以前の記事で、Widetronics社の原子力電池を紹介しました。
Widetronics社の製品はSiC半導体を使っていましたが、City Labs社の製品は、GaP(リン化ガリウム)を使っています。
SiCもGaPも、バンドギャップの広い半導体で、トリチウムのベータ崩壊で放出される電子の運動エネルギーを効率よく回収できるとのこと。
マイクロ原子力電池を開発する他社が使っている半導体は、Qynergy社がSiC、BetaBatt社がシリコンです。
バンドギャップも重要ですが、電子が放出される方向を制御できないベータ崩壊から効率的に発電するには、3次元的な形状も重要と思われます。
City Labs社のプレスリリースには、寿命は20年以上と書かれています。エネルギーの放出機構が安定しており、デバイスは単純な構造で可動部もないので、動作温度も-50℃〜+150℃と広く、化学反応を利用する一次電池よりも長期的に信頼性の高い電源となります。
プレスリリースに書かれているModel P100aという製品のスペックは公開されていませんが、P100およびEOL20KY15というモデルのスペックはウェブサイトにあります。
・P100は、電圧が0.7Vで、出力は初期が75ナノワットで20年後が24.3ナノワットです。
・EOL20KY15は、電圧が3Vで、出力は初期が50マイクロワットで20年後が16.2マイクロワットです。
(12.3年の半減期で減衰します)
P100だと出力が小さすぎますが、EOL20KY15のようなスペックであれば使いやすいです。
用途は、主に軍用ですが、放射線取扱免許を持たないユーザも購入できるとのこと。
放射線障害防止法に基づく規制値以下であれば日本でも使えるでしょうか。
(軍事技術なので、米国側に輸出規制があるかも知れません)
参考情報:
City Labs, Inc. Releases First Commercially-Available Betavoltaic Product
(2012年6月4日、City Labs社プレスリリース)
Qynergy社ウェブサイト .
Beta Batt社ウェブサイト .
Widetronics社ウェブサイト .
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