が流れてはいるが。

「ほら、来週の決闘があるだろ? それで本来はISの訓練をしたいとこだけど、たぶん今の一夏はそれ以前の問題があるはずなんだ。俺は俺で少しやることがあるから、頼めるか? ……それに稽古は二人きりになれるチャンスだぞ」

 無視か、無視なのか!?と騒ぐ一夏は当然放置。
 最後だけ一夏に聞こえないようにこそっと伝える。すると箒の眼が鋭く光った。

「ふむ。仕方ないここまで頼まれたのだから断るのも忍びない。全力でやらせてもらおう」

「なんか、箒の目が怖いんだけど……何言ったんだよ。ていうか、俺を抜きで俺のことを決めるなよ」

「別にー、何もー。なぁ箒?」

「あぁ、私は何も聞いていないぞ」

「それにこれは他ならぬお前のためだぞ? 来週の決闘、勝ちにいくんだろ?」

「それは当然、負けるつもりはねぇよ」

「なら、今だけはとりあえず俺の言うことを信じてくれって。一応、一夏よりはISに詳しいつもりだし、今は専属教師に任命されてるし」

「……わかった、三春がそこまで言うなら信じるよ」

「おっと、稽古の後勉強もするから忘れるなよ?」

「え゛っ? まじで?」

「マジも大マジだ。さて今週は忙しくなるなー」

「俺、来週生きてるのかな……?」

 そんな感じで今週の予定が決まりました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 決闘まで、あと数日のある日の放課後。俺は一人訓練用ISを借りて訓練をしていた。
 今回借りれたのはノーマルの打鉄だったので、射撃訓練はできないが、飛行訓練やその他機動をメインに確認したかったので大して問題はない。

 俺には実機に乗った時の感覚が少ないのが唯一の不安なのだ。それだけはISに乗る機会のなかったころにはどうしようもなかったところでもある。

(というよりは、まさか実際にこうしてISに乗ることになるなんて考えてもなかったけど)

 ちなみに実際に初めて飛んだ時は、感動も一入だった。こんなに自由に空を飛ぶなんて今までフィクションの中だけだったし。ロボットやら某MSに憧れた人なら、この気持ちを理解してくれるに違いない。

 この日は永延と基礎移動動作と高速機動の確認をして、一つずつ無駄をなくし、イメージとの差異をなくしていくことに専念した。

 実際ISの訓練なんて地味なもんだ。反復練習に反復練習を重ねて、形ができて初めてしっかりとした摸擬戦ができるのだ。素人がいくら摸擬戦だけを繰り返しても、基礎ができていなければ変な癖が付くだろうし、いつか底が見えてしまう。それではIS操縦者としては一流とは言えない。

 その後も同じような動きを繰り返し、アリーナの使用可能時間のギリギリになったので自主訓練を終わりピットに戻る。
この後は一夏達とのお勉強会だ。

 ちなみに一夏はどうしているのかと言うと、この間話した通り箒に剣道でしごかれているはずだ。

 初日は俺も立ち会って、稽古を見ていたが予想通り一夏は箒に負けてしまった。それに箒はかなりお冠のようだったが、事情を知ってる俺は一夏を責めるのはさすがに気が引けた。
 ただ、一夏も箒にぼこぼこにされたのが刺激になったのか、真剣に特訓に取り組むようになったようだ。自主トレーニングも始めたようで、無理はしないよう気を付けながらも着実に前進はしている。

 ただ、俺たちの専用機が予想より遅れそうなのが気がかりか。まさか、当日まで乗れないなんてことはないだろうな。

 なんか嫌なフラグ立てた気がしないでもないがこればっかりは待つしかないので、とりあえず頭の隅において今日のノルマについて考えを巡らせるのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 あの決闘宣告の日から一週間。俺は一夏にできるだけのことはしてやった。
 箒との剣道の稽古(その間に二人の変な溝も消えたようだ)、それが終われば俺による特別補習、さらに昨日は訓練機を借りてISへの慣れと基本動作を教えた。ホントにこれ以上はもう無理です許して下さいと言えるくらいまではやったつもりだ。

 だが、結局一つだけ問題が残った。

「なぁ三春、俺の専用機っていつ来るんだ?」

「俺が知るか。織斑先生に聞けよ。てか、そもそも俺の専用機も来てないんだぞ」

 その事実に俺たちはため息を吐くしかなかった。
 決闘当日、俺たちはすでにISスーツに着替えピットにいるにも関わらず、肝心のISが来てなかった。

「一夏、もうこのまま生身で行ってこいよ。それでオルコットに『撃てるなら撃ってみろ。ただし、撃ったらブリュンヒルデが全力で殺しにかかってくるぞ。嫌なら降参しろ』って言ってこいよ」

