2012/6/16 (土)
つながってナーヤとサルヴァの物語
物語はナーヤの話とサルヴァの話が交互に登場する。『魔法の泉への道』(リンダ・スー・パーク著、金利光訳)はオムニバス形式で進行し、一見関係のない二人のスーダン人少女と少年の物語である。
内戦が続くスーダン南部。北のイスラム勢力は主流派で南に住む部族を追いつめていた。反発して内戦がひどくなったものであるが、戦争で最も悲惨な体験をしてしまうのは子供たちであるのは、世界共通だ。ナーヤはヌアー族、サルヴァはディンカ族。両族は内戦の基本構造である、スーダン北のイスラム勢力と土族宗教の勢力との対立とは違うところで対決していた。表題ごとに交互に登場するマークは両部族の印なのだろう。ナーヤの物語は2008年から始まり2009年へと少しずつ進む。少し年長のサルヴァのは1985年から始まり経過が早い。
長い逃避行で歩けなくなっていたサルヴァに叔父さんが目標を与えるところが心に残る。道は遠いようでも目に見える目標をいつも持っていなくちゃいけないな、と思わせてくれる。
(最初の目あてとしていた茂みにたどり着いてから)
≪二人が茂みまでたどり着くと、叔父さんは前に見える石の固まりを指さして、あそこまで歩こうと言った。そこまでいくと、こんどは少し先のアカシアの木まで‥‥その次はまた石の固まりまで‥‥その次はただの砂地のあの場所までというように、叔父さんは次から次へと目標を定めていった。こうしてサルヴァは少しずつ前進した。≫
努力の甲斐ありサルヴァはアメリカの里親に引き取られ教育を受けることになる。夜郎自大で傍若無人のアメリカのやり方にさまざま批判があるのは確かだが、アメリカという国の懐の深さをこうしたボランティアの実践に感じる。
プロジェクトをたくさんの応援をうけて軌道にのせたサルヴァ。最終ページで部族の違いを超えてナーヤとサルヴァはつながる。目頭が熱くなった。