「日本は自信を失っている」74% 朝日新聞世論調査(朝日新聞)
朝日新聞社が「日本のいまとこれから」をテーマに郵送方式による全国世論調査を実施したところ、「いまの日本は自信を失っている」とみる人が74%に達し、9割以上の人がこれからの日本に不安を感じていることがわかった。一方で、回復する底力があるとみる人が半数以上おり、日本の将来のあり方としては、経済的豊かさよりも「格差が小さい国」を求める意見が7割を占めた。
これからの日本への不安感を4択で尋ねると、「大いに感じる」50%、「ある程度感じる」45%で、強い不安を抱く人が多かった。「あまり感じない」は4%、「まったく感じない」は0%。
現状を「勤勉さが報われない社会」と考える人が69%、「日本人は精神的に豊かな生活を送れていると思わない」人が73%いる。「政治、経済、社会の仕組みを大幅に改革することが必要」という意見が57%で「いまの制度を維持しながら改良」の40%を上回る。自信を回復する底力があるとみる人は56%。また、全体で75%が「日本に誇りをもっている」と答えた。
・調査の詳細はこちら
さて、色々と世論調査が行われているわけです。引用元では「〜〜がわかった」みたいなまとめ方ですけれど、同種の前回調査からどう変化したのかとか、その辺にも突っ込んで欲しい気がします。得られた結果が「従来通り」なのか、それとも前年度に比べて増加あるいは減少したのか、その辺でまた見えてくるものも変わってきますから。
これが増加傾向にあるのか減少傾向にあるのか、そこで評価も変わってくるわけですが、とりあえず「勤勉さが報われない社会」という意識が強いのは、概ね肯定的に受け止められるべきことだと思います。「勤勉さが(必ず)報われる社会」であれば、「報われていない人」=「勤勉でなかった人(勤勉なら報われているはずだ!)」という認識にも繋がりますけれど、「勤勉さが報われない社会」ならば、「報われていない人」もまた勤勉だったかも知れないと、そういう感覚も多少は働きやすいでしょう。
「豊かだが格差が大きい国」を選んだ人は17%に止まり、「豊かさはそれほどないが格差が小さい国」を選んだ人が73%に上るという結果も出ています。では実際の日本はどうでしょうか? 「豊かさはそれほどないが格差が大きい国」へと着々と歩みを進めているように見えます。ある意味、「豊かだが格差が大きい国」と「豊かさはそれほどないが格差が小さい国」を選んだ人のどちらも、望みは半分だけ叶ったと言えそうです。ちなみに私は「豊かで格差が小さい国」を選びたいのですが、そんな選択肢は用意されていませんでした。「豊かさ」と「格差」の二択しかないと、暗に主張しているようです。この辺は相変わらず、小泉/竹中的な世界観から抜け出せていないものを感じますね。
世論調査の回答には矛盾がつきものです。「日本は自信を回復するだけの底力があると思いますか?」との問いに「底力がある」と回答した人は56%で、「そうは思わない」と回答した人の28%の倍に上るわけですが、一方で「『大国』であるのがよいと思いますか。大国である必要はないと思いますか?」みたいな項目では「大国である必要はない」が55%を占めるなど、歪んだ小国意識は健在です。まぁ経済大国であることは捨てて、その中で「自信」だけを回復させるつもりなのかも知れませんが。
◆経済の主役が、ものづくりから、金融やITといった業種へと移りかわっていくことは、好ましいと思いますか。好ましくないと思いますか。
好ましい 14 好ましくない 77
……で、この結果はどうでしょう? 私だったら以下のようなことも追加で聞いてみたいです。たとえば「あなたは金融やITではなく、製造業で働きたいですか?(あなたの子どもを製造業で働かせたいですか? それとも金融やITで働かせたいですか?)」とか。
少子化は、養育リソースの集中をもたらします。子どもが多ければ多いほど親世代が投入する養育リソースは分散してしまうもので、たとえば1世帯に子どもが5人も6人もいれば、全員を塾に行かせたり大学に行かせたりするのは難しいですよね? 一方で子どもが一人だけだったならば、親などの投下する養育のためのリソースは一人に集中する、そうなると高等教育を受ける子どもも増大する、結果として大卒者の割合も増えているわけです。しかるに少子化=高等教育修了者の比率が上昇する中で、労働力需要は製造業(ものづくり)のブルーカラーの比重が高いままであったらどうなるでしょうか?