「それもう決闘でもなんでもないだろ……」

 ここには箒もいるが、一夏が心配なのか先ほどからそわそわして一夏をちらちら見ているし、一夏も緊張しているのか少し表情が硬い。
 かく言う俺もさすがにISが来なくて不戦敗なんていう、カッコがつかないことになるんじゃないかと不安が頭をもたげ始めていた。

「お、織斑君、織斑君、織斑君!」

 そんな時、山田先生が駆け足でピットにやってきた。なんか戦う俺らより慌てている山田先生を見て、なんとなく和んでしまったのは秘密だ。

「先生落ち着いてください。はい、深呼吸」

 すーはーすーはー、と一夏に言われるがまま深呼吸をする山田先生。

「はい、そこで止めて」

「うっ」

 冗談を言ったのは一夏だが、素直に止める山田先生も正直どうかと思う。

「……ぶはぁっ! ま、まだですか?」

 あ、一夏、うしろうしろ。

「目上の人間には敬意を払え、馬鹿者」

 パアンッ!と小気味いい音が響いた。

「千冬姉……」

 再び一夏に出席簿という名の鉄槌が下された。一夏も学習しないよな、ホント。
 だがそんなことより、今は本題が最重要だ。

「それで、山田先生。何かあってここに来られたんじゃ?」

「あっ! そ、そ、それでですねっ! 来ました! 織斑君の専用IS!」

 自動ドアの圧縮空気が抜ける音とともに搬入口が開いた。

 ――そこには真っ白なISが一体、鎮座していた。

「これが……」

「はい! 織斑君の専用IS『白式』です!」

「早く動け。すぐに装着しろ。時間がないからフォーマットとフィッティングは実戦でやれ。できなければ負けるだけだ。わかったな」

 千冬さんに急かされて、一夏がISに触れる。だが、あれ?と声を出して一夏の動きが止まった。そういえば昨日もISに触って不思議そうにしていたな。

「一夏どうした?」

「あ、あぁ……いや、何でもない」

 俺の声を聞いて、一夏が今度こそ装着に取り掛かった。 

「背中を預けるように、ああそうだ。座る感じで言い。後はシステムが最適化する」

 千冬さんが一夏に指示を出し、その通りに作業を進めてられていく。装甲が展開、装着されて一夏が立ちあがった。

 その目は眼前の虚空をきょろきょろ見ており、おそらくハイパーセンサーも正常に作動しているのだろう。

「センサーも問題ないようだな。一夏、気分は悪くないか?」

「大丈夫、千冬姉。いける」

「そうか」

 どうやらいつも通りに見えた千冬さんも、一夏のことが心配でしかたないらしい。今一夏を名前で呼び、逆に名前で呼ばれても怒るどころかほっとした様子をしている。確かに、色々なことを鑑みてみれば心配にもなるわな。

 俺もちょっと発破掛けてやるか。

「一夏、お前はこの一週間でできることはすべてやった。後は自分の力を信じて頑張って来い。負けたら今までの指導料として一週間デザートな」

「わかった。勝ってくれば万事オッケーだな」

 一夏が箒に向き直った。

「箒」

「な、なんだ?」

「行ってくる」

「あ、ああ……勝ってこい」

 箒の言葉を首肯でこたえ、一夏はピット・ゲートに進む。体を少し傾け体制を整えると、カタパルトによってアリーナ内に射出されていった。

 皆、一夏が出て行ったのをしばらく眺めていた。俺も何だかんだいって、一夏が心配ではあるし、見守っていたいのだが今はそれより大切なことがある。というか、おそらく先生たちも忘れてるんじゃなかろうか。

「……ところで先生。俺のISはまだですか?」

「……そのうち来るだろう」
「そ、そうですよ柏樹君。あは、あははは……」

 先生方、目を逸らさないでください。


 結局、俺のISが来たのは一夏が出て行ってから十分ぐらいしてからだった。
 
「これが俺の専用IS、『火翠ひすい』……」

 一夏のISが白一色だったのに対し、俺のISはツートーンの緑を基調とし、ところどころ黒のラインが入ったデザインだ。なんか迷彩色みたいで白式と比べると地味と言われるかもしれない。だが、俺はそこに渋さを感じて気に入った。

