(本)水野学「アウトプットのスイッチ」—ブランディングの具体的手法を学ぶ一冊

2012/06/17
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読んでよかった!と思えるマーケティング本。特にブランディングを学ぶ際に参考になると思います。読書メモをご共有。


アウトプットを意識せよ

・「A:品質、価格、デザイン、パッケージ、広告といった意識的なアウトプット」「B:発信する人や会社が内包している、無意識のアウトプット」。この二つが組み合わされたものが、本書で指す「アウトプット」。

・Bに目を向けず、Aだけに力を入れても上滑りなものになってしまう。デザインはおしゃれなのに、全く売れない商品が生まれたりする。モノが売れない時代と言われ、表面的なAのアウトプットに夢中になって本質的なBを忘れ、ますます売れなくなるという悪循環が起きている。

・マズローは第六段階の欲求に「コミュニティ発展欲求」を挙げた。地域社会、起業や国家、地球など、自分が所属するコミュニティ全体の発展を望む欲求。その企業がどんな思いでモノを作っているか、その企業はどんな「大義」があるのか、といった点を消費者が見るようになってきている。

マズローの第六の欲求の話は初めて聞きました。自己実現のさらに高次の欲求を、人々が求め始めているというのは納得感がある話。


アンケート調査の落とし穴

・アンケート調査は過信しない方が良い。理由は4つ。①人は慣れたものに好感を持つ生き物だから。②特殊な環境下で、限定された情報だけを元にくだされる判断だから。③調査に参加している時点で、ある程度限定された調査対象集団だから。④回答が既存の価値観の中からしか出てこないから。


「〜っぽい分類」

・たとえば「靴下」という商品を考える時に「どこっぽい」のかを考える。アジアっぽいのか、ヨーロッパっぽいのか。なんとなくチェコやポーランドのような、東ヨーロッパっぽさがある。東ヨーロッパっぽいという答えが出たら、派生するイメージを拾ってみる「真面目、可愛い、シンプル、無骨、派手ではないけどセンスが良い」など。

・同様に、「誰っぽい分類」「いつっぽい分類」などを行う。「花っぽい分類」なども。

・「〜っぽい分類」には時間をかけず、瞬時に行う。理性より感覚に頼る方が大切。

・この分類は「シズル」を見つける作業でもある。「シズル」は自然で、商品の本質を的確に表し、そのうえで強烈に五感に訴えてくるもの。

・統一感を出そうとすると、シズルはどうしても後ろに下がりがち。青を基調にしたシリーズで、統一感を出すために「青いパッケージのハム」を売ってしまう、など。

本書で一番参考になったのがこの「〜っぽい分類」の話。まさに明日からブランディング支援やマーケティング企画に使えるテクニックです。これを知るだけで一冊本を買う価値があります。


その他「くまモンが黒い理由」「くまモンがくまポンではない理由」「今までにないママチャリの企画方法」など、興味深いテーマが並んでいます。マーケティング、ブランディング、デザインの最先端の思考法を学ぶことができる良著と言えるでしょう。