少子化が進んで高学歴化が進む以上、それに合わせて産業構造も低賃金の単純労働力に依存する産業から、デスクワーク中心の産業(大卒向け雇用を生み出す産業)へとシフトしないと整合性がとれないわけです。しかし、経済の主役=雇用の主役が製造業に止まっている日本では、悲惨な就労環境が加速されるばかりです。1次産業から2次産業へ、2次産業から3次産業へとシフトしていくのは日本であっても当たり前のことであるはずなのですが、「ものづくり」へのこだわりが足枷になっているように思えてなりません。まぁ今回のアンケート回答者は「素人」ですから、その「素人」が「ものづくりが主役であるべき」と信念を表明したところでどうと言うこともないでしょう。問題は、日本経済の明日(ひいては労働者/求職者の明日)を左右する立場にいる人までもが「ものづくりが主役であるべき」という考え方にしがみついそうなところです。
◆地方を中心に、土木・建設業などから福祉産業や農業への転換の動きがあります。このような転換に期待しますか。期待しませんか。
期待する 78 期待しない 17
◆いまの日本がおかれた状況を「登山」にたとえると、次の四つのうち一番近いイメージはどれだと思いますか。
快調に登っている 1
急な坂を懸命に登っている 15
息が切れて、後続の人に追い抜かれていく 62
足を痛めて先に進めない 18
引用の順番が前後しますが、こんな回答結果もありました。この辺も「あなたは福祉産業や農業で働きたいですか?(あなたの子どもを福祉や農業で働かせたいですか?)」とか聞いてみたいところです。そもそも福祉を産業として見なすのは不適切ではないのか(それは社会保障の一分野であって営利事業に含めてはならないものではないのか)、農業への回帰(1次産業への回帰)は逆行ではないのか、その辺も何かと疑わしく感じてなりません。金融やITなど3次産業を否定し、ものづくり(2次産業)を称揚し続ける、そして1次産業への回帰傾向まで見せる、それは「登山」に喩えるのなら登っているのではなく、転げ落ちているだけではないでしょうか。先行する相手(アメリカ)と競う代わりに、後ろから追いかけてきた相手(中国や韓国など)と競おうと、まず山を転げ落ちている、しかも転げ落ちることに労力を費やしている、それが日本の置かれた状況であるように見えます。
ただ、金融やIT業界も結局底辺はブラックなので、「まともな条件の方で働きたい」と言いたいと思います。
ただ、社会保障や産業構造については賛成いたします。企業における情報の意義の拡大(プログラマーに限定せず、ネットで情報をえて判断するという程度の広義のものもふくむ)については、日本の為政者が軽視しているとおもわれる点は、管理人さんのおっしゃるとおり、やはり危険でしょうね。
貝枝は感情的に電子マネーがすきになれないのですが、情報がお金と等価値になりつつあるおおまかな傾向は回避が困難かもしれません。問題は、そのことを覚悟しつつ、ローリスクですごしたい人の人権をいかにまもるかということだとおもいます。
なんだかまとまってなくてすみません。あえて強引に要すれば、情報と金融の融合によりサブプライムローンの様な巨大なバブルが生じる危険は今後もありそうであるので、人権に対する配慮は一層重要になるだろう、と。そしてそうした問題への配慮と、三次産業や情報を軽視することは同義ではないので区別すべきである、ということです。
その「ものづくり」という曖昧な言葉が、イメージを偽装しているように思うんです。「ものづくり」というと「何となく良いもの」のイメージですけれど、実際の現場はどうなのか、工場のラインで働いてみたいのかとか、そういう面まで頭が回っていないのではないでしょうかね。
>貝枝五郎さん
そうした感覚は、デフレの真っ最中でもひたすらインフレの害を叫び続ける世論と似たようなものだと思います。「金融化の災い」は行きすぎれば発生するのでしょうけれど、日本で起こっているのは正反対、「製造業の災い」ですから。先年の金融不安でもダメージが大きかったのは「金融立国」ではなく、製造業原理主義の日本の方でした。そうであるにもかかわらず製造業偏重を改める気持ちが微塵もないところに、日本の未来があるわけです。
これがいいに決まっていると私も思いますが(だからこのブログに長きにわたってお邪魔しているかと思います)、なかなかそうはいかないみたいで。困った話ですが、変な話でもあります。
>あなたは福祉産業や農業で働きたいですか?(あなたの子どもを福祉や農業で働かせたいですか?)