 ISが来るまでモニターを見ていたが、一夏のISにはどうやらブレード一本しか装備がないらしい。中距離射撃型のブルー・ティアーズに初めからそれしか展開しなかったのだから、おそらくそうなのだろう。
 だが、これまでの特訓が活きているのか、少しずつシールドを削られながらも一夏はなかなかにいい動きを見せていた。たぶん、オルコットが本気でないというのも少なからずあるだろうが、未だにイイのをもらってなかったのがその証拠だ。ただ、さすがに一夏もブレードだけなので攻めあぐねている様子ではあったが。

 このまま一夏の試合を見ていたい気持ちはあるが、俺もこの後試合があるので早速フォーマットとフィッティングの作業に入る。
 ほっといても、自動で行ってくれるのだが、俺自身もその処理作業を始めた。その方が早く終わってくれるし、一夏の試合もまだ大きな動きがなさそうだったし。

 立体ディスプレイを何枚か表示し、ひたすら処理を進める。急がないと一夏同様、初期設定で戦うことになってしまう。
 そんなのは面倒なので、ぜひともお断りしたい。

 なんとか一通り作業が終わったので、後はIS自体に任せても問題ないだろう。ISが届いて一言二言指示を出し、モニターに戻った千冬さん達がいるところに混じる。ちなみに箒は俺のISが来てもモニターをずっと見てたし、山田先生もISの受け渡しが終わったらさっさと離れて行った。

 もう少し俺にかまってくれてもいいんじゃないかな……

 一人心の中で涙を流しつつ、アリーナ内を移すモニターに視線を移した。


 あれからしばらく膠着状態が続いていたが、どうやらそろそろオルコットがとどめを刺そうと動く様だ。ブルー・ティアーズの名前の由来である自律機動レーザー兵器、《ブルー・ティアーズ》(以下BT兵器もしくはビットと呼ぼう)が一斉に散開した。

 その動きに翻弄されセシリアから視線が外れた隙に手に持った《スターライトmkⅢ》を一夏に向けた。これで終わりかと思われたが、なんと一夏はオルコットに特攻、体当たりで斜線をずらした。

 再び距離をとったオルコットは、再度ビットを展開。レーザーが一夏に向け放たれるが、それを回避しカウンターで一機切り落とした。

「なんですって!?」

 開放回線オープン・チャネルで届いた声がオルコットの心情を克明に表した。
 オルコットが驚いた隙に、一夏が切りかかる。

 後方に回避して、もう一度ビットを一夏に向かわせる。が、またもやビットが一つ推進部を破壊され数を減らした。

「この兵器は毎回お前が命令を送らないと動かない! しかも――その時、お前はそれ以外の攻撃ができない。制御に集中させているからだ。だろ?」

 一夏の推論はおそらく正しい。先からのビットの動きがその通りだったし、今モニターの向こうで顔をひきつらせたオルコットを見れば明らかだ。

 粘りに粘った意味がここに来て出て来た。だが、僅かに見えて来た勝機に一夏は少し浮かれて調子に乗っているようだ。山田先生が一夏を褒める言葉を口にしたが、千冬さんは先ほどより厳しい視線をモニターに向けてそれを指摘した。

「あの馬鹿者。浮かれているな」

「え? どうしてわかるんですか?」

「さっきから左手を閉じたり開いたりしているだろう。あれは、あいつの昔からの癖だ。あれが出るときは、大抵簡単なミスをする」

「そうですね。それで散々対戦ゲームとかでも負けて来たのに、一夏はそれに気付いてませんからね。今度締めときます」

「ふむ、私からもきつく指導しておこう」

 なんて一夏にとっては恐ろしいやり取りを行っていたが、本人が知る由もなく、ビットをもう一機撃墜し、一夏がオルコットを間合いに入れた時だった。腰部の突起が外れ、残りのビットが姿を現した。

「おあいにく様、ブルー・ティアーズは六機あってよ!」

 この二つは先ほどまで使用していたビットと違い、その砲口からミサイルを吐きだした。
 直前に距離を取ろうと回避に動いた一夏だが、距離が縮まりすぎている。必死に回避するも、とうとう一夏を二発のミサイルがとらえた。

