特集ワイド:留飲を下げたい人たち 「バカヤロー」アプリ人気、他者への攻撃同調も
毎日新聞 2012年06月15日 東京夕刊
発言力を持つ人物の言葉や行動に、賛同する一般の声が加わり、エスカレートしていくというパターンには既視感がある。橋下徹・大阪市長は市職員の入れ墨チェックや思想調査などの攻撃的な主張で支持を集める。「仮に一理あるとしても、橋下市長の場合、内容より言い方の激越さが受けている。『これは問題ですね』ではなくて『これを撲滅しないと日本は終わり』というように」
なぜ、攻撃的な言説がウケるのか。そこにはネット社会特有の力が働いていると小田嶋さんは見る。
「ネットは一見オープンに見えますが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では自分が不愉快なものは排除できるし、同じ考えの仲間を見つけやすく、とても閉ざされた世界になる。情報の大海原というより無数のタコツボがあるような構造です。そこでは誇張や改変、時に捏造(ねつぞう)による情報までが拡散し、仲間うちの議論がエスカレートするのです」
米国やフランスで行われた社会心理学の実験では、もともと意見の近い人たちを集めて議論させると、主張がさらに極端になる傾向があった。人々を「留飲を下げる」思考に導く場をネット空間が提供しているとも言えそうだ。