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焦点 みなし仮設「転居で補助終了」に苦悩 制度改善要望
福島第1原発事故で県外の借り上げ住宅に入居する避難者の間に、家賃補助が打ち切られるので転居できない、という問題が持ち上がっている。避難当時、すぐに戻るつもりで当座の住宅を確保した避難者が多く、避難の長期化で不都合が生じるケースが出ている。国は借り上げ住宅をいったん退去した避難者に家賃補助の継続を原則として認めず、避難者が多い山形県を中心に改善を求める声が強まっている。
◎原発事故で山形に避難
<1万人が利用> 昨年11月に福島市から米沢市に自主避難した臨時職員女性(34)は、築40〜50年のアパートに夫(32)と長男(1)と暮らす。6畳と4畳半の2部屋で洗面台がない。米沢への避難者が多く、物件の選択肢は少なかった。 2人目の子どもが欲しいが手狭だ。家賃補助を返上できるゆとりはなく、女性は「近所で良い物件が空いても断るしかなかった」と悔しがる。 借り上げ住宅は、災害救助法に基づき提供される仮設住宅の一種(みなし仮設)。自治体が最長3年間、月6万円を上限に家賃を肩代わりする。山形県内では福島からの避難者1万人以上が、この制度を利用している。 福島市から米沢市へ自主避難した会社員女性(28)は4月の結婚を機に1LDKのアパートに移った。月5万円の家賃は全額私費だ。夫と2人で福島市内に通勤するためガソリン代もかさみ、「家賃出費は痛い」とこぼす。 厚生労働省は仮設住宅(みなし仮設を含む)に入居した段階で「救助」が済んだと判断。その避難者は災害救助法の対象外となるため、仮設からの転居者には原則として家賃補助を認めない。
<特例も使えず> 厚労省は昨年5月、県外避難者が地元に戻る場合の特例措置として、岩手、宮城、福島の3県に限り、仮設住宅間の転居を認める通達を出した。だが福島からの避難者の多くは今後も県外避難を続ける意向で、特例も利用できない。 山形県復興支援室は「避難者支援は被災県の要請に基づく。山形県としては判断できない」との立場。福島県避難者支援課は「県外でも仮設住宅を移れるよう国に要望したが、認められなかった」と説明する。 厚労省社会・援護局総務課は「個人の事情による転居に公費を使うことには議論がある」と慎重な姿勢を崩さない。 避難者を支援する山形市のNPOりとる福島の佐藤洋代表(44)は「手頃なアパートが見つからず、やむを得ず狭い部屋を借りた人も多い。行政は画一的対応ではなく、個々の事情に寄り添うべきでは」と指摘する。 事情は違うが、宮城県震災援護室にも転勤や出産を理由に「みなし仮設から移りたい」との相談が数件あるという。同室は「家賃負担が重いのならプレハブ仮設に入居する選択肢もある」と話す。
2012年06月19日火曜日
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