「一夏っ……!」

 箒が声をあげ、山田先生が息をのむ音が聞こえた。千冬さんが変わらず注視していたが、煙が晴れると、ふっと笑みをこぼした。

「機体に救われたな、馬鹿者め」

 そこには、白式の『真の』姿があった。


「やっと、『一次移行ファースト・シフト』したか。まったく一夏も運がないのかあるのか」

 いや、運はあるな。主に女性関係では。本人がそれを一切無駄にしてはいるが。

 ファースト・シフトを終えた白式は実体ダメージが消え、所々そのフォルムを変えている。

 ただ、ハイパーセンサーが届けた一夏の装備を確認して、俺は眉をひそめた。

「雪片……弐型だって……?」
 
 はたして、こんなことがあるのだろうか。いくら姉弟でも……

 だが、あれが想像通りのものなら一夏にも一発逆転のチャンスが出てきた。

 だってあれは使い方さえ間違えなければ、世界最強にもなれるものなのだから――


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ――雪片。それはかつて、世界最強に君臨した織斑千冬が使用していた専用ISの装備の名である。

 彼女はそのひと振りの刀を持ってして、第一回モンド・グロッソ――ISの世界大会――において、覇者となった。

 その後継とも言える雪片弐型を、彼女の弟、織斑一夏が握るとなれば誰かが何かの因果かと思っても不思議ではない。

「俺は世界で最高の姉さんを持ったよ」

 千冬は、いつも一夏の姉だった。たった二人の家族であり、いつも一夏を守ってきた。一夏も、自分とは隔絶とした強さを持つ千冬に守られていることは理解していたし、だからこそできる限り陰で支えたいと思い、行動に移してきた。

「俺も、俺の家族を守る」

 だが、今なら。これからは――

「……は? あなた、何を言って――」

「とりあえずは、千冬姉の名前を守るさ!」

 まだ、今は手にした力を持て余している。だが、せめてあの格好いい姉に恥じない弟でありたい。己の不出来のせいで千冬姉が格好つかないなんて一夏にとっては笑えない冗談でしかない。

「というか、逆に笑われるだろ」

「だからさっきから何の話を……ああもう、面倒ですわ!」

 動かない一夏に焦れたセシリアが、弾道を再装填した二機のビットを飛ばす。
 先ほどのビットよりも速く迫るそれらを、一夏は――

(見える……!)


 横一線。金属同士がぶつかった甲高くも鈍い音を立てて二つに断たれたビットが爆発するが、その衝撃すら置き去りにして一夏は再びセシリアに突撃する。
 機体の瞬間加速度、センサーの解像度は先ほどまでとは比べ物にならない。

「おおおおっ!」

 一夏の手に握られた雪片が光を帯び、一夏にその強い力の存在を伝える。

(いける……!)

 すでにセシリアの懐に飛び込んだ。今からでは近接武器の展開も間に合わない。

 下段からの逆袈裟払いを放つ――

 その前に決着を告げるブザーが鳴り響いた。

『試合終了。勝者――セシリア・オルコット』

 そのアナウンスを聞いた二人はぽかんと口をあけて呆けてしまっている。
 それはアリーナにいた観客も、ピットにいた真耶と箒も同じだった。

 ただ、三春は「アホ」とため息を吐き、千冬は「やれやれ」といった顔を浮かべているのだった。

 一部を除いて何が起こったのか分からなかった一同だったが、ただ一つ――一夏が負けたということだけは理解した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「よくもまあ、持ち上げてくれたものだ。それでこの結果か、大馬鹿者」

「あれだけ、勝ちフラグ立てておいて負けるのもすごいな。もはや才能じゃね? 全然羨ましくないけど」

 一夏が負けてピットに戻ってきたので、これでもかといじめておく。ははは! ざまぁ!

「武器の特性を考えずに使うからああなるのだ。身をもって分かっただろう。明日からは訓練に励め。暇があればISを機動しろ。いいな」

「……はい」

 さすがに落ち込んでるが、まあそこまで大見え切って負ければこうもなるだろなぁ。これで俺も負けたら何言われるかわかったもんじゃないな。

「さて、時間がない。柏樹、さっさと準備をしろ」

「了解です」

 さて、俺も行きますかね。――っとその前に。

「一夏」

「ん? 何だ三春?」

「お前のISは刀一本だから俺とは戦い方が変わってくるけど、俺の試合はよく見ておけよ。基本的な動きは万国共通だからな」

「ああ、わかった。……けど、ホントに大丈夫か?」

「大丈夫だ。問題ない」

「それ負け……というかもはや死亡フラグじゃないか」

 そんな冗談を交わすほど今は気分がいい。なんだかんだ勝負事になると子供っぽいなと自分でも思う。まあ、これは男の子の性みたいなもんだと思う。
 足元すくわれないように気を引き締めていこう。

