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就任あいさつ


金武教育長

踏襲(とうしゅう)退歩(たいほ)挑戦(ちょうせん)こそ前進(ぜんしん)」の気概(きがい)を!

〜未来社会の創造者の育成に向けて〜


沖縄県教育委員会教育長 大城 浩


21世紀は激動の時代と言われています。教育界においても、学習指導要領の改訂、教育基本法の改正、教員免許更新制の導入など、教育を取り巻く環境がめまぐるしく変化しています。これほど内外から「学校力」や教師の「指導力」の向上が叫ばれている時期はありません。今こそ、教育が本来の理念である「人間を育てる営み」としての役割をしっかりと見据える必要があります。

我が国では昭和62年の臨時教育審議会の答申以来、教育改革の連続でした。一昔前の高度成長期の教育は、大量生産を担う人間の育成が目的でした。教育は手段化、画一化、管理化、統制化され、そこから教育荒廃が生じてきたと指摘する専門家もいます。「学びからの逃走」は教育観の変革を突き付けています。何のために学ぶのか、学ぶことの意味を見出せない若者が増えています。今や教育は確実に新しい時代へ突入し、学校の実践段階へ突入しています。今要望されている教育改革が成功するかどうかの成否は、各学校の教育指導や学習活動がどこまで子どもにとって「より望ましいもの」として具体化され実現されていくかにかかっています。教育改革の目玉の一つは「各学校が創意工夫を生かし特色ある教育を充実する」ことです。つまり、教育の地方分権や規制緩和の象徴である学習指導要領を大綱化・弾力化し、学校裁量を思い切って拡大することがこれからの教育改革の特色であり方向性です。

これからの日本の学校教育は、何を哲学に、何を目的に、どのような目標を掲げ、具体的に何をしていけばいいか明確に捉え、それを教育のプロとして教育活動・授業の中で実践化していくことが求められます。新しい教育の流れを創るために確かな「実践力」が必要になります。

そのために、次の「5つのC」を肝に銘じながら「組織力」「連携」をキーワードに日々の教育行政に携わっていきたいと考えています。

○一つ目のCは「Challenge」(チャレンジ)です。教育課題への挑戦です。「絶対にあきらめない」と国民に言い続けて、イギリスがナチス・ドイツから占領されるのを防いだのはチャーチルでした。彼は、絶対に「あきらめない力」と「忍耐力」で母国イギリスを救うことが出来たのです。教育に携わる者として「ねばり強さ」を最大限に生かし、「あきらめない力」と「忍耐力」を持って本県の教育課題に果敢に挑戦していきたい。

○二つ目のCは「Consider」(コンシダー)です。自ら考える力です。マスコミ等で報道される「時の言葉」が初めて「新しい理念」を現わすかのような顔をして時々登場します。果たしてその言葉が新しいのか、初めてなのか自ら考えてみる必要があります。そのことが児童生徒の「自ら考える力」を育てる大前提です。今日的な教育課題の本質がどこにあるのか私たち自身の「自ら考える力」が求められます。何事にも表面の裏にある本質を見極める眼力が大切です。「健全なる猜疑(さいぎ)(しん)」を持って自ら判断できる力、それこそが21世紀型の「地球人」です。

○三つ目のCは「Control」(コントロール)です。自分をコントロールできる力です。教育とは「人生の生き方の種蒔きをすること」です。「教育の全体は教師である」ということを自覚し、自分をコントロールできる能力を養ってほしいと思います。

○四つ目のCは「Communication」(コミュニケーション)です。相互理解できる力です。現代社会の特徴の一つとして「人間関係の希薄化」が指摘されています。言葉を変えていうと「係わり」が失われつつあります。沖縄の良さとしての「ユイマール精神」も少しずつ失われてきています。学校でも地域でも「係わり」を出来るだけ避けようとした雰囲気が出てきています。あらゆる機会に、あらゆる場所で積極的に「係わり」を持ち、たくさんの「素敵な出会い」を創り出してもらいたいと思います。「コミュニケーションの本質」は、世界の中でお互いに違いを寛容の気持ちで持って認め合うことです。今一度コミュニケーションの原点・本質に立ち返ってみる必要があります。

○五つ目のCは「Compliance」(コンプライアンス)です。法令遵守です。相変わらず不祥事が絶えません。私たちの生活は「社会あらば法あり」と言われるように多くの法律の網の目の中で生きています。教育の実践の場である学校も例外ではありません。そこで生活する児童・生徒・教職員には常に事件・事故の危険が存在します。その対策は、「悲観的に準備し楽観的に対処する」(第一に危機の予知・予測、第二に危機の回避措置、第三に生じた危機への適切な対応)という姿勢です。

教育は英語では「Education」と言います。本来はラテン語で「Educe」と言い、「能力を引き出す」という意味です。また、教育には「不易(ふえき)」と「流行(りゅうこう)」という側面もあり、変えていけないものには敢然と立ち向かい、変える必要があるものには果敢に挑戦していくという気概も必要です。

未曾有の大震災が発生し、我が国は大きな試練に直面しています。さらに経済・社会・教育等のあらゆる場面で大きな変革期にあります。これまで日本の特徴を示す様々な概念・伝統が急速に消滅し、新しい価値観に入れ替わっていくような気がします。しかし、どんなに時代が変わろうと「教育」には本来の理念である「人間を育てる崇高な営み」があるということを忘れてはいけません。先行きの見えない不透明な時代だからこそ、私たちがなすべきことは「踏襲は退歩、挑戦こそが前進」の気概を持つことです。21世紀を担う子どもたちが「未来社会の創造者」として、世界の大舞台で活躍するための「(すべ)」を身につけるために、「学校」「家庭」「地域社会」が相互の役割分担を明確にし、共に手を取りながら力を注いでいくことが必要です。

ここに改めて沖縄県教育委員会としての使命と役割に対して、県民各位のご理解とご支援をお願い申しあげ、就任の挨拶といたします。


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