時代の風:原発再稼働は大丈夫か=京都大教授・中西寛
毎日新聞 2012年06月17日 東京朝刊
◇問われる指導者の覚悟−−中西寛(ひろし)
野田佳彦首相の決断で16日、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働が決定された。電力需給の問題を考えれば、原発再稼働の必要性は首肯しうる。ドイツやスイスは原発廃止の方向を打ち出したが、いずれも長期的な方針である。ドイツでは17基の原発のうち、古いものを中心に8基が停止され、残りの9基が2015年から順次停止されて22年までに全てが止まる計画になっている。スイスでは5基の原発を更新せず、34年までに廃止する計画である。これと比べても、事故前に日本に54基あった原発を全て直ちに止めてしまうのは無謀だろう。仮に電力供給が満たせても、経済的、社会的負担は厳しいものとなろう。従って、原発再稼働の判断を下した首相や、再稼働反対の方針を転換した橋下徹大阪市長の立場は分かる。