 それに俺はこんなところで負けてられないのだから――

「心配すんなって。じゃあ言ってくるわ」

 そう一言残して、俺はアリーナに飛び出していった。



 アリーナに着くとオルコットがすでに待機していた、が何か様子がおかしい。

「……らい……か……」

 何だと思い、ハイパーセンサーに耳を傾けて聞いてみる。

「織む……いち……、……り斑、一夏……」

 もしや、とオルコットの顔を確認すると、そこには恋する乙女がいた。

(さっきの戦いの中の、どこに落ちる要素があったんだ……)

 昔っから、一夏は事あるごとに女子に惚れられることがあったが今回は全く理由が分からない。確かに一夏は相当イケメンだが、だから惚れたのではないだろう。ついさっきまで二人はいがみ合ってたのだし。
 なんかもう頭が痛くなってきたが、始めないわけにもいかない。そろそろ千冬さんにお叱りされてしまう。

「おーい! オルコット! 俺は準備できたぞ!」

「……っっ! あ、あらもういらしたのですね。準備はよろしくて?」

「だから、そう言ってるじゃないか……。そっちこそ大丈夫なのか? BTも一夏に大分数減らされたようだけど」

「御心配には及びませんわ。エネルギーも問題ありませんし、これさえあればあなたに勝つなど造作もありませんわ」

 そう言って、スターライトを掲げるオルコット。いや、さっき初心者の一夏に負けそうだったのはどこの誰だよ。

「あなたこそ、そのちゃちなナイフで戦うお積もり? それに装甲もやけに薄そうですし」

「あーこれな。ホントは装甲も含めた後付武装があるんだが、そこまで設定に手が回らんかった。だから今回は基本装備でやらせてもらうよ。それに一応射撃武器もあるから何の問題もないさ」

 結局、一夏が戦ってた時間だけではすべての装備の処理は終わらなかった。端から分かってたからいいんだけど。

「そうですか。あなたがそうおっしゃるのでしたら構いませんわ。後から言い訳など聞きたくありませんから」

「そういうわけでおしゃべりはここまでだ。始めるとしよう」

 鳴り響くブザー。戦いの火蓋が切って落とされた――


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 俺はセシリアとの戦いの後、千冬姉たちと一緒にピットで三春の戦いを見ていた。

「なあ、千冬姉」

 間髪はさまず、本日三回目の出席簿を頂く。

「うぐっ……。織斑先生、質問いいですか?」

「なんだ?」

「えっと、柏樹ってISを起動したのってつい最近ですよね?」

「ああ、そうだ。それがどうした?」

「それにしては、その……なんであんなにISの操縦に慣れてるのかなぁと」

 画面の向こうでは三春が危なげなくセシリアのレーザーを避け、アサルトライフルでミサイルを撃ち落としている。それにセシリアが少し焦っているように見えた。

「そう言えば柏樹君、試験の時も初めてISに乗ったはずなのにいい動きしてましたよね。何故でしょうか?」

 山田先生も疑問に思ったようだ。そういえば、三春の試験の相手って千冬姉だったんだから見てても不思議じゃないか。箒も気になるのか、ちらちらこちらを窺っている。

「ああ、そのことか。私も試験の時に疑問に思ってな、本人に確認してみた」

「それで、あいつはなんて?」

「なんでも、兄に勧められたゲームで慣れていた、と言っていた」

「ゲーム?」

「そうだ。だが、少し詳しく聴いてみると、それはゲームなどではなかった。どうやら、ISのシミュレーターをやらされていたようだ」

「シミュレーターですか? でも、そんなもの……」

 山田先生が訝しげな顔を浮かべている。ISのシミュレーターは一般的じゃないのか?
 
「あぁ、そんなもの普通なら造れない。造っても実践に耐えられるものができなかった。……だが、あいつの兄は天笠精工の開発部門の総責任者だ。しかも、業界では篠ノ之博士に次ぐ天才とまで言われている。そんな奴の特別製ゲームを柏樹は三年間、ほぼ毎日やっていたらしい」

「へー……って毎日っ!?」

「なんでもノルマが課されていたそうだ。そのせいで、部活はできない、あんまり遊べない、どんどん色が白くなってく、なんて愚痴をこぼしていたがな」

 そうか、それであいつも道場通うのやめたのか。理由を聞いても教えてくれなかったのも、当時はもしかしたら口止めされてたのかもしれない。三春は一番付き合いの長い幼なじみだけど、俺の知らない三春を今垣間見た気がした。

 ……でも、色白なのは元々じゃなかったか?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「くっ、ちょこまかとうっとうしいですわね!」

「ちゃんと狙えよ? スペックでは今ならブルー・ティアーズの方が上のはずだぞ、オルコット」

 装備が最低限な分身軽なため、躍動感溢れる変則的な動きで放たれるレーザーを避けながら軽口をこぼすと、オルコットはさらに焦りだした。ホントはこういう時こそ、落ち着かないといけないんだけどな。

