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行動分析学とは,ヒト(に限らないかもしれない)の行動原理を説明する学問,ということになるのだろうか.完全に門外漢なので違っているかもしれない.要するに,ヒトがなぜその行動を行うのか,反対になぜある行動ができないのか,といった行動メカニズムの解明を目的としている,はず(^^;). したがって本書は,行動分析学を実践するための手引書だ.取り上げている“例題”は部下の管理やダイエット,労働現場における安全管理など,ありがちなものが選ばれている.
多くの人が悩んでいる問題は簡単に解決するはずがないという意味で,難解なものを想像するかもしれないが,そうでもない.本書が取り上げる行動分析学の原理(仮説かな?)は,平易で,さらには,たったの9個(本文では10個になっているが...)しかない.
これだけである.拍子抜けしてしまうくらい簡単だ.これを9個理解して実践するだけで,世の中の問題の多くが解決するなら,やらなきゃ損だろう.
ただ,簡単なだけに落とし穴もある.行動分析学では行動に対するご褒美と罰の意味合いで,“好子”と“嫌子”という概念を用いる.実はこの好子と嫌子,人によってまちまちなのだ.要するに,ある人にとっては好子(例えば甘いケーキ)に該当するものが,他の人にはそうでなかったり,反対に嫌子であったりする場合がある. さらに,行動分析学が人文科学であるがゆえか,行動随伴性の分析においては,常に解釈の妥当性が問題となる.実践においては,失敗の原因をどのようにでも挙げることができる.だから,統一した基準で判断できない.このあたり,僕はすごく気持ち悪かった.けど,まぁ,どうしようもないか.
物語風の文章であるが故に,所々で苛々してしまったが(読ませる小説を書ける人は少ない),内容は平易でかつ実践的である.一般科学書としては,非常によくできていると思う. うさんくさいダイエット本や,まるで人生訓のような部下管理術関係のビジネス書を読む暇があったら,本書を読みましょう.絶対にこっちの方がいいです.おすすめ. |
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はじめに | ||
第1章 | 部下のマネジメントI <チェックリストの魔法> | 1 |
第2章 | 部下のマネジメントII <仕事を楽しく> | 11 |
第3章 | 安全のマネジメント <注意一秒、怪我一生> | 21 |
第4章 | 体重のマネジメント <自分に自信を持つ> | 31 |
第5章 | 恋愛のマネジメント <素直になれなくて> | 39 |
第6章 | スポーツのマネジメントI <私をプールにつれてって> | 49 |
第7章 | スポーツのマネジメントII <かなづちから始めよう> | 59 |
第8章 | 道徳のマネジメント <誰も見ていない所でも> | 69 |
第9章 | 病院のマネジメント <院内感染を防ぐ> | 79 |
第10章 | 品質のマネジメント <行動は一瞬、パフォーマンスは永遠に> | 87 |
第11章 | 知識のマネジメント <専門用語を使いこなそう> | 97 |
第12章 | 学校のマネジメント <ルールを守る> | 105 |
第13章 | 組織のマネジメントI <問題の原因はどこに> | 117 |
第14章 | 組織のマネジメントII <やる気にさせる会社とは> | 129 |
第15章 | 人生のマネジメント <これが私の生きる道> | 139 |
クイズの解答 | 149 | |
おわりに | 155 | |
索引 | 157 |
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