放射性物質を呼吸で吸い込んだり、放射性物質で汚染された食品や水を食べたり飲んだりして被曝する内部被ばくは、最近、やっと一般の人も知る言葉となりました。
しかしながら、この内部被ばくについては、一般の人のみならず、原子力や放射線の専門家ですら、大きな認識の間違いがあることを認めないわけにはいきません。
IAEA(国際原子力査察機関)やICRP(国際放射線防護委員会)などの国連関連の機関は、基本的にアメリカ主導の組織であり、原子力推進の機関です。
これらの組織は、基本的に内部被ばくを認めておりません。 最近になって、内部被ばくを考慮しているようなことを言い出していますが、基本は外部被ばく、すなわち、放射性物質から飛び出した放射線により、人体が直接受ける放射線の障害だけを問題にしている機関です。
これらの機関の提言や結論をそのまま信じている専門家が、東大卒などが多い、原発ムラの学者たちです。
これらの学者に言わせると、福島原発事故に伴う放射能汚染は、放射線の量が少なすぎて、健康被害は全く起こらないということになります。 このような学者の話を信じていれば、殺されます。
もし、放射線障害が外部被ばくしか生じないものであれば、福島原発事故による放射能汚染による障害は原発職員だけで、福島市や郡山市、那須町、那須塩原市の住民には、放射線量が障害を起こす閾値を下回っていると考えられますので、放射線障害は起こりません。
ところが実際は、放射能で汚染された地域に住んでいれば、呼吸で吸い込んだり、飲食物で摂取したりして、必ず内部被ばくを生じます。
ここがポイントです。
IAEAやICRPなどは、放射能汚染地域にいる住民が、呼吸で放射性物質を吸い込んで生じる
内部被ばくを認めていません。 これに反して、最近の研究では、空間放射線量が高い地域では、空気中に放射性物質のチリがたくさん舞っていることがわかっています。これをホットパーティクルと呼びます。(注釈1)
ホットパーティクルは、全く無風のときでも一定量が空気中を舞っていると考えられます。 住民は、きちんとしたマスクをしていない限り、呼吸でこれらの放射性物質を吸い込み、内部被ばくします。
この内部被ばくの量は、人体に非常に大きな影響のある大変な被曝量となります。
チェルノブイリ事故でも、呼吸で放射性物質を吸い込んで~ホットパーティクルを吸い込んで内部被ばくし、がんを発症して亡くなった人は、何十万人もいると推定されています。
多くの研究者が挑戦しましたが、これらの人々の内部被ばく量を推定するのは困難であり、がん発生との因果関係を証明するのは、非常に困難でした。
ここに、原発推進派の専門家たちが付け入る隙があるのです。 きちんとした証拠がないから、学界で認められる証拠がないから、内部被ばくによるがんの発生はなかったというわけです。
前述の原発推進派の学者たちは、このようなIAEAやICRPの間違った、非人間的な結論を信じて疑わない人たちです。(注釈2)
ECRR(ヨーロッパ放射線防護委員会)では、内部被ばくを考慮した研究発表を行っています。
福島原発事故により、放射性物質で汚染された福島県中通りや浜通りや栃木県北地方で問題になるのは、内部被ばくです。
外部被ばくは、一部の空間放射線量が特に高い地域を除いて、大した問題ではありません。(注釈3)
ECRRの提言では、今後、10年以内に原発から半径100キロ以内の住民の約10万人が原発事故により放射能汚染により、事故がなかった時より多く、がんになり、同じく原発から100キロから200キロ圏では12万人が、事故がなかった時より多く、がんになると予想しています。
栃木県県北地方は、8月30日に文部科学省が発表した、放射性セシウムの土壌汚染を踏まえた最新の航空機モニタリングによれば、7月当初の発表より高濃度に汚染されていることがわかりました。
チェルノブイリの第Ⅲ分類の中間から上限を超え、一部は第Ⅱ分類に該当することがわかりました。 チェルノブイリ第Ⅲ分類は、居住してもよいが定期的な健康チェックが必要な地域、第Ⅱ分類は選択的移住権が認められる地域、すなわち出来るだけ移住したほうが良く、移住するなら国が保証をするという地域です。(旧ソ連の政策)
那須町や那須塩原市の空間線量は、おおむね0.5から1.0μ㏜/hrくらいですので、外部被ばくは大きな問題ではありませんが、内部被ばくに対しては、十分な対策を取らなければ、