 左腕の複合攻盾兵装『葉突はづき』から、アサルトライフルを展開。牽制でばら撒きながら接近して高周波ナイフで少しずつ削る。

 ちなみに、この『葉突』には二連装アサルトライフル、特殊実体・エネルギー複合シールド、実体・レーザー剣が搭載されており、火翠は元々第四世代ISの試作機として開発されていたものらしい。
 らしいというのは火翠を今の状態まで完成させたのは天笠精工だけど、元々別のとこに有ったモノを引っ張ってきたそうだ。
 未だ世界は第三世代ISの開発に躍起になってるというのに、試作とはいえ第四世代とは……厄介な人が関わってる可能性が高いなこりゃ。

 大体試合開始から十五分くらいか。さすがにパターンを読まれだしたのか、中々接近させてくれなくなってきたな。

 そろそろ潮時か。なら、ここらで一気に決めさせてもらう!

「はああああっ!」

 アサルトライフルでオルコットの機動を制限、追い込んでいく。シールドエネルギーが減ってきているためか大きく避けようとしているのが分かる。

(かかった!)

 予測通りの軌道を描いたオルコットに接近。近づかせまいと砲口が向けられるがそのまま突き進む。

 一、二と回避。あと一息のところで直撃コースに三つ目のレーザーが迫る。が、ここで今まで使用していなかったエネルギーシールドを展開。ばっちりのタイミングでレーザーを完全に防いだ。

「な、なんですって!?」

「これで終わりだ!」

 さらに『葉突』から複合剣を展開。この装備は威力が高い分、間合いも燃費もあまりよろしくない。常時展開には向かないので、ここぞと言う時の切り札みたいなものだ。

 すでにミサイルを放てるタイミングは過ぎ去った。いける!

 オルコットの懐に入り、《スターライトmkⅢ》を切り捨て、返す刃で体のど真ん中に突きを放った!

「きゃあああっ!?」

 直撃を受けたオルコットが地面を滑るように落ち、止まった。今の手ごたえなら絶対防御が発生したはず。
 と思った直後にブルー・ティアーズが停止状態に。

『試合終了。勝者、柏樹三春――』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇



「ふー、なんとか勝てたな」

 ピットに戻ってきてようやくほっと一息ついた。
 思ったよりは強かったな。BTが全部そろっていれば中々苦戦したかもしれない。それでも俺の装備が揃っていれば問題はないか。

 千冬さんにこれからも精進するようにとお言葉をもらい、山田先生からはISに関する規則教本をもらった。これ一体何ページあるんだ?

 教本の分厚さに青ざめている一夏に、デザート忘れるなよーと追い打ちをかけておく。まぁ一週間は可哀想なので三日ぐらいにしておこう。

「何にしてもこれで今日は終わりだ。帰って休め」

 さて帰りますか。と、その前に。

「俺、シャワー浴びてから帰るから、先に帰っててくれ」

「ん? そうか、分かった。じゃあまたな」

 二人を残し、ロッカールームに向けて歩いて行く。箒がこちらを見ていたので、こっそりぐっと親指を立てて返してやった。


 とりあえずちゃちゃっと制服を着て、出口に向かうと、そこでオルコットが あらわれた!

 たたかう
 こえをかける
 にげる
 スルーする← 

 さて、今日の晩飯どうしよっかなぁ。

「ち、ちょっとお待ちなさいっ!」

 みはるは まわりこまれた!

「ん? なんだオルコットか。何か用か?」

「あ……そ、その……。……申し訳ありませんでしたわ」

 そう言ってペコっと頭を下げられた。なんか今までと違って弱々しい感じでやりずらい。

「あー、なんだその、俺も少し言い過ぎた。悪かったな。今回はこれでチャラってことで」

 俺も一夏も特に怒ってはなかったしなぁ。うっとうしくは思ってたけど。

「それより体は大丈夫か? 最後いいの入っただろ」

「ええ、怪我もありませんでしたし、ISもそこまでひどくはありませんわ」

「そっか、それはよかった。今日は楽しかったぞ。じゃあまた明日な、オルコット」

「あっ、お待ちになって!」

「なんだ、まだなんかあるのか?」

「あ、その……これからクラスメイトとして一緒に過ごしていくのですから、わたくしのことはセシリアとお呼びください」

 おおう。なんか一気に態度が軟化したな。まあ、仲良くなるのはバッチコーイってなわけで。

「じゃあ俺のことは三春でいいよ」

 そう言ってすっと手を差し出す。日本人はあんまりしないけど、欧米なら普通だよな?
 はっと俺の手を見てたセシリアだが、普通に握り返してくれた。

「はい、三春さん。これからよろしくお願いしますわ」

「よろしく、セシリア。とりあえず飯でも食べに行くか? 一夏のこととか聞きたいだろ?」

「な、なあっ!?」

 セシリアは あわてだした!

