2008年11月、京畿道坡州市の風俗店で2年間売春をしていたAさん(当時26)は、ニュージーランド・オークランド行きの飛行機に乗った。海外で売春をするためだった。それから約3年後、Aさんはイタリア・ローマで売春容疑により逮捕され、ソウルに送還された。
ソウル地方警察庁が昨年9月、Aさんを含めニュージーランドとイタリアで売春した韓国人14人を検挙した事件を見ると、韓国人女性が海外で売春をするに至るまでの経緯がよく分かる。
韓国で売春を続けながらも、警察の取り締まりにおびえていたAさんは、長い付き合いだった店のオーナー(31)と海外での売春ビジネスを計画した。2人はインターネット上で「海外旅行をしながら月1000万-1500万ウォン(現在のレートで約68万-102万円、以下同じ)を稼げる」などをうたい文句に女性を募集し、送られてきた写真を見て美人ばかりを集めた。女性たちは雇用主が売春のブローカーだと知りながらも、高い報酬に目がくらみ、ニュージーランド行きの飛行機に乗った。航空代金は本人の負担だった。
09年6月、オークランドでAさんを含む12人の韓国人女性が売春を始めた。女性たちの年齢は20代半ばから40代までさまざまで、風俗店での勤務経験があるのは4人だけだった。客1人当たり200オーストラリアドル(約1万6000円)を受け取り、売り上げはオーナーと売春した女性で折半した。韓国より収入は多かったが、ビザなしでは90日しか滞在できないため、韓国までの往復の飛行機代を考えると韓国よりもたくさん働く必要があった。
09年末、オーナーがニュージーランド警察に摘発され、罰金の支払いを命じられた。同国では売春は合法だが、売春の斡旋は違法に当たる。仕事を失ったAさんたちはほかの国を物色した。イタリアでアジア系の女性が人気だと聞き、10年2月にローマのホテルの部屋で、売春ビジネスを始めた。オーナーがチラシを配り、関心を寄せたイタリア人男性をホテルに案内するというやり方だった。やがて売春婦が足らなくなり、ネットの広告に関心を持った女性を写真も見ずにイタリアに呼び寄せた。
だが11年9月、オーナーをはじめとするブローカーたちがイタリア警察に逮捕され、女性たちは韓国の警察に身柄を引き渡された。約3年ぶりに韓国に完全帰国したAさんは、警察の事情聴取に対し「これからは別の仕事に就いて人に恥じない生活を送りたい」と語った。だが、Aさんは今でも性的サービスを目的としたソウルのマッサージ店で働いている。