意志の力で標高1800mの過酷さを乗り越えた高橋。
一方2位だった高橋大輔の演技も決して悪くなかった。久しぶりにフリーで4回転トウループを成功させ、最初の3アクセルはパンクして1アクセルになってしまったが、後半でしっかり3アクセル+3トウループを降りている。若手の選手でも途中から口呼吸になる標高1800メートルのコロラドスプリングスで、よく戦った。
「標高は思ったほど感じなかった。後半少し足にきたけれど、前半にジャンプミスがあったので、後半はもうミスできないという気持ちが強かった。その気持ちが、標高の影響に勝ったのだと思う」
会見で、高橋はそう語った。
だがそれでも、なんと総合でチャン273.94、2位の高橋244.33と、30ポイント近くもの点差がついた。果たして2人の演技にそこまでの差があったかどうかはわからない。だがここでのチャンの圧勝に、誰も文句を言えないことだけは確かであった。
「SPでも思い通りの演技ができず、ぼくはフリーで実力を証明してみせなくてはなりませんでした」
チャンは会見でそうコメントしたが、確かにそれだけのものを、彼は見せた。SPのチャンの採点が甘すぎると口にしていた人々は、みんな黙った。
4年前は圧倒的な実力で優勝をさらった高橋だが……。
改めて、競技スポーツというものの残酷さを感じたのは私だけであろうか。
そもそも高橋とチャンでは立ち位置が違う。
25歳の高橋が今のチャンとほぼ同じ年齢だった4年前、まさにこの四大陸選手権のフリーで4回転を2回降り、当時の最高点を出して優勝している。だがあれから高橋は選手生命に関わってもおかしくなかったような負傷をし、大きな手術を経て、それでも出場したバンクーバー五輪では銅メダルを獲得した。
一方のチャンは、今が跳び盛り、伸び盛りである。
2人に限らず、競技を続けていく限り、このように立ち位置の違う選手たちが、一切の言い訳もせずに同じ土俵で戦っていかなくてはいけない。
今や大ベテランである高橋がけなげにも「4回転の成功率をもっと上げていかなくては」と口にするのを聞いて、今更ながら、競技スポーツの過酷さに胸がつまったのである。
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