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最終更新:2012年6月19日(火) 1時5分

米提供の放射線情報、避難に活用せず

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 アメリカ政府の公式なウェブサイトに、去年3月、福島第一原発の事故直後にアメリカの軍用機が測定した放射線量のデータが公開されています。データには測定地点の緯度・経度・放射線量などの詳細が示されています。このデータを使えば実際の汚染の濃淡を示す地図が作成できたと専門家は話します。この情報はなぜ生かされなかったのか、そしてこれから生かす方法はあるのでしょうか?

 福島第一原発事故から数日後にアメリカが測定したデータです。そこには緯度・経度、さらに放射性物質などの詳細な測定値が並びます。政府がこうしたデータをアメリカ政府から受け取りながら原発事故の避難計画などに生かせていなかったことが明らかになj$^$7$?!#

 「原子力災害対策本部の中で情報共有できておらず、避難にあたっての検討がなされていないのは遺憾、反省すべき点」(原子力安全・保安院の会見)

 去年3月17〜19日にかけ、アメリカ政府は軍用機で原発周辺の放射線量を測定。3月23日に拡散状況のデータを日本の外務省に提供したといいます。外務省はそのデータを文科省や原子力安全・保安院に転送しましたが、公表はされませんでした。

 このデータが持つ意味について専門家はこう指摘します。

 「これは実測値です。その違いをもっと重く考えるべきだった。それができなかったことが完全な失敗。あのデータがないと避難計画や除染含め何もできない」(地理情報分析に詳しい 金沢星稜大学 沢野伸浩准教授)

 このデータは緯度・経度の位置情報を含むため、測定値を地図に打ち込めば汚染状況がひと目でわかるというのです。実際、アメリカ・エネルギー省は3月23日に測定結果を地図化して発表。にもかかわらず、日本政府内でデータは共有されず、避難計画などに生かされなかったのです。

 政府の対応をめぐっては「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」の試算結果の公表遅れが問題となりました。

 「これ(SPEEDI)は、予測には現段階では使うことが無理」(原子力安全委員会 班目春樹委員長 去年3月)

 あくまでもSPEEDIは予測値ですが、今回のデータは実測値です。しかも3月23日の段階で地図になったものを原子力安全・保安院と文科省は受け取っています。なぜ公表しなかったのでしょうか。文科省の幹部は・・・

 「避難にモニタリングデータを集めるのは文科省の仕事だったが、評価し避難を決めるのは(政府の)原子力災害対策本部になっていた。そもそも我々文科省が避難のために使うという役割ではないので、その考えはなかった」(文科省 渡辺格科学技術・学術政策局次長)

 直後の避難計画には活用されなかったデータ。しかし今後、使い方によっては重要なデータになりうるといいます。

 「地表面の放射性物質の移動を予測。(今後)ホットスポットがどこにできるか高精度で予測できる可能性」(地理情報分析に詳しい 金沢星稜大学 沢野伸浩准教授)

 地形図に汚染の分布を重ねます。さらに雨などによって地表を流れる水の動きを加えると、放射性物質の移動が推測できるようになります。こうした分析を元に点在するホットスポットなどを割り出し、大きな課題となっている除染作業の効率化につなげようというのです。この方法は実際にチェルノブイリでも使われました。

 「実測値は地表面の汚染の実態を表す。(データと地形などを)上手に組み合わせると、今後、どこでどういうふうに除染対策をとれば効果的か見える。(実測値データを)無視し、価値を判断できなかった責任は極めて重い。今後、こんなことを二度と繰り返すようなことは決してあってはならない」(地理情報分析に詳しい 金沢星稜大学 沢野伸浩准教授)

 今、そこにある実測値のデータをどのように使い、どのように生かしていくのか・・・まずは政府の対応が問われています。(19日00:03)

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