週刊NY生活 2012年6月9日399号
オバマ政権に対し、ニュージャージー州パリセイズパーク市の公立図書館脇に設置されている従軍慰安婦碑の撤去を求めるとともに、日本人に対しての慰安婦に関係する国際的なあらゆる嫌がらせを支援しないようにとの請願が5月10日、ホワイトハウスのホームページにある「ウィ・ザ・ピープル/ユア・ボイス・イン・アワ・ガバメント」に投稿された。
6月9日までに請願書として受理されるために必要な2万5000人の署名が6月4日、2万6973件に達し、ホワイトハウスへの請願書が正式に受理される条件を満たした。
同碑をめぐっては5月1日、廣木重之ニューヨーク総領事と職員の2人が同市のジェームズ・ロトゥンド市長を訪れ、軍関与を認め「お詫びと反省」を表明した1993年の河野洋平官房長官(当時)の談話などを読み上げ、日本政府の対応に理解を求めたうえで、碑の撤去を求めたが、同じ席で桜寄贈100年に関連した植樹の話を提案したことから米側に「交換条件」と誤解されニューヨークタイムズ紙に批判的な記事が掲載されるなど物議を醸している。
在留邦人を含めた日本人が署名運動を開始したことで日米韓市民の間で今後関心が高まっていくものとみられる。
(以下、上記との関連記事)
請願制度、ありがたい。署名した在留邦人
今回の署名運動を知って碑の撤去を求める請願書に署名したニューヨーク在住の榎田和久さん(59)は「署名した人の意識も高く、こうして請願書として成立した。大統領にちゃんと見てもらえるか、そこのところまでは分からないが、こういう一般市民の声や意見を取り上げてくれるチャンネルがホワイトハウスにあることはとてもよかった」と話す。
慰安婦碑撤去を拒否、パリセイズパーク市長
ニュージャージー州パリセイズパーク市の公立図書館脇に設置されている旧日本軍の従軍慰安婦の記念碑をめぐり、撤去を求める日本側と市長側の話し合いが5月に2度にわたり持たれたが、進展はないままに終わっている。
記念碑は「韓国系米国人有権者評議会」の後押しで2010年10月に設置されたもので、碑には、「1930年代から1945年に20万人以上の女性や少女が日本帝国の政府軍によって従軍慰安婦として拉致され、誰もが認めざるを得ない人権侵害を受けた。人道に対する罪を決して忘れないようにしよう」などと書かれている。また日本兵の足元で女性がうずくまっている絵が描かれている(写真・武末幸繁撮影=右下)。
5月1日に廣木重之ニューヨーク総領事と職員の2人が同市のジェームズ・ロトゥンド市長を訪れ、軍関与を認め「おわびと反省」を表明した1993年の河野洋平官房長官(当時)の談話などを読み上げ、日本政府の対応に理解を求めたうえで、碑の撤去を求めた。
同じ席で桜の木の寄贈と書籍の寄贈の提案がなされたが市側はこれを「交換条件」と受け取り反発、ニューヨークタイムズ紙によれば、韓国系のジェイソン・キム副市長は「耳を疑った。クレイジーのように血が沸き立った」という。市側は要請を断った。同紙によればNY総領事館は「交換条件として提示していない」と否定している。
5月6日には古屋圭司氏ら4人の自民党の国会議員が同市を訪れ、慰安所は軍ではなく外部の業者が設置したものであるなど碑文に書かれた内容は事実ではないとして市長に撤去を要請した。これに対し市長は「来てもらったことに感謝するが、われわれはそれ(事実ではないという見方)は取らない」と撤去を断った。
パリセイズパーク市はフォートリーの西隣りに位置し行政区分としてはバーゲン郡の区。2010年の国勢調査によれば人口19622人のうち韓国系が52%を占める。
「桜植樹と交換条件提案していない」廣木NY総領事
在ニューヨーク日本総領事の廣木大使は本紙の取材に対し、慰安婦碑問題をめぐる一連の動向について、「日本政府の立場は、平成5年8月の河野内閣官房長官談話の通り。今年5月にパリセイズパーク市長とお会いした際に慰安婦の碑を撤去する交換条件として桜の植樹や青少年交流を提案したことはない。在NY日本国総領事館としては、引き続き慰安婦問題についてのわが国の一貫した立場を説明しつつ適切に対応していきたいと考えている」と述べた。
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