がん患者の大量発生がありえます。
世界的に見ても、内部被ばくの専門家は限られています。
アメリカは、広島や長崎での内部被ばくの資料をたくさん持っているようですが、決して公開しません。(注釈4) 内部被ばくの研究は、大変困難であるのが実情です。
日本の数少ない内部被ばくの専門家である、琉球大学の矢が崎教授の提言をここに挙げておきます。「最も大事なことは、放射能のほこりを体内に入れないこと。屋外に出るときは、マスクをすること。雨には当たらないこと。子供の屋外での遊びや活動は、極力避けること。」
また、矢が崎教授は、飲食物よりも圧倒的に呼吸による内部被ばく量の方が多いこと(注釈5)、そして、日本の放射線の専門家は、世界一、内部被ばくに鈍感であるとも述べておられます。
個人の対策としては、この矢ガ崎教授の提言に従うのが最も良いと思いますが、地域の対策は、国や県、市町村が主体となります。
私見ですが、空間放射線量が1.5μ㏜/hrを超える地域は、除染を行っても住民が住めるようになる見込みは低いので移住を、それ以下の地域は、除染により空間線量を3分の1以下に下げる効果が認められ、内部被ばくを少なくできて居住可能地域とできることから、除染を行うべきと考えます。(注釈6)
放射性物質が、放射線を放出し人体にぶつかるとき(外部被ばく)、これはガンマ線でもベータ線でも、現在の栃木県県北の量では大きな健康被害は起きません。
しかしながら、放射性物質が呼吸や飲食で体内にいったん入ってしまうと(内部被ばく)、ベータ線とアルファ線が主体となり、体内にとどまる限り、ごく少量でも極めて危険なもの、即ちがんを発生するものとなります。
栃木県県北では、すでに大変危険な量の放射性物質の汚染があります。 放射性物質原子1個当たりの内部被ばくの危険性は、外部被ばくの1万倍以上とも考えられます。
内部被ばくを避ける対策が急務です。
福島県から栃木県県北地方に住む人々は、以上のことを十分に理解したうえで、間違った専門家の意見に従うことなく、放射線障害を避けるよう、特に内部被ばくを避けるよう、的確な行動を起こさなければなりません。
これには、先に述べましたように、呼吸による内部被ばくと食物による内部被ばく
(注釈7)の2つの面から、十分な対策をとることが、緊急の課題であるといえましょう。
注釈
1. ホットパーティクルは、もともとはプルトニウムが空気中のほこりなどと結合したものを言っていたようであるが、ここでは、放射性物質全般について、ほこりや花粉、土などと結合して空気中を舞っているものをイメージしている。ICRPはホットパーティクルを認めないもっともらしい理屈を述べているが、全く信頼できるものではない。
2. IAEAは、チェルノブイリ原発事故時に、現地住民の健康調査を行ったが、被曝の証拠である患者のカルテを盗み出したり、捨てたりして、証拠隠滅を図ったという証言もある。
3. 外部被曝については、ぺトカワ効果という、低線量の持続的被ばくにおいて、細胞膜が崩壊することが確かめられており、決して、現在の那須町や那須塩原市の外部被ばく線量が全く大丈夫ということではない。
4. アメリカは、基本的に内部被ばくを認めない立場をとっている国である。自国内核実験や湾岸戦争などで、自国の兵士が大量に内部被ばくしてがんなどを発症しているが、決して公表しない。
5. 原発事故から1年がたった現在においては、“食”の安全の方にお金をかけるべきかもしれない。
6. 最終的に居住可能かどうかは、土壌汚染の程度で決められるべきである。しかしながら、簡易な尺度として空間放射線量で代用することも不可能ではないと考える。1.5μ㏜/hrの3分の1は、0.5μ㏜/hrである。この値は、放射線管理区域の基準である、3カ月で1.3m㏜に相当する。
7. 土壌汚染の程度は、相当ひどいと考えるべきである。もみの木医院ホームページのホールボディカウンター検査は受ける必要はない??
http://mominoki-iin.com の中の項目をぜひ参照されたい。
したがって、那須町や那須塩原市の食品は、安全とは言い難い。
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