東京・六本木で、旧碇ケ関 村(現平川市)出身のすし職人が奮闘している。都内在住の北村淳さんは、34歳という若さで2店舗を経営、自らもカウンターに立って料理を出す。予約は数カ月先までいっぱいという人気店。「これからもお客を喜ばせる料理を作る」と意気込んでいる。
北村さんが料理の道を歩もうと思ったのは、弘前東高校2年のとき。居酒屋でのアルバイトがきっかけだった。「料理を出すと、どんなお客も笑顔になり、幸せそうに口に運ぶ。そんな魅力あふれるものを作る仕事に携わりたくなった」
高校卒業後に上京、都内のすし店で修業を積んだ。その後、つてを頼って都内の各店を渡り歩き、職人として腕を磨いた。さまざまな店で働くにつれ、やがて自分で店を開業したい気持ちが芽生えた。貯金をはたいて、30歳のときに独立。和から洋までさまざまな料理店がひしめく六本木で「きたむら」をオープンした。
店構えは普通の店と一線を画した。雑居ビルの一室にあり、店前などに看板はなし。「隠れ家」をイメージし、こぢんまりとした造りになっている。雑誌の取材もめったに受けない。「自分が手掛ける料理の味で、客の輪を広げたい」。築地市場で仕入れた新鮮な食材や青森県の海産物を使い、すしを中心に工夫したメニューを出す。
開店当初から多くの客でにぎわっており、この盛況ぶりを受けて昨年10月には近くに別館を開いた。
両店とも数カ月先まで予約でいっぱいという人気店になり、毎晩にぎわいを見せている。
「田舎者でも頑張れば成功できることを、証明できたかな。親も喜んでくれていると思う」。北村さんはそう言って、笑った。
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