本荘さんの記事がスタートアップ界隈を賑わせているので便乗して。なぜスゴそうな人も大ゴケするのか? テーマで間違うスタートアップ
スタートアップに必要なのは、まず「課題発見能力」
起業、ビジネスというと「課題解決能力」ばかりが注目されますが、僕は何より「課題発見能力」こそが重要だと考えます。
課題解決は、課題の発見があってこそ成り立ちます。まだ解決されていない、大きな課題を見つけることが、ソリューションを作っていく上ではファーストステップです。
例えば大成功を収めているSquareは「クレジットカード決済が複雑である」という巨大な課題を見つけ、解決を試みています。
僕がもっとも注目しているスタートアップのシュアールは「手話が利用可能な場所が少なすぎる」という巨大な課題に取り組んでいます。
もっとニッチなところではアラタナが先日リリースしたZeebleは「マーケターがフェイスブックの効果測定に苦労している」といった課題を解決しようとしています。
お分かりの通り、課題発見には、それをなし得るだけの「素地」が必要です。例えばシュアールの場合は、ファウンダーの大木さんに聴覚障害と手話に対する深い理解があるからこそ、課題を発見できたと言えるでしょう。
学生発のスタートアップが、B2B向けのソリューションを作りにくい(C向けサービスばかり生まれる)理由はこの点にあると思います。Ginzametricsのような高度なSEOツールを、企業の現場でのマーケティング経験がない人材が作り上げるのは困難でしょう。それは課題解決能力というよりは、課題「発見」能力の問題です。
国内外のスタートアップを見ていると「それ本当に課題なの?」というものに対して取り組もうとしている企業も少なからず見つかります。これは数が少ないですが、そもそも「課題が不在」に見えるサービスもしばしば。
腕が試される「課題解決」フェーズ
大きな課題を見つけても、その解決方法がプアだと、誰も使わないソリューションになってしまいます。ソリューションが優れていても、プロモーションや伝え方の問題で、成長が鈍化することもあるでしょう。課題解決のフェーズでは、起業家の腕は一層試されるようになります。
例えば「レストランをうまく発見できない」「出会うべき人が出会えていない」という課題は、多くのスタートアップが取り組んでいますが、抜きん出ることができるプレーヤーはわずかです。
レストランの領域ではRettyが、出会いの領域ではソーシャルランチが、巧みな課題解決を行っている(=ビジネス開発がうまい)スタートアップだと勝手に観察しています。第二弾サービスをリリースしたWonderShake(tsudoi)、Livlis(Clipie)、Flutterscape(monoco)といった企業の舵取りにも期待です。
シュアールのようにニッチな課題に取り組んでいても、ビジネス開発の重要性は変わりません。大手サービスとの連携を決めた彼らもまた、課題解決に長けたスタートアップと言えると思います。
課題発見能力を磨くことが重要
色々な意見があると思いますが、日本の「起業家教育(この言葉自体も微妙ですが)」に必要なのは、課題発見能力を磨くことだと僕は考えています。
課題先進国とも言われる日本には、巨大かつ特殊な課題が溢れています。そうした課題の解決は、日本が世界にリードできる領域でもあると思います。
分かりやすいところでは、高齢化社会に対応するソリューション、心の病の解決に関するサービス、災害・防災に関するソリューションなどは、日本が強みを持っている領域でしょう。
ここでのは課題は、起業家個々人の課題を解決する能力ではなく、「課題を知らないこと」です。
世界銀行が「水問題ハッカソン(水問題の専門家が、ハッカーの前でプレゼンし、解決策をともに作り上げる)」などの取組みを行っていますが、課題について知る人と、課題を解決する人の分業・協業は、一つの解決策になるかもしれません(この手のハッカソン、日本でも企画したいところ)。
もっと根っこまで辿れば、日本の教育自体が「与えられた課題を速く・正確に解決する能力」を志向していることも、要改善なのでしょう。
皆さんは起業家教育、教育全般、またはスタートアップの現状について何を思いますか?ぜひご意見をコメント欄でお聞かせください。
関連本。この二冊は起業家必読です。