全国民主労働組合総連盟(民主労総)が5月に発行した組合員向け教育用資料『労働者統一教科書-労働者よ、統一をお願い』には、金日成(キム・イルソン)主席から金正日(キム・ジョンイル)総書記、金正恩(キム・ジョンウン)氏へと続く北朝鮮の3代世襲体制について「(北朝鮮の論理は)息子だからではなく、最も偉大な指導者を後継者にするということだ」と記載されている。また、核問題については「米国による軍事的脅威に対抗するための自衛的手段として開発されたと見るのが妥当」としている。2010年11月に発生した延坪島砲撃事件をめぐっては「北側は(南韓〈韓国〉の護国訓練での)射撃の中断を要求するファクスを何度も送ったが、南側はこれを無視して訓練を強行した。(中略)最終的に南北民衆が犠牲となった」と説明されている。
民主労総は自動車や機械、金属など、韓国の基幹産業従事者が組織の基盤となっている、非常に強大な団体だ。ところがこの団体は数万人の加盟員に「金正日、正恩父子は指導者として非常に優れた能力を持つ後継者になった」と教えている。しかし金正日と金正恩の実態はどうだろうか。住民を飢えに追い込み、監獄や収容所に入れ、世界各国で拉致を行う「ならず者国家」へと北朝鮮を変えたのは彼らだ。
金日成主席から正恩氏へと続く世襲王朝が支配する北朝鮮は、1人当たりの国民所得がわずか1000ドル(現在のレートで約8万円、以下同じ)ほどで、これはアフリカの最貧国よりも貧しい。北朝鮮で金正日総書記が後継者となった1990年代半ばには、極度の食糧不足で200万人が飢え死にした。ところがその一方で、北朝鮮は核開発を進めるため関連機器の購入に数十億ドル(10億ドル=約800億円)を使った。北朝鮮が4月に発射したロケットはわずか135秒で爆発、墜落したが、これに投じられた資金は8億5000万ドル(約672億円)と推定されており、これは飢えに苦しむ人民を2年間食べさせられる額だ。北朝鮮はこれほどの巨額を一瞬の火遊びでドブに捨てたというわけだ。
世界各国の腐敗防止活動に取り組むトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)は、北朝鮮を「世界で最も腐敗した国」としている。また各国の人権団体は北朝鮮を「最悪の人権弾圧国」「報道の自由が最もない国」などと評価している。
北朝鮮の憲法は金日成主席を「朝鮮の始祖」と明記し「人民は金日成首領を共和国における永遠の主席として奉らなければならない」としている。国民を「主権者」ではなく、世襲王朝を支える「従僕」とする憲法は、世界で北朝鮮にしかない。
このように北朝鮮は同胞を苦しめ、抑えつけているが、民主労総は組合員から徴収する組合費を北朝鮮の宣伝に使っている。民主労総は主体思想派の擁護や北朝鮮の宣伝など、愚かな行為をいい加減やめるべきだ。