ふるさと:原発事故15カ月(1) 森の暮らし奪われ
2012年06月18日
東京電力福島第1原発から西へ約45キロ。福島県田村市の山あいで里山喫茶「燦(きらら)」を開いていた武藤類子(るいこ)さん(58)は、昨年3月までの16年間、四季の自然に恵まれた森の暮らしを続けてきた。祖父が残してくれた雑木の山を自らの手で切り開き、作り上げていった暮らしだった。
「ツキ、ヒー、ホシ、ホイホイホイ」。不思議な鳴き声の渡り鳥・三光鳥が訪れると夏が始まる。若葉が輝き草木は勢いを増していく。だが、夏至を境に森の勢いはピタリと止まり、実りの秋への備えに入る。「燦」の周囲に生えるセリ科のアシタバなどはみそ汁の具になり、ドクダミ、ヨモギは干して茶にした。いろいろな花にとまる日本ミツバチの蜜は豊かな味わいだった。