国民を“愚弄”する「三党合意」と「原発再開」と“提灯”メディア

■有権者の「選択」を“反故”にした三党「増税」合意

 この国では、選挙による国民の「選択」よりも、官僚の「意向」の方が優先されるのだろうか…?

 6月15日、民主、自民、公明の3党は、消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法案を修正し、今国会で成立させることで合意した。
 事務方たる官僚が修正協議の期限としていた15日の深夜ギリギリでの合意は、この国の「公党」が「官僚」に操られている“証し”でもある…。

 2009年の総選挙で有権者が“選択”した「政権交代」。
 その際、民主党が訴えた「最低保障年金創設」「後期高齢者医療制度廃止」などが、「消費税増税」と引き替えに事実上「撤回」された。
 総選挙の際、「4年間消費税は引上げない」と訴えていたのであるが…。

 合意の翌日の16日、自民党・谷垣総裁は早速、都内の街頭演説で「マニフェストのまやかしをちゃらにした」と胸を張った。
 公明党・斉藤幹事長代行も同日のテレビの番組で「民主党の公約は実質的に撤回された」と足並みをそろえた。

 何のことはない。「民意」を重視した「政治主導」から、「官僚主導」の自公政権の政策に「逆戻り」したに過ぎない…。

 消費増税に慎重だった筈の公明党も、いつの間にか「容認」に転じた…。
 「3党合意」の前日、民主党・輿石幹事長は衆院選挙制度改革の新提案を提示したが、ブロック比例を全国比例に改め、比例定数140のうち35は中小政党に有利な小選挙区比例代表連用制で配分するという、公明党などに配慮した「新提案」であった…。

■「3党合意」を“賞賛”する「霞ヶ関」機関紙(?)マスメディア

 こんな党利党略(官僚略?)により、選挙での「民意」を“反故”にされた「3党合意」。
 通常であれば「社会の木鐸」たる新聞・マスメディアが「黙っているはずがない」のであるが、この国は事情が違う…。
 翌日の全国三紙の社説は3党合意に対する「賞賛の嵐」であった…。

 “朝日”曰く、「修正協議で3党合意 政治を進める転機に」
「多大な痛みを伴うが、避けられない改革だ」
「この合意が『決められない政治』を脱する契機となることを願う」

 “読売”曰く、「一体改革合意 首相は民主党内説得に全力を」
「長年の懸案である社会保障と税の一体改革の実現に向けて、大きな前進と、歓迎したい」
「これを『決められる政治』に転じる貴重な一歩としてもらいたい」

 “毎日”曰く、「民自公修正合意 「決める政治」を評価する」
「民主党政権の発足以来、初めてとすら言える『決める政治』の一歩」
「歴史に恥じぬ合意として率直に評価したい」

 官僚が「民意に反する」場合に用いる「決める政治」の表現のオンパレードである…。

 さらには、民主党内の手続きに向け、「小沢切り」のエールも忘れていない…。

 “朝日”曰く、
「だれかが苦い現実を説くと、必ず甘い幻想を振りまく反対勢力が現れ、前へ進むことができない」
「民主党執行部が、反対派にひるまず一体改革に党内の了承を取り付ける。それが出発点だ」

“読売”曰く、 
「小沢一郎元代表らは、『増税より前にやるべきことがある』との相変わらず無責任な論法で、増税反対勢力の多数派工作を展開し、野田首相を揺さぶっている」
「民自公3党が合意したのに、政権党の足並みが乱れ、採決ができないような事態は許されない」
「首相は、党内の反対を最小限に抑えるため、まさに政治生命を懸けて党内を説得すべきだ」

“毎日”曰く、
「理解しがたいのは政府・与党が大綱で決めたはずの方針に公然と反旗を翻し、反対運動を展開している小沢一郎民主党元代表らの動きだ」
「修正協議での大幅譲歩を念頭に『自殺行為』『国民に対するぼうとく、背信行為』と批判するが、本質はあくなき権力闘争である」
「首相が会期末となる21日までに採決に踏みきることは当然だ。加えて、造反議員に対しては除名を含め断固たる処分でのぞむべきだ」

 「随分な」三紙の足並みの「一致ぶり」であるが、実は、社会保障・税一体改革の国会集中審議と「小沢裁判」控訴期限に先立つ、5月8日の夜、野田首相と朝日・星、毎日・岩見、読売・橋本編集委員らは、永田町の料理店で3時間にわたり「会食」していたのである…。

 つくづく、この国には、“民主主義”など「かけらもない」国だと思う…。

■報道されない「大飯原発・再稼働反対」1万人集会

 政府が大飯原発「再稼働」を正式決定した前日の6月15日、
金曜恒例となった首相官邸前での「大飯原発・再稼働反対集会」が、
「1万1千人」(主催者発表)と膨れ上がったと、
当ブログでおなじみの田中龍作記者が「田中龍作ジャーナル」で伝えていた。http://tanakaryusaku.jp/2012/06/0004498

