'12/6/18
生保、加入照会に全面協力 保険金殺人見逃し対策
保険金殺人の見逃し防止を目的に生命保険業界が、死因や事件性が判然としない「変死体」に関する警察からの生命保険加入状況の照会要請に全面的に協力することが17日、分かった。同日までに業界団体の生命保険協会が理事会で決めた。来年4月からの実施を目指す。
年間照会件数は、従来の4倍近い約2万7千件に増える見通しで、ほぼ全ての変死体が照会対象になる。生命保険協会は件数増に備え、生保各社が個別に応じてきた照会方法を見直し、協会が一元的に対応できるようシステムや人員の整備を進める。
警察庁によると、1998年以降に発覚した犯罪死の見逃し45件のうち、16件が保険金目的の殺人事件だった。被害者が死亡直前に保険契約が結ばれたり、保険金の受取人になるため養子縁組や偽装結婚が行われたりしたケースもあった。そのため、保険の加入状況を調べれば見逃しを防げた可能性があったとみて照会を増やす。
2011年の変死体数は2万701体だったが、警察は従来、事件性が明らかな場合に照会を行うことが多く、11年度の照会件数は約7400件となっていた。
このうち約400件が2日以内の回答を求める「緊急照会」だったが、来年4月以降は約2万7千件の照会のうち緊急照会を約2万件に増やす方向で調整。必要があれば死体を解剖できるよう、火葬前に保険の加入状況を調べる体制を整える。
日本では、死体を外から見て事件性を判断する警察の検視官や解剖医の人材が地方を中心に不足しており、警察が取り扱う死体のうち、解剖されるのは1割程度にとどまる。このため、警察が自殺や病死と判断した後に、犯罪に巻き込まれて死亡したと発覚するケースが相次いでいる。