「ん? お前、一夏に惚れたんじゃないのか?」

「い、いえっ! そ、そそそそんなことありませんわ! か、かかかか勘違いではなくて?」

 ふーん。ってそんなん誰が信じるかっ!

「で、でもまあ、三春さんがどうしてもと言うのでしたらご一緒させていただきますわ」

「あそ。ならじゃあまたな」

 ぱっと手をあげて帰ろうとする。

「お、おおおお待ちくださいっ! ぜひ! ぜひ、ご一緒にお食事しましょう!」

 みはるは また まわりこまれた!

「はいはい、わかったわかった。逃げないからとりあえず手を放そうか」

 はっと気づいてセシリアは掴んでいた俺の手を離した。恥ずかしいところを見られて照れてるのかもじもじしてる。なんだこのおもしろ……かわいい生き物は。変わりすぎだろ。

「じゃあシャワー浴びたらまた連絡するわ。また後でな」

「え、ええ、分かりましたわ。では後ほど」

 なんにせよ、綺麗に納まってよかったよ。

 ただ、一夏に関してはこれから一層騒がしくなりそうだなー。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 セシリアとの夕食を終えて、ようやく一息つける時間がやってきた。

 適当に昔話をしただけだが、喰いつきっぷりがすごくて少し引いてしまった。この変わり様、なんということだろう。まさにビフォーアフターである。

 さすがにISを動かした後で疲れてたので切りのいいところで終わらせたが、あのまま何も言わなければおそらく一夏のプライベートはすべて暴かれていたに違いない。

 これ以上聞きたかったら本人に、と言って今日は解散となった。とはいえしゃべっていいようなことは大体話したと思う。

 重い体を引きずってやっとのことで部屋に戻ってこれた。

「おかえり。今日はお疲れやな」

 臨時の同居人、奏海がベッドで何かの雑誌を捲りながら俺を迎えてくれた。一瞬メカメカしいモノが見えたが、すぐに閉じられたので詳しくは分からなかった。それでもティーンズ向けの雑誌ではなかったのは間違いないと思う。

「まあな。やっぱIS動かすのは疲れるわ」

「実機を動かした経験がほとんどないとは思えん動きしとった奴が言うセリフちゃうな」

 やはり今日の決闘を見に来ていたようだ。わざわざ伝えてはいなかったが、どうせすぐに噂で耳にするだろうと思っていたし。

「想像以上にイメージ通りだったのはラッキーだったわ。でも、普通に体動かすのとはまた違った疲労がたまるのがなんとも。これでも体力はそこそこあるつもりだったんだけどな」

「そこは慣れるしかないやろ。訓練あるのみや」

 うーん、ISでは先輩の奏海から有難いお言葉をいただいてしまった。ただ、今はゆっくり休みたい。この一週間忙しかったのも地味に響いてるのかも。

「ま、それはおいおいと云うことで。今日はもう寝たい。なにもやる気がしないし」

「なんやー、最近忙しそうにしてて構ってくれへんし、クラスもちゃうから寂しかったのに。つれへんなぁ」

 奏海はそう言うとおよよと嘘泣きをし出した。とは言うものの、毎日部屋では顔を合わしていたし、クラスも二組ということでたまに合同授業でも会う時間があったくらいだ。それに、それくらいじゃ俺の今の睡眠欲は防げないぜ。

「わかったよ。じゃあ明日は一緒に夕めし食うから勘弁してくれ。今日はホントに眠い」

 ふわぁと欠伸を一つ零し制服の上着だけ脱ぐとそのままベッドに倒れこんだ。マジで限界です。

「もう、しゃあないなぁ。……おやすみ、三春君」

「ん……おやすみ……」

 なんとかその一言だけ絞り出したのを最後に、俺の意識は眠気に誘われていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 


 
 翌朝のSHR。予想だにしない事態がっ!