 しかし、これを伝えたマスメディアは、日本全国どこにもなかった…。
 一方で、翌日の再稼動「正式決定」当日、雨が降りしきる中、「400人」に止まった「官邸前での再稼働反対の抗議集会」を、この国のマスメディアは、一斉に報道した…。

 それにしても、野田首相曰く「国論を二分している問題」の原発再稼働であったが、その「正式決定」は、スケジュールを消化するが如く、「粛々」と行われていった…。

 午前10時14分、福井県・西川知事が官邸を訪れ再稼働への同意を首相に伝えると、直後の10時57分から11時32分まで関係閣僚会合が開かれ、大飯原発「再稼働」が正式決定された…。

 しかし野田首相は、この「正式決定」に際し、記者会見などで国民に直接説明することはなかった…。

 一方で、関西電力は16日、閣僚会合が終了していない午前11時20分頃、「資源エネ庁から「再稼働を政府として判断したので、準備作業に直ちに取りかかること」との指示が電話で「11時13分」にあった、と報道各社に伝えた。

 関電の担当者が経産省資源エネルギー庁から聞いた終了見込時刻より閣僚会合が長引いたことによる「勘違い」だそうだが、いかにも「再稼動」ありきの形式的な「閣僚会合」に過ぎなかったことが、この関電の「フライング」発表で、明らかになった形である…。

 大飯原発「再稼動」に向け、首相・関係閣僚、地元福井県・おおい町、そして関西電力が、官僚の決めた振り付け・スケジュールのとおりに「動かされている」証左ではあるまいか…。

 それは、官邸前での「大飯原発・再稼働反対集会」について、
「1万1千人」は無視し「400人」だと報道する、
この国のマスメディアも、同様なのではあるが…。

 「再稼動」報道についても、5月8日の首相と全国紙三社の編集委員との“会食”が「効いている」のかもしれない…。

■“裏切り者”に対する「落選運動」と「不買運動」を!?

 それにしても、2009年の総選挙で、国民の多くが選択した「政権交代」の旗が次々と降ろされ、逆に国民の大部分が望んでいない「消費税率引上げ」や「原発再稼動」が、『決められる政治』というマスメディアの無責任な後押しにより、「国民不在」で粛々と進められて行く…。

 我々国民は、この流れにもはや「成す術はない」のであろうか…?

 こんな中、唯一の光明は、国会議員たちによる「二つの動き」である。

 一つは、消費税率引上げに慎重な超党派の国会議員や、業界団体の代表らで作る「消費税を考える国民会議」である。

  6月14日には、同会議主催の「この時期の消費大増税採決に反対する超党派国民集会」が憲政記念館で行われ、会場には国会議員117名、代理出席36名をはじめ約900名が詰めかけた。
 しかし、この動きについてネット上で検索してみても、マスメディアでは一切取り上げられておらず、内容を確認できるものは出席議員のブログのほかは、「しんぶん赤旗」のみである…。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-15/2012061501_07_1.html
(この集会の発起人代表・鳩山由紀夫氏への「バッシング」だけは欠かさないのだか…。
『岡田副総理、鳩山氏の「増税反対」に不快感』6月15日産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120615-00000587-san-pol

 もう一つの動きは、大飯原発再稼働問題で、政府に慎重な判断を求める民主党国会議員による署名活動である。
 「今夏は節電などで乗り切ることが国民の大部分の考え方」とした上で、党の作業チームがまとめた免震施設の設置など事故対策が「一つも実現されていない」として、再稼働は慎重にするよう要請した首相宛ての署名は117人にのぼった。
 しかし、この動きについても、ネットで確認できるのは「東京新聞」だけである…。http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012060602000113.html

 かつての政権党の自民・公明、そして現在の民主の議員には、
権限や役職を欲しがる「与党病」に冒され、官僚の振り付けに従い、
「長い物に巻かれよう」とする“愚かな輩”が多数存在するが、
一方で、党の方針に逆らうことになっても、自らの、そして有権者の考えに沿って「反増税」「反原発」を貫く議員たちも少なくない。

 我々国民は、もう二度と裏切られないよう、“民意”を「裏切った」議員と、
「裏切らなかった」議員とを峻別し、自らの記憶とウェブ上に残し、
次の選挙の際には「裏切った」議員に対する「落選運動」を展開していったらいかがであろうか…?

 彼らの「裏切り」に手を貸した、全国紙3紙の「不買運動」と併せて…。

成瀬裕史記者のプロフィール

1960年生まれ。北日本の一地方在住。一次産業を主とする“地方”の復興のため、明治維新から続く中央集権・官僚主導の国家体制の“CHANGE”を志す。

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