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「必要だから安全」本末転倒 前福島知事佐藤栄佐久氏に聞く

 関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働が決まった。前福島県知事の佐藤栄佐久氏(72)は、決定までの政府の姿勢を「戦車のよう」と厳しく批判する。知事在任中から国の原子力政策に異議を唱え続けた佐藤氏に、再稼働の問題点を聞いた。(聞き手は末永智弘、勅使河原奨治)

 −大飯原発の再稼働が決まった。

 「福島県を中心に東北が苦しんでいる中で、原発を動かそうとする神経が理解できない。知事時代に『国はブルドーザーのようだ』と言ったが、事故が起きても止まろうとしない姿は、まるで戦車だ」

 −野田佳彦首相は「福島を襲ったような地震、津波が起きても事故を防げる」と断言した。

 「言葉遊びに過ぎない。福島第1原発事故の詳細が分かっていないのに、なぜ断言できるのか。絶対に原発を動かしたいから『絶対に安全だ』と強調する。本末転倒だ。日本の統治機能の低下は深刻で、世界から笑われてしまう」

 −再稼働の理由に、国民生活を守ることを挙げている。

 「事故で福島県民の生活は吹き飛んだ。エネルギーが大切なのは分かるが、どこかを犠牲にする手法は認められない」

 −再稼働を急いだ事例は、2003年に福島でもあった。

 「トラブル隠しなどで東京電力の原発17基が全て止まった。福島県民を守る立場で『安全が確認されるまでは再稼働を認めない』と主張したら、首都圏から批判された。あのときも経済優先の論理だった」
 「日本の原子力行政は推進側の資源エネルギー庁と、規制側の保安院が経済産業省に同居しているので、真の安全確保につながらない。これだけの事故が起きても、平気で原発再稼働を認める。産業界重視の経産省の体質は変わっていない」

 −新しく設置される原子力規制委員会をどう考えるか。

 「首相の指示権を認めない仕組みに疑問がある。事故後の菅直人前首相の言動にこだわると本質を見誤る。緊急事態で責任を持って判断できるのは政治家だ。菅前首相は少なくとも真剣に事故に対応しようとした」

 −政府に対し国民はどう行動すべきか。

 「原子力政策に対する政府の態度は、情報公開と民主主義から程遠い。福島の事故を経て少しは改善されるかと思ったが、全然変わらなかった。国民一人一人が自分の頭で考え、意思表示することが大切だ」

 さとう・えいさく 1939年、郡山市生まれ。参院議員を経て88年、福島県知事に初当選。2006年、汚職事件で辞職後に逮捕、起訴された。一、二審で執行猶予付きの有罪判決を受け、上告中。72歳。


2012年06月17日日曜日


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