「では、一年一組代表は織斑一夏君に決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」

 そーですねー。なんて心の中で返す。まあつまりはそういうことでして。

「先生、質問です」

 一夏が手をあげた。

「はい織斑君」

「俺は昨日の試合に負けたんですが、どうしてクラス代表になってるんでしょうか?」

「それは――」

「それはわたくしが辞退したからですわ!」

 ババーン! とか効果音が聞こえそうな感じでセシリアが立ち上がった。昨日の試合後エンカウントした時とは打って変わってテンションが高い。こっちの方がセシリアらしいと今なら思える。

「まあ、勝負はあなたの負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然のこと。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手だったのですから。それは仕方のないことですわ」

 俺は勝ったけど、今回関係ないしな!

「それで、まあ、わたくしも大人げなく怒ったことを反省しまして」

 しまして。

「〝一夏さん〟にクラス代表を譲ることにしましたわ。やはりIS操縦には実戦が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いには事欠きませんもの」

 あら、早速名前になってる。というか、一夏にとってはただの有難迷惑だよねっ。
 ついでに言えば、一夏に対してももっと素直になればいいのに。あれか? 惚れた女のプライドってか?

「あれ? それじゃあ三春はどうなったんだよ」

「何言ってんだ一夏。俺は誰の推薦も受けてないし自薦もしてないぞ」

「は? だって俺が……あ」

 お。やっと思い出したか。お前が俺を推薦する前にセシリアが声をあげたことを!
 ていうか、そもそも俺とお前は戦ってないだろう?

「そう言うことだ。それに世界で一番目の男で、世界一の織斑先生の弟が代表の方が見栄えがいいじゃないか!」

 また一繋がりだな!はっはっは! と笑いながら、ばしばし一夏の背中を叩いてやる。

「いやあ、セシリアわかってるね!」
「せっかく男子がいるんだもんね! あれ? でもなんで柏樹君が推薦されなかったんだろ?」

 それは俺が先手をとって流れを操作したからです。

「そ、それでですわね」

 コホンと咳払いを一つ、セシリアが話を切り出した。
 これは荒れる予感!

「わたくしのように優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクトな人間がIS操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみる内に成長をとげ――」
「あいにくだが、一夏の教官は足りている。私が、直接頼まれたからな」

 机を激しく叩く音を立てて立ち上がったのは、おなじみ箒さん。

 いや、まあ頼んだの俺ですけどね。てか、IS教えてたのも俺だけど。そんな野暮なことは言うつもりもないけど。

「あら、あなたはISランクCの篠ノ之さん。Aのわたくしに何か御用かしら?」

 へーそうなんだ。ただ今はあんまり強さに関係ないんだよ、それって。俺とか確かなんとかCだったはず。

「ら、ランクは関係ない! 頼まれたのは私だ。い、一夏がどうしてもと懇願するからだ」

 懇願したのか? してねーよ。とアイコンタクトで確認。

「ん? 箒ってランクCなのか……?」

「だ、だからランクは関係ないと言っている!」

 スーツを着た鬼が動いた。

「座れ、馬鹿ども」

 バシン!バシン!バシィィッ!

 な、なぜ、俺もた、叩かれた、んだ。

 ばたっと机に倒れると横で一夏も叩かれて俺同様突っ伏していた。いらんこと考えるとこうなるんですね。わかってました。

「お前たちのランクなどゴミだ。私からしたらどれも平等にひよっこだ。まだ殻も破れてない段階で優劣を付けようとするな」

 そら、あなたからしたら誰でもごみでしょうよ。だってめっちゃ強かったし。

「今のランクでいうなら柏樹はCだが、A+のオルコットにも危なげなく勝っている。今のランクなどはいて捨ててしまえ」

 だから個人情報をもらさないでください。ってこれって誰でも知れるのか? 俺がセシリアのことを調べた時には見当たらなかったけど、さっきセシリアが箒のランク知ってたし。よくわからん。

「代表候補生でも一から勉強してもらうと前に言っただろう。くだらん揉め事は十代の特権だが、あいにく今は私の管轄時間だ。自重しろ」

 どうせ俺のランクなんてCですよ、と自嘲してみる。
 バシン! ですよねー。

 また一夏も叩かれてる。俺たち、やってることあんま変わらんな。

「クラス代表は織斑一夏。異存はないな」

 はーいとクラス全員(一人除く)が元気よく返事する。一夏、無事に決まってよかったね、ご愁傷様! と心の中で手を合わせた。

 


 



ISの数に関しては学園にはこれくらいないと困るでしょう、ということでこうなりました。全体数に関しては……まぁ知ってるの束だけだから、三春君には分からないよね! 正直、500もないモノにすると色々設定が破綻するんだよ……。
ただ、せめて他兵器との関係くらいは今はまだ一切出てませんが、後々少しは触れられたらと思います。


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