これらの仕事では食っていけないんだから働きたい以前の問題ですよね。そういったことをまずは認識しないとね。
本文でも書きましたが、「豊かさか、格差の小ささか」の二択になってるんですよね。両者は別に矛盾するものではないのに、あたかも二者択一であるかのように捉えられていて、それが相互に足を引っ張っているように見えます。
それに伴い、若干のキャラ替えがあるかもしれません(爆)ご容赦ください。
このエントリーに関しては、私自身は?だらけなのに、今まで誰も質問されていないようなので、いくつか質問させてください。
>しかるに少子化=高等教育修了者の比率が上昇する中で、労働力需要は製造業(ものづくり)のブルーカラーの比重が高いままであったらどうなるでしょうか。
第3次産業の就業人口は戦後増加の一途であり、定義にもよりますが現在60%を超えております。翻るに第2次産業の就業人口は30パーセント程、低下の一途。これについては「シフトの進み方が遅い」と考えていらっしゃる、ということでよろしいのでしょうか。
>少子化が進んで高学歴化が進む以上、それに合わせて産業構造も低賃金の単純労働力に依存する産業から、デスクワーク中心の産業(大卒向け雇用を生み出す産業)へとシフトしないと整合性がとれないわけです。
「デスクワーク中心の産業」が「単純労働力」より相対的に賃金が高くなると考えていらっしゃる論理的根拠を教えて下さい(慣習的理由ではなく)。
>経済の主役=雇用の主役が製造業に止まっている日本では、悲惨な就労環境が加速されるばかりです。
これは「製造業の就労環境は悲惨」であり、それは産業構造の変化故に回避不可能、さらに第3次産業には必然的にその影響は及ばない、と考えていらっしゃるということでよろしいのでしょうか。
私自身は近い将来、「デスクワーク」の大部分が現在の「単純労働力」並の賃金に低下すると考えております。なにしろ経営側の考え方は「とにかく人件費をミニマムに」なのに、労働力の供給が需要を下回る事は、日本では今後しばらく起こらないでしょうから。別エントリーで触れられた「デスクワークの外部化」など好例ですね。
また、単純製造労働・デスクワークどちらにも就業経験がある個人的経験からは、「高度な意思決定を伴わない(≒課長未満)」デスクワークが単純製造労働者より高給である必然的理由は、需給関係と慣習以外には見つかりませんでした。
キャラ替えとか言っておきながら、長文は変わりませんでした。
そうですね、シフトの進み方が遅い、社会の変化に対応できていませんから。高等教育修了者が増えて3次産業就業志望者の割合が増えるのに対して、3次産業の求人増加が間に合っていないわけです。また賃金は論理的根拠などという代物によって決まるのではない以上、その質問は無意味ですね。現に単純労働の賃金が著しく低い状態に据え置かれていることに向き合うべきでしょう。
デスクワークの賃金も雇用側は抑え込みに全力を尽くすわけですが、それは労使の力関係の問題です。一方で製造業の場合は新興国との価格競争が避けられないため、コスト削減=人件費削減をしない限り存続できないという構造的な問題があります。行政が是正に力を尽くしたところで、時代遅れの産業(新興国に適した産業)で雇用を支え続けることはできないのです。社会の変化に対応しない旧態依然とした産業にしがみつくのは趣味の世界でしかありません。ちょっとは経済合理性にも目を向けるべきではないでしょうか?
この不況下、「趣味の世界」で製造業の国内雇用を支える経営者は、ある意味“素敵な”経営者と言えるでしょう。しかし世間での評判はともかく、株主総会においては怠慢の謗りを免れないと思われますので、最終的には雇用の海外移転は避けられないものと思われます。
さて、第2次産業の雇用がこうしてさらに減ったところで、自動的に第3次産業の雇用が増えるわけではありません。人余りのこの時代、もしそうならその雇用はとっくに日本国内に存在しなければおかしい。しかるに「3次産業の求人増加が間に合ってない」。この現状をどう考えたらいいのでしょう。
これはもしかしたら「増加が間に合っていない」のではなく、「産業構造シフトのうち、2次産業の流出は不完全だが、3次産業の雇用増加の部分は完了した」と考えるべきなのではないでしょうか。ここから先は「行政が是正に力を尽く」さなければ新たな雇用創出は進まない、と。その方が「経済合理性」にも合致すると思うのです。
もしそうであれば、「単純労働の賃金が著しく低い状態に据え置かれていることに向き合うべき」(これ、誰がですか?私が、ってことでいいんですよね)なのと同様に、特に私のような「3次産業に職を求める者(管理人様もそうでしたよね)」は、これからは「求人率が著しく低い状態に据え置かれている事に向き合うべき」なのかもしれませんね。
二次産業の増減は三次産業の雇用の増減とは関係ないに決まっているでしょう。ただし二次産業の衰退が必然である以上、他で増やさなければ経済が成り立たない、新興国と競合しにくい分野で絶えず新しい産業を起こし続けなければ社会が維持できないわけです。ふなぼりすたさんのように構造改革路線の世界観(シフトチェンジ完了説w/「経済成長は終わった(キリッ」)であれば、新たな雇用の創出は考えられない、既存の雇用(製造業中心)を延命させるしかないということになるのでしょうが、そんなフィクションに付き合わされるのは御免です。日本「以外」の国のように新しい産業への移行を続けるか、日本だけがそうであるように既存の産業構造の維持を優先して低迷を続けるか、私だったら前者を選